死刑囚のプロファイリングで、はぐれ女性刑事が猟奇事件の謎を解く=「怪物のささやき 異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花」

幼い頃に何者かに目の前で突然、両親を殺害されたショックで、「感情」の起伏を失ってしまった女性刑事、通称「警察の雪女」こと「氷膳莉花」が、両親を殺した犯人を突き止めるため、犯罪研究のために、多くの猟奇犯罪事件を企画し、事件の共謀共同正犯として起訴され、死刑を求刑されたまま早稲田にある「東京警察医療センター」に収監されている「阿良谷静」のアドバイスを受けながら、都内で起きる連続猟奇殺人の犯人を突きとめていく、ホラー・ミステリー・シリーズ「異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花」の第一弾が本書『久住四季「怪物のささやき 異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花」(メディア・ワークス文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ

第一話 「想像力なき者の犯罪」
インタールード
第二話「殺人鬼の憂鬱」
インタールード第三話「最後の事件」
エピローグ

あとがき

となっていて、冒頭では東京の警視庁江東署に設置された殺人事件の「捜査本部」から始まります。事件のほうは、二ヶ月前に江東区東砂の荒川下流の土手で、頸部をロープのようなもので圧迫されて殺され、腹部を裂かれて内臓が持ち去られた20代から30代の女性の死体が発見されたのを皮切りに、永代一丁目の永代公園、汐見運河の護岸で同じように首にスタンガンの火傷の跡があって、ひも状のもので絞殺され、臓器が持ち去られた死体が発見されます。

連続する猟奇犯罪に世間の警察に対する目は厳しくなる一方なのですが、捜査本部は犯人の手がかりどころか、被害者の身元もつかめないままです。フラストレーションがたまっていく捜査本部で、本部の指揮を執る皆川管理官は、捜査本部員として初めてこの事件で起用されたものの経験不足のため、本部の電話番をしている新米刑事・氷膳莉花にある密命を下します。

それは、かつて都内の私立大学で犯罪心理学を教える准教授で、自らの研究データを集めるため、都内で認知された重大事件の七%の事件で、犯罪計画を犯人に伝授し、死刑を求刑されている「怪物」と呼ばれる犯罪者「阿良谷静」に、この連続猟奇事件の捜査情報をリークし、犯人をプロファイリングさせろ。というものです。

警察の内部規律に違反する命令に躊躇する莉花だったのですが、意を決して、阿良谷の収監されている東京警察医療センターへ出向き、彼へ捜査情報を提供すると、彼から、警察が確信している犯人像とは全く異なる人物像を示し、第一・第二の事件と第三の事件の犯人は異なると断言します。そして、第三の事件を実行した模倣犯のヒットがほしければ、中野でメンタルクリニックを開業している医師に会いにいけ、とアドバイスしてきます。

迷いながらも、単独でその医師のもとへ出向いた莉花は、そこで、第三の事件の犯人に出会うことになるのですがそれは意外にも・・という筋立てです。

この後、単独行動によって犯人の一人を確保した莉花に対し、内部規律違反によって監察の尋問と捜査本部のメンツを潰されたと感じた捜査員たちからバッシングが始まるのですが、莉花は、捜査一課の強面刑事「仙波」の協力も得ながら、犯人の捜査を続けようとします。しかし、捜査本部の別チームが被害者の身元を探り出し、被疑者を検挙してくるのですが、その被疑者は、阿良谷の示したプロファイリング・データとは異なる人物像の持ち主で・・という展開です。

この後、皆川管理官のさらなる指示に基づき、阿良谷に接触し、そこから得た情報で莉花は、再び単独捜査で真犯人に迫っていくのですが、真犯人を確保したと思った廃造船所で、思わぬ事態がおきて・・という展開です。

猟奇殺人、模倣犯、誤認逮捕、真犯人死亡などなど、これでもか、というぐらいのミステリーのアイテムがテンコ盛りされ、しかも最後にはどんでん返しも用意されているという豪華なホラー・ミステリーをお楽しみください。

レビュアーの一言

このシリーズのヒロイン「氷膳莉花」は、両親を幼い頃に殺されたショックで感情を表に出すことができず、どんなにグロい犯行現場に臨場しても顔色ひとつ変えない、という設定で、しかもインドネシアやマレーシアなどの東南アジアに6世紀頃から伝わり、インドネシアではオランダの植民地時代のその危険性から禁止されていたといわれる「シラット」という武術の達人です。

異色の犯罪者からのアドバイスを受けながら、新米刑事が猟奇事件の謎に挑むというのは、内藤了さんの「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズや、佐藤青南さんの「ストラングラー」シリーズに似たところはあるのですが、ヒロインが同僚の警察官から嫌われている上に、監察から目をつけられていて、警察組織に属し阿ながら単独捜査をする一匹狼、という「硬派」な設定が斬新なところです。

ちなみに、2023.07.05現在、この作品はKindle Unlimitedの読み放題対象になってます。

そして、第二作、第三作もすでに出ていますね。

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