ブラック企業の悪影響の大きさと悪辣さに愕然とすべき — 今野晴貴「ブラック企業ー日本を食いつぶす妖怪」(文春新書)

残業の削減とか、パワハラ・セクハラといった職場環境の問題は昔からとりあげられてきていたのだが、それが国家的な課題として政府や自治体を動かし始めたのは最近のことのように思う。もちろん、電通事件のようなセンセーショナルなものが引き金となったのは間違いないが、それ以上に、本書で取り上げる「ブラッキ企業」や「ブラックな雇用形態」が、あちこちにはびこり始め、特定の業種や個人の運不運の問題としてかたづけられなくなったことの現れではあろう。

構成は

第一部 個人的被害としてのブラック企業

第1章 ブラック企業の実態

第2章 若者を死に至らしめるブラック企業

第3章 ブラック企業のパターンと見分け方

第4章 ブラック企業の辞めさせる「技術」

第5章 ブラック企業から身を守る

第二部 社会問題としてのブラック企業

第6章 ブラック企業は日本を食い潰す

第7章 日本型雇用が生み出したブラック企業の構造

第8章 ブラック企業への社会的対策

となっていて、もちろん、社会的な課題解決の方策を考えるために本書を読んでもいいし、それが本来なのであろうが、21世紀日本の労働形態の一断面を垣間見るルポ的な眼で読んでもよいだろう。

それは、「ブラック企業」という問題が、雇用という個人的な問題ではなく

「若年者雇用問題=非正規雇用の不安定」という構図の理解は、しかしながら新しい問題を引き起こすことになった。非正規雇用という貧困状態への恐怖が、今度は若者を正社員をめざす苛烈な競争に駆り立てたのである(P18)

という、我が国の雇用に関しての意識が生み出したものに相違なく、ブラック企業の特徴が

共通する特徴は、入社してからも終わらない「選抜」があるということや、会社への極端な「従順さ」を強いられるという点である。また両社とも新興産業に属しており、自社の成長のためなら、将来ある若い人材を、いくらでも犠牲にしていくという姿勢においても共通している。経営が厳しいから労務管理が劣悪になるのではなく、成長するための当然の条件として、人材の使い潰しが行われる。(P61)

ということからしても、現代日本の社会が生み出した、構造的な問題であることが明らかであって、そこは「雇用改善」という表層的なことでは解決せず、「日本の意識」そのものを変えていく壮大な努力が必要な課題であるかもしれないのである。

とはいうものの

選別のために辞めさせるも、辞めさせずに使いつぶすも彼ら次第。いわば、ブラック企業は「生殺与奪」の力を持っている。また、ブラック企業はこうした支配の力を、利益を最大化させるために用いるという意味で、行動に一貫性を持っている。「辞めさせる」ことも「辞めさせない」ことも、同様に、あくなき利益追求に端を発している(P99)

部下や社員には見ず知らずの他人以上に何をしてもいいのだというおかしな価値観が、職場を支配している(P100)

といった職場環境、企業環境が放置されて良いはずはないのだが、さて、政府の「働き方改革」はどこまで、切り込めることができるんでありましょうか。とりわけ、インターシップの利用による過重労働は、日本企業だけでなく、グローバル企業共通の話として聞かないわけでもなく、なんとなく、ラスボスの強敵さにドギマギっしてしまうのであるが・・。

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