昔話の本当の真相(?)に導かれる謎解きの数々 — 鯨統一郎「浦島太郎の真相 恐ろしい八つの真相」(光文社文庫)

アームチェア・ディクティブとしては、身体に障がいのある人とか、椅子とかの無生物というのものもあるのだが、本書の探偵役は筆者の得意とする、酒場でグダグダ話をする酔っ払いに囲まれた怜悧な美女というもので、どんなお姿なのか、想像する楽しみも増えるというもの。
 
収録は
 
浦島太郎の真相
桃太郎の真相
カチカチ山の真相
さるかに合戦の真相
一寸法師の真相
舌切り雀の真相
こぶとり爺さんの真相
花咲爺の真相
 
となっていて、共通する展開は、酒場に集まった の面々が、「魔法使いサリー」とか「遊星仮面」とか昔のアニメ放送とかカークランドやギャレット、バースといった、昔のプロ野球の外国人助っ人選手とかの昔話に興じているうちに、そういえば、と最近の未解決事件が探偵の「工藤」 から披瀝される。その事件というのが昔話のもじりのような事件ばかりなのだが、それを聞きつけた、探偵役の桜川東子さんが、昔話の真相を解き明かすのとあわせて、事件の謎も解いてしまう、といった流れである。
 
ただ、その真相というのが、少々ネタバレではあるが、例えば 、第一話の「浦島太郎の真相」では、「この物語は、親が浦島太郎を心配してつくった物語だ」と、なんとも奇想天外なもので、えー、とも、うー、とも唸るばかりである。しかも、この真相が、事件の謎解きに直結するのだが、「75歳の老女が睡眠薬の過剰摂取で殺害された」という事件とどう結びつくか、なんてことは、読んでみないとわからない。
 
さらに、この物語を彩るのが、酒と料理で、登場人物たちが呑む、日本各地の銘酒や、マスターの提供する料理の数々である。例えば、「桃太郎の真相」で供される桜えびの料理は、
 
マスターが桜エビを今度はかき揚げにして出した。三つ葉とコーンを合わせた小ぶりなかき揚げだ。焦げやすいタマネギや人参が入っていないから、桜エビの鮮やかな朱色がよく目立つ
 
といった感じで、なんとも読む側の想像力と食欲を刺激すること請け合いである。
 
さて、所詮は、昔話の真実なんてのは、解釈の仕放題のところがあるから、ここは難しく考えるのは禁物。延々とつづきそうな「思い出話」を噛み締めながら、昔話を踏み台にした飛び回る着想を楽しんでくださいな。
 

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