目まぐるしく動く国際情勢や、他国人にはわからない民族対立が原因でおこる様々な揉め事を、「地政学」的知識と、無鉄砲な行動力+プロレス技で解決していくリスク・コンサルタント「八田百合」の活躍を描く、紛争解決マンガ・シリーズ『田素弘「紛争でしたら八田まで」(モーニングコミックス)』の第5弾と第6弾。
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あらすじと注目ポイント
第5巻 アーミッシュたちのカジノ反対運動を溶かす鍵は幼馴染との思い出
第5巻の収録は
第35話 アイスランド、今と過去の追跡④
第36話 アイスランド、今と過去の追跡【完結】
第37話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負①
第38話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負②
第39話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負③
第40話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負④
第41話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負⑤
第42話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負⓺
第43話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負⑦
となっていて、前巻で日本のバイオベンチャー企業とアイスランドのゲノム解析会社との提携契約の契約書やデータの入ったUSBの盗難事件の容疑者をおって、アイスランドの港町へやってきた百合たちだったのですが、そこで、百合がイギリスの幼少期、数少ない友人だった「エステル」が、契約書とUSBの入ったカバンを引き取ったという話を聞きつけます。
ここで、百合の回想シーンが挿入されるのですが、エステルはユダヤ教徒の中でも厳格な信仰を守る「超正統派」の家の娘で、家はユダヤ人街の中で生産品を売って生計をたてています。彼女と知り合って百合はマーマイトの味とかを教えてもらったのですが、当時勢いを増してきていた移民排斥運動のため、彼女の家は店をたたんでしまった、という過去をもっています。
その後エステルは家を出て、脱ユダヤ人の集まるコミュニティに入り、各国を転々として暮らし、現在はアイスランドで家庭をもっているという状況です。今回、彼女の彼女の夫がカバンを引き取ったのには、タンザニアで百合に邪魔をしかけてきた「揉め事屋」のカイが絡んでいて・・という展開です。
中盤からは、同じ民主主義国家でも、人口37万人の小国アイスランドと違い、3億の人口と混沌を抱えるアメリカでの事件解決が始まります。アメリカの北西部、オハイオ州のローナンクリークという市(ビーバークリークという市がモデルになっているっぽいですね)で、市の再開発のコンペに参加しているデベロッパーのうちの一つにコンサルとして入っていて、対抗馬の会社のコンサルが「カイ」という設定です。
そして、対抗しているデベロッパーの社長二人がもとは大学時代の親友同士です。この大学時代の仲間はもともと4人組で、このほかにアメリカ・インディアンで居留地のリーダーや民主党の下院議員がいて、この4人を軸に再開発計画のコンペが展開していくのですが、その目玉はインディアン居留地に建設される「カジノ」の是非です。そして、このカジノにアメリカでユダヤ教の厳格な戒律を守って暮らしている「アーミッシュ」たちが反対の声をあげてきます。
百合はエステルと暮らした幼少期の教訓とともに、彼らのもとへ出向くのですが・・という展開です。
第6巻 百合は、財政破綻後のナウルの復興に巻き込まれる
第6巻の収録は
第44話 アメリカ、自由と平等と危険な勝負⑧
第45話 イギリス、フットボール&パワー【前編】
第46話 イギリス、フットボール&パワー【中編】
第47話 イギリス、フットボール&パワー【後編】
第48話 ナウル、グローバル社会の嵐とワタリドリと情①
第49話 ナウル、グローバル社会の嵐とワタリドリと情②
第50話 ナウル、グローバル社会の嵐とワタリドリと情③
第51話 ナウル、グローバル社会の嵐とワタリドリと情④
第52話 ナウル、グローバル社会の嵐とワタリドリと情⑤
となっていて、冒頭話では、アーミッシュたちの理解を得て、カイに勝利したと喜んでいた百合なのですが、実はこのコンペを利用した彼の別の企みに利用されていたことが判明するのですが、詳細は原書で。アメリカの一地方都市の再開発計画を使った、彼の国家レベルの分断工作が明らかになってきます。
中盤部分は、本拠地イギリスでの「箸休め」的なお話。このシリーズでおなじみのパブの息子「キッド・ローレン」の属しているサッカーチームの勝利を目指して、百合が協力します。ローレンはチームの女子エース選手・エヴィーの引越し前になんとかいつも負けている相手チームに勝ちたいと言っているのですが・・という展開です。子供のサッカーチームの作戦に、地政学の基本セオリー「シーパワーとランドパワー」が応用されるのが彼女らしいところです。
後半部分の「ナウル編」では、オーストラリアでの土地買収計画で、家の所有者探しを依頼された百合は、その持ち主の本拠地・ナウルへと出向きます。その持ち主は行方知れずなのですが、その息子がオーストラリアの買収対象の家を、マネーロンダリング用の連絡拠点として使っているようで・・という筋立てです。
この後、持ち主の父親がナウルがリン鉱石の輸出で大儲けしていたころ、不正摘発とリン鉱石枯渇後の産業対策を唱えながら失脚した元エリート・ナウル官僚であったことがわかったり、ナウルの政府批判系のマスコミ関係者が絡んできたり、と一挙にナウルの政治問題へ百合が巻き込まれていく展開となっていきます。
レビュアーの一言
このシリーズの特色の一つが各国での郷土食・民族食のシーン。
アイスランド編では、羊の頭の毛を焼き、半分に切って塩水で1時間ほど茹でた「スヴィーズ」、ゆでた白身魚とマッシュポテトに小麦粉・牛乳に合わせて混ぜた「ブロックフィスクル」、サメ肉を常温発酵させた「ハウカットル」やエイを発酵させた「スカータ」といった発酵食が登場。
アメリカ編では、パスタに、チリソースと大量のチェダーチーズをかけ、クミンなどのスパイスを入れた、マケドミア移民が開発したといわれるシンシナティ・チリ、豚肉の塊肉をスパイスで味付けして煮込んだものをフォークでほぐしてパンにコールスローといっしょにはさんだ「プルドポーク・サンドウィッチ」といったボリューミーな肉食系。
ナウル編では「ココヤシの実の刺し身」と「生魚とヤシの実のユッケ」と、今回はバラエティに富んでいます。
民族料理がその国に国民性も表しているようで興味深いですね。
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