【車椅子の「スラムダンク」】主人公・戸川は日本代表候補となりステップアップ=井上雄彦「リアル」5〜7

骨肉腫で右足を切断し、短距離スプリンターの夢を絶たれた「戸川清春」、バイク事故で同乗させていた女性に大怪我をさせて下肢を損傷し車椅子生活にしてしまった、元不良のバスケ青年「野宮朋美」、勉強ができて、バスケ部のレギュラーで女子生徒の人気の的だったのが、自転車泥棒で逃走中にトラックに衝突し、下半身麻痺となった「高橋久信」の3人の若者が、それぞれの「障害」に向き合いながら、車椅子バスケットに関わっていく異色のバスケ漫画『井上雄彦「リアル」(ヤングジャンプコミックス)』の第5弾から第7弾。

前巻までで、三人それぞれが車椅子バスケとの関わりの転機ともいえる事態がおき、戸川は所属チーム「タイガース」が分裂したものの、全日本代表選手の強化選手に選考され、野宮は怪我をさせた少女・夏美のリハビリ姿に自分のだらしなさを思い知らされ、「坊主」になって出直し、高橋はようやく交通事故で下半身が麻痺したままの自分を受け入れられるようになっています。

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あらすじと注目ポイント

第5巻 野宮は、夏美に失恋ショックから立ち直らせる

第5巻の冒頭では、ようやく障がいを受け入れることのできた高橋は、第3巻で野宮に「手抜きの名人だったお前には、何もできない」と挑発されたことを契機に、リハビリに取り組み、在学していた高校への復学の途を探るのですが、この作品が描かれた当時、一般の高校に車椅子の生徒を受け入れる環境はほとんどなく、学校への復帰を断念し、本格的に車椅子生活をおくるためのリハビリ生活にはいるのですが、これがまたとても困難な途ですね。
この辛さから、母親へ向けた暴言が彼の一家をさらに破綻へと追い込んでいくことにんります。

一方、高橋を挑発した野宮は長野の病院へ入院している「夏美」のもとへ車ででかけ、彼女をドライブに誘うことを目標に、運転免許を取得を開始します。バスケットでは才能のある野宮なのですが、車の運転となるとからっきし、というのが意外なところです。まあ、野宮の不器用さが、失恋で落胆する夏美を元気づけたのは間違いないので、許しておきましょう。

さらに、戸川のほうは全日本代表候補の強化チームの合宿に参加したところで、宿敵である「ドリームス」への移籍を打診されたことで、かなり動揺しています。というのも第4巻で彼の所属するタイガースは分裂状態になっていて、このままではリーグ戦に参加できない事態にもなりかねない、というのが原因ですが、ここに過戸川をストリートバスケで打ち負かした、元オーストラリアのNSW大のレギュラーだった「ナガノミツル」が加わったことで、チームにも大変化がやってきます。

第6巻 高橋は8年ぶりに父親と暮らし、過去を取り戻す

冒頭では、高橋が放った暴言によって心が折れてしまった母親・千鶴子は、アルコールの逃避し、とうとう肝臓に支障をきたし入院する事態となります。高橋の心がリハビリに向いていないことを見抜いたリハビリテーションセンターの医師の勧めで父親の暮らす秩父の田舎に外泊することとなります。
もちろん、8年間、音信不通だった父親との間で良好な人間関係が築けるわけはないのですが、一流商社マンだった過去を捨てて焼き物を焼いて生活している父親との暮らしによって、高橋はこわばっていた心を溶かすことに成功したようですね。

夏美に会った後、真っ当な生活をすることを誓った野宮は、引っ越しのアルバイトを始めています。こちらのほうも、ブラックな職場の典型で人間関係はとてもギスギスしているのですが、野宮の不器用さがここでもいい効果を発揮しているようです。

第7巻 タイガースが負ければ、戸川が移籍する?

冒頭では車椅子バスケの東京大会が始まっているのですが、この巻から、若手メンバーの「水島亮」がチームに参加しています。彼はバイク事故で脊髄を損傷して車椅子生活になっているのですが、主治医から無理矢理に「タイガース」に参加させれているという設定です。最初は、全くヤル気がないのですが、コートの中の戸川たちのぶつかり合いを見て、だんだんと引き込まれていってます。

そして戸川のほうはこの大会でタイガースがドリームスに負けたら、ドリームスに移籍するという約束をドリームスの安田監督としているため、かなり必死です。そして、試合では、戸川をストップして彼に代わって日本代表候補となるのを狙っている青木が徹底的にマークしてくるのですが、試合の行方は・・という展開です。
ドリームスと違って、選手層の薄いタイガースは厳しい削り合いが続く試合展開で、徐々に苦しくなっていくのですが、はたして、というとこrですね。

一方、心を入れ替えて、引っ越し屋のアルバイトを始めた野宮だったのですが、組んでいるメンバーの雰囲気もよくなってきたところで、あえなく会社が倒産してしまいます。真面目になろうとすると、思わぬ妨害が神様からはいる境遇のようですね。

レビュアーの一言

日本代表候補となりステップアップの道が開けていく「戸川」に対し、足踏み状態の続く「野宮」と「高橋」です。特に高橋のほうは、下半身の麻痺が治癒しないことを受け入れたものの、今までエリート意識が強かったこともあって、敗北感に苛まれている状態が続いています。しかも、この悪影響は母親にも伝染していて家族の絆もズタズタに切れ始めています。
これがどう回復していくのかが、次のテーマになってきます。

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