【車椅子の「スラムダンク」】二人の若者のプロバスケと車椅子バスケへの挑戦の結果は?=井上雄彦「リアル」8〜11

骨肉腫で右足を切断し、短距離スプリンターの夢を絶たれた「戸川清春」、バイク事故で同乗させていた女性に大怪我をさせて下肢を損傷し車椅子生活にしてしまった、元不良のバスケ青年「野宮朋美」、勉強ができて、バスケ部のレギュラーで女子生徒の人気の的だったのが、自転車泥棒で逃走中にトラックに衝突し、下半身麻痺となった「高橋久信」の3人の若者が、それぞれの「障害」に向き合いながら、車椅子バスケットに関わっていく異色のバスケ漫画『井上雄彦「リアル」(ヤングジャンプコミックス)』の第8弾から第11弾。

前巻までで、心機一転して運送屋のアルバイトという真っ当な途を目指したものの会社が倒産した野宮、負けたらドリーム入団の賭けに敗れた戸川、父親との暮らしで自らの過去を振り返った高橋、とそれぞれ新しい途に踏み出そうとしながらも壁にぶつかった状況だったのですが、今回はそこを踏み越えて再び新たな挑戦が始まります。

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あらすじと注目ポイント

第8巻 戸川、高橋、野宮、三者三様のリスタート始まる

冒頭では、対ドリームス戦で敗れればタイガースを退団してドリームス入を勝手に約束していた「戸川」が、ドリームスの安田監督からメンバー落ちの試合だったことから賭けはチャラにしてもらっているのですが、このことをタイガースのメンバーに正直に喋ったために、皆から非難を浴びています。こういう妙な正直さが彼の良いところでもあり、KYなところでもありますね。

そして、高橋のほうは秩父の父親宅への一時外泊を終えてリハビリセンターに帰り、再びリハビリに復帰しています。ここのところは「ロッキーのテーマ」がかかって逆襲開始、といった風情なのですが、リハビリはそんなに簡単なものでないことはあとで当人がしっかり経験することとなります。
この巻から、新たにリハビリ仲間のオタクの花咲とプロレスラーの白鳥がメンバーに加わります。

一方、野宮のほうは、運送屋が潰れたあと就活を始めるのですが、経験・学歴共に無し、顔はいかつい、というアゲインストが強すぎてうまくいってません。傷心の彼は長野の病院の夏美のところを訪ねるのですが、彼女の新たな挑戦を知って、自分も再度新たな夢を追うことを決意しています。

第9巻 野宮はプロのトライアウト合格を目指す

冒頭では、高橋の花咲、白鳥たちとのリハビリがスタートしています。花咲は高橋にリハビリの出来でマウントをとってくるのがクセで、プライドの高い高橋の競争心を刺激しているところが笑えます。
白鳥はまったくの白紙からのスタートなのですが、3ヶ月で歩けるようになり、その後プロレスのリングに復帰する、と無謀なチャレンジを公言します。呆れる高橋なのですが、この白鳥の無謀さがこれからの物語展開のキーになりますので要注意です。

特にこの巻は、この3人の苦しいリハビリと、それに挫けそうになりながらも白鳥の陽気な無謀さに引っ張られていく姿が中心になっています。

そして、野宮のほうはプロバスケットチームのトライアウトを目指して猛特訓とチームの情報収集を初めています。彼が目指すのは「PG」、チームの司令塔である「ポイントガード」です。プロ・レベルでは身長も体格のフツーの彼が目指すのも無理はないのですが、敏捷性とバスケットIQ、リーダーシップが要求されるオールラウンダーのポジションで、これも相当高い目標に間違いないですね。

第10巻 高橋も新しい目標「車椅子バスケ」を見出す。

冒頭では、病院の定期検査にでかける「戸川」の不安が描かれています。彼は骨肉腫の手術で足を切断しているので、その後も癌の転移がないかどうか定期検査が必要です。この物語では事故で下半身が不自由になった人が多いので、こうした癌の再発の不安を抱えながら、車椅子バスケットに取り組んでいる人々の存在は忘れがちになってしまうのですが、ここで様々な「原点」を思い出させてくれます。
そして、今まで寄り添ってくれていた幼馴染の「安積」も、新しい挑戦目標をみつけたようです。

そして、高橋はプロレス復帰を目指して激しいリハビリを続ける白鳥の姿に、自分の方向性がまだ見いだせないのですが、ある時、リハビリセンターの体育館で練習する「ドリームス」のメンバーを見て、再び「バスケットボール」への情熱を思い出し始めています。ここでその後押しとなるのが、自称「三銃士」の他のメンバーの白鳥と花咲です。
どうやら高橋にも新しい挑戦目標が見えてきたようですね。

第11巻 野宮のプロバスケ・トライアウトの結果は?

この巻ではいよいよ野宮の「トライアウト」挑戦の当日です。会場には主催者より早く到着したものの、現場で眠ってしまって時間ギリギリの受付、おまけに置き引きにあって財布の中身を盗まれ、見ず知らずの他人にお金を借りてトライアウト料を支払うという散々なスタートとなるのが彼らしいところです。
まあ、全く実績もない彼が、このトライアウトでどこまで残れるか不安点が山積みなのですが、その無謀な持ち味でかなりいいところまでいってます。
その様子はぜひ原書のほうで。このあたりは、「スラムダンク」の作者らしい迫力あるバスケットシーンが続いています。

さらに後半では、野宮がデブでいじめられっ子あった幼少時、どうしてバスケットボールと出会い、のめり込んでいったかも描かれているので注目です。

一方、車椅子バスケという新たな目標を見つけた高橋なのですが、健常者のバスケットボール経験者ではあるものの、この途は全くの初心者で、リハビリの体育指導の教官・原が貸してくれた競技用の車椅子の乗りこなしになれるのが精一杯の状態です。本格的な車椅子バスケ・デビューは次巻以降、というところですね。

レビュアーの一言

野宮は健常者なのですが、戸川の属するチーム「タイガース」の押しかけ顧問のようなポジションになっているので、ここでようやく、戸川、野宮、高橋というこのシリーズの主要キャラクターが「車椅子バスケ」というスポーツに集結してきた、という感じです。
戸川の幼馴染・安積も車椅子バスケのキャンプのスタッフに加わるようで、次巻以降、さらに物語の新機軸が展開しそうな気配です。

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