「デザイン」と「ブランディング」のキモを手軽に知るなら本書がオススメ ー 水野学「「売る」から、「売れる」へ 水野学のブランディング講義」(誠文堂新光社)

グッドデザインカンパニーの代表でクリエイティブデイレクターとして、熊本の「クマもん」、東京ミッドタウン、中川政七商店などなどのプロイデュースに携わってきた筆者が、慶応大学湘南藤沢キャンパスで行った講義「ブランディングデザイン」の主要なところを書籍用に編集したのが本書『水野学「「売る」から、「売れる」へ 水野学のブランディング講義」(誠文堂新光社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1講 なぜ、いいものをつくっても売れないのか?
第2講 デザインは誰にでも使いこなせる
第3講 ブランディングでここまで変わる
第4講 「売れる魅力」の見つけ方

となっていて、本書の解説によれば、第1講から第3講は2014年、第4講は2015年に講義されたものをベースにしているらしく、文中に出てくる時事トピックスが、その頃もものが引用されていたりするのが、なんとなく同時代感がありますね。

はじめに目を引いたのは、

ときどき「説明できないけど、これはいいデザインなんです」なんていうデザイナーがいますが、ぼくにいわせるとそれはウソです。
センスが知識の集積をもとにしている以上、説明できないデザインはありません。(P87)

というところ。

「デザイン」というとなにかしらきらびやかな才能があって、専門のデザイン科あたりに学校を出てて、自分たちとはちょっと縁遠い存在のように感じから、デザイナーのぼやっとした根拠のない発言を鵜呑みにしてしまいがちなのだが、筆者によれば、デザインというものも「努力すれば身につけられるもの」で、デザインのセンスとは「集積した知識をもとに最適化する能力である」ということであるらしい。このあたりは「デザイン」への妙な恐怖心を取り除いてくれて、当方のような一般人が、正面から「デザイン」について考えてみるのに格好の後押しになりますね。

さらには、

ブランドが大切だ、重要だと思い始めると、いつのまにかそれを目的化してしまいがちになるのだけれど、あくまでブランディングは手段にすぎません。大切なのは、その先にある目的です。
じゃあ、その目的はなにか。
(略)
その企業にとってめざすベネフィットをもたらさなければ、価値があるとはいえない(P108)

といったところでは、ブランド戦略に限らず、どんな企業戦略でも、一点だけに意識を集中してしまうと会社全体の方向性を見失ってしまうことへの警告でもある。

このほかに

本当はちょっとしたちがいでいいはずなのに、差別化をしよう。アイデアを出そうとしはじめると、どうしてもまだ世の中にないものをつくらなくちゃ、なんて大それたことを考えてしまう。
それで無理をして不必要に奇抜なものをつくってしまって、受け容れられなかったり、売れなかったりすることが少なくありません。
そういう意味で「世の中をあっと驚かようとしてはいけない」。あっと驚かせることにこだわっちゃうけないんです。(P93)

であったり、「ブランドとは「らしさ」のこと(P143)」ということを前提に

「らしさ」を見つけるときのポイントはいくつかありますが、そのひとつは、あまり考えすぎないことです。
ぼくがよくいうのは、いろいろ調べたうえで、「らしさ」を探るときは時間を決めてやる、ということ。(P150)

ということが大事で「深く考え込まずに、とにかくまずはたくさん出してみる。(P152)」といったあたりは、ブランディング戦略に長く、深く関わってきた筆者ならではのもので「重み」と「説得力」がありますな。

【レビュアーから一言】

企業活動でも個人活動でも、「デザイン」や「ブランディング」というものの大事さは、あらゆる場面で言われるのだが、当方のような「素人」には、なぜか恐れ多くて近寄りがたい印象があるのだが、そのへんを払拭してくれるのが本書の一番の効能であろう。

本書の最後のまとめのところで言われているように「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力のことである。・・・「いい」「わるい」で語りものじゃないし、一部の人が生まれつきの才能として備えているものでもない」といった気持ちで、物怖じせずに。とにかく取り組んでみるのが秘訣かもしれないですね。

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