病院内の私設交番勤務の元・無頼刑事が院内でおきる事件を追う=「院内警察ーアスクレピオスの蛇」1・2

医師や看護師などの病院職員に対し、暴言や暴力、セクハラ・パワハラを仕掛けてくるモンスター患者に対処するため、大学病院「阿栖暮病院」に設けられた私設警察「院内交番」に勤務する元刑事・武良井治を主人公に、病院内でおきる様々な事件の真相を解き明かし、解決していく、異色の医療ミステリーマンガ『酒井義・林いち「院内警察ーアスクレピオスの蛇」(ヤングチャンピオンコミックス)』の第1弾と第2弾。

あらすじと注目ポイント

第1巻 病院内の揉め事すべてを担当する「院内刑事」登場

第1巻の構成は

第1話 医者に非ず
第2話 場所
第3話 もう一人いる
第4話 ぬいぐるみけいさつ
第5話 神からの贈りもの
第6話 奪われたメス
第7話 3つの金魚
第8話 勇気チャージ
第9話 横堀さんの秘密

となっていて、シリーズ冒頭は、病院の検査室で入院している妻に対する検査が多すぎるとクレームをつける男性家族のシーンから本編が始まります。検査技師のおざなりな対応に怒った家族がカッターナイフで脅し、担当医師を呼び出せ、と要求するのですがそこに現れたのが、医師のふりをした、本シリーズの主人公「武良井治」で、という滑り出しです。

このあと、武良井は、この男の妻の病名が「癌」だろうと勝手に告知するのですが、その目的や、病名を知ったからくりは・・といった展開ですね。少し、ネタバレしておくと、武良井は、この男が検査技師や医師を逆恨みした理由まで見抜いて仕掛けてきているのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。

この冒頭で、シリーズの狂言回しとなる院内交番の事務員「川本響子」と、武良井が敵視している雰囲気のある、病院きっての凄腕外科医「榊原俊介」が登場してきます。

中盤以降では、お気に入りの「金魚」のぬいぐるみがどこかに失くなってしまい、手術を拒否する女の子「相良美紀」と武良井が出会います。

武良井は自分は「ぬいぐるみけいさつ」だと自称し、美紀とともにぬいぐるみを探して院内中を走り回り、彼女の病室内にぬいぐるみを隠した犯人がいる、と宣言します。犯人として名指しされたのは担当のベテラン看護師長なのですが、それはとんだ濡れ衣で・・という筋立てなのですが、ここには真犯人探しとある医師の医師生命を復活させるための武良井の作戦が仕掛けられていて・・という展開です。

第2巻 難手術の執刀医交代の影に父親の娘への愛情が隠れている

第2巻の構成は

第9話 第一助手と神の手
第10話 手術開始
第11話 繋ぐ命
第12話 涙の味
第13話 親と子
第14話 ある夜の交歓
第15話 視線
第16話 日向に差した影
第17話 隠蔽体質

となっていて、前半では、第1巻で「相良美紀」の手術を担当した外科の伊藤医師の第一助手をする予定だった外科副部長の榊原が無理やり、後輩の上條医師から執刀医の座をとりあげた理由が明らかになってきます。

この手術は国内で成功例の少ない難手術で、若手の上條には少し荷が重いものであったことは間違いないのですが、榊原のほうにも心臓呪術は彼がほとんど独占して執刀していて、若手医師のチャンスを奪っているという悪評があるのは間違いなくて・・という筋立てです。

そのわけは、手術が成功した患者のもとへやってきた患者の娘が「お父さんなんか死んでしまえばよかったんだ」と悪態をたれるあたりに隠れていそうなのですが、真相は原書のほうで確認してくださいね。

さらに、難手術を成功させて病院内で頭角を表そうと必死な上條医師なのですが、その上昇志向バリバリの理由も一緒に明らかになるのですが、キーワードは「父親」です。

後半部分では、これから武良井が院内警察に勤めることになった理由を感づいているらしい色っぽいお姉さん医師の尼子伊織が登場します。彼女は、榊原が隠している秘密にもなにか感づいているようなのですが、そこのところは次巻以降というところですね。

今回は武良井に頼まれて川本が整形外科のナースステーションの手伝いに派遣されます。外来や救急患者が多くてんてこ舞いのナースステーションで半ば迷惑がられながら、川本は麻酔科医・白石葵の妹で看護師の白石日向のサポートに入ることになるのですが、彼女はストーカーの影に怯えていて・・という筋立てです。

そして、武良井が川本をナースステーションに手伝いにいかせたのは、そこで日向に接触させることあったのですが、それは日向が病院内で同じ症状・同じ状況下で発生している連続不審死事件の秘密を知っていると目星をつけたためで・・と展開していきます。

少しネタバレしておくと、響子がみかけた日向が怯える原因となったマスク姿の男は作者のしかけたフェイクですのでご留意くださいね。

レビュアーの一言

医療マンガ、医療ミステリーというのはジャンルとして根強い人気があるのですが、このシリーズはその主人公に医師や看護師、薬剤師といった医療関係者でなく、病院内では異質とも言える病院内の「クレーム処理」の担当者をもってくる、といった斬新な設定がまず珍しい上に、さらに主人公が病院内でおきたらしい過去の不祥事を暴こうとしていること、そこにエリート外科医がからんでいそうなこと、とミステリーファン、サスペンスファンが涎を垂らしそうな趣向が凝らされています。

本シリーズは「武良井」役に桐谷健太さん、「榊原」役に瀬戸康史さんというキャストでフジテレビ系列で2024年1月から実写化・放映されています。クールなイメージの強い二人の対決に注目が集まるところなのですが、原作では正義感が空回りするコミカルなイメージの「川本響子」役を長濱ねるさんがどうこなすかも注目ですね。

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