渋谷の「ホスト・クラブ」は事件の宝庫 ー 加藤実秋「インディゴの夜」

「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という言葉から生まれた渋谷のホストクラブ「club indigo」を舞台にしたミステリー、ということなのだが、このクラブのイメージがつかみづらくて、多分チャラっとしたミステリーかな、と敬遠していたのが、当方の浅はかさでありました。
ホストクラブのオーナー女性とホストをメインキャストとして、東京の夜におこる事件の数々をアクションシーンたっぷりに解決していく、爽快ミステリーである。

もとは創元推理文庫から出ていたが、今は集英社文庫のほうが主流かもしれんですね。ちなみに筆者の名前は「みあき」と読んで「女性」であるそうな。

【収録と注目ポイント】

収録は

「インディゴの夜」
「原色の娘」
「センター街NPボーイズ」
「夜を駆る者」

の四話。ではるが、創元推理文庫版より集英社版のほうが、文庫版用の描き下ろしショートストーリーとかも追加されて充実しているらしいのだが、当方は、古書店で買った創元推理文庫版で読んだのであしからずご了解を。

 

最初の「インディゴの夜」は、このシリーズの始まりの話。このシリーズの舞台となる渋谷のホストクラブ「club indigo」のオーナー兼フリーライター・高原晶、共同オーナー兼編集者の塩谷、そして、「club indigo」のマネージャーで素性不明の元ホスト・憂夜、近くでレストランとバーを数軒経営しているやり手のニューハーフ・なぎさママといったメンツの登場である。そして、このクラブは高原晶の前述の一言をきっかけに、高原と塩谷が貯金をはたいてオープンした店で、新宿歌舞伎町や六本木のはホストクラブの一段下のランクではあるのだが、個性的なホストと低料金で繁盛している、という設定。

最初の事件のほうは、最近「天使のごほうび」という癒やし本をプロデュースして一躍売れっ子編集者となった「古川まどか」という女性の殺人事件が発端。彼女はその本を出してからストーカーにつきまとわれていて、殺された現場にも「天誅」を間違って書いたらしい「天注」という紙が残されていた。そして、彼女の死体の第一発見者が、「club indigo」のナンバーワン・ホストのTMO。彼は、その時、貧乳の若い女性とすれ違ったと言い、自分は殺っていないと主張する。
そして、ストーカーの脅迫は、本の筆者・池下若菜にもきていることがわかる。どうやら、この犯行の陰に、「天使のごほうび」の盗作疑惑がありそうで・・・、という展開。

少しネタバレすると、途中、事件の真犯人判明ってなところがあるがだまされないでね、と忠告しておこう。

二話目の「原色の娘」は、「club indigo」に突然やってきた、TMOにかわってナンバーワン・ホストとなった「ジョン太」の昔の恩人の小学五年生の娘・祐梨亜が巻き起こす騒動の数々。この娘、「輪郭の淡い丸い顔の凹凸の少ないパーツ。地味だが、バランスはいい。年頃になったら、周囲がぎょっとするほどの美人になるタイプ」なんであるが、そういう女子らしく、とにかくわがままで気まぐれ、自由である。

そんな彼女が、新宿歌舞伎町に本店のある業界最大手のホストクラブ「エルドラド」のナンバーワン・ホストの「空也」に一目惚れ。彼を店で指名するために、「club indigo」のメンバーから金を借りまくり、歌舞伎町にやってくるが、そこで、少女ポルノのプロダクションのレ連中にラブホで拉致され・・、といった展開。

小悪魔が意外に小悪魔でなかった、といったところか。

三話目の「センター街NPボーイズ」は、渋谷区の区長の娘が、ナンパされて、外に出せない写真をとられ、それをもとに三千万円を払えとの脅迫がされる事件の解決。

「ナンパ師」というものの存在と、ナンパ師にも「意地」と「誇り」があるんだ、ってなところが新鮮な知識ですな。
事件のほうは、単に金になると思ってやらかした脅迫の後ろで、オトナの利権騒動が絡むと一挙に、乱暴でアブナイ展開になりますね、といったところ。

四話目は、「club indigo」を後足で砂をかけるようにやめて、他の店にスカウトされたホスト「BINGO」と彼のなじみ客のキャバ嬢(この娘もBINGOが移籍すると河岸を変えたのだが)が陥った罠から、彼らを救うために、晶オーナーが潜伏捜査をする話。

「罠」というのは、まあこういう盛り場ではお決まりのピンク産業なんであるが、晶オーナーが、ミイラ取りがミイラになるの典型となるのもお決まりではありますね。

ただ、ここのマネージャー・憂也も、ホストたちもやけに「強い」ので、こういうトラブルがあっても、晶オーナーの「貞操」は守られるんでありますね。

【レビュアーから一言】

「ホストクラブ」を舞台にして「ホスト」たちがたくさん登場、なのだが、あんまり華やかなストーリー展開ではなく、どちらかというと盛り場を舞台に起きる事件、トラブルの数々を、ハードボイルドに解決していく、といった展開の話が多く、妙な爽快感が味わえる。

晶オーナーも結婚しそこねたヤサグレた感じが出ていて味があるし、マネージャーの憂也さんの押し殺した「かっこよさ」、ライバル・空也のいけ好かない「キザっぽさ」などなど、登場人物の角が尖っていて、アブナイ面白さがあるミステリーである。

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