箱根を先導する「潤」の邪魔は「木乃美」が許さない ー 佐藤青南「白バイガール 駅伝クライシス」(実業之日本社)

前作「白バイガール」で協力して事件を解決することのできた、島根県出身・ぽっちゃり系の「本田木乃美」とツンデレ系のバイク娘「本田潤」の二人組なのであるが、今回、捜査の中心となるのは「本田木乃美」のほうで、現場の近くにはいるものの、別用務に就いている。
それも、なんと木乃美が白バイ警官を目指した「箱根駅伝」の先導バイクという任務で、八区後半の戸塚から十区六郷橋までの間の先頭ランナーの先導というTVにもバンバン出る「晴れの舞台」である。
今巻は、「木乃美」の心情を気遣いながらも、箱根の先導に挑んでいく「潤」の姿と、憧れの「箱根」を「潤」に託して、暴行殺人事件の捜査に専念する「木乃美」の姿がオーバーラップして展開されていく。

 

【あらすじと注目ポイント】

話のほうは、高校時代の親友に誘われて、彼女の男性友達のマンションで年越しの宿泊をしていた「両角麗奈」という女子大生が、その男性友達たちに襲われかけ、そこを飛び出すのだが、何者かに拉致されるところからスタート。

そして、この出だしから一転して、「潤」が箱根駅伝の先導の白バイメンバーに選ばれて頑張るところとか、年末の夜、鎌倉の七里ヶ浜の駐車場で起きた、数人の男による暴行殺人事件の捜査に、「潤」や「木乃美」の属する交通機動隊のメンバーも駆り出されていくといった展開となっていくのだが、交通機動隊が関係していくのは、その犯人グループらしいのが、暴走族「闘雷舞(トライブ)」のメンバーらしいという設定で、これは、後半のカーチェイス・シーンへつなげる前振りでもありますね。

捜査のほうは、このグループのリーダーである「劉」をはじめ犯行に関わったメンバーを、一人づつ捕まえていくのだが、大きく動くのは、主犯格である「劉」が潜伏している劉の彼女のアパートへ木乃美たちが聞き込みに回るあたりから。まあ、こういう場合のお決まりで、見事に劉に出し抜かれて逃走されてしまうのだが、これをきっかけに出だしの「両角麗奈」の事件と重なり合ってくるのである。

少々ネタバレをすると、麗奈を襲った「男性友達」は麗奈だけでなく常習的に繰り返していて、その被害者の一人が「劉」の彼女であったという偶然が、暴行殺人と、麗奈の拉致を引き起こしているのだが、殺人と拉致、どちらもそそっかしい思い込みで起きたというあたりがなんとも気の毒としか言いようがない。

で圧巻なのは、麗奈を拉致した劉が、仲間たちに手助けさせながら逃走していくのを、木乃実たち交通機動隊のメンバーが追い詰めていくわけだが、「潤」が先導を務める箱根駅伝も同時にスタートするし、しかも、劉の逃走先は箱根の走行コース、しかも潤の先導する先頭ランナーに近づいていく・・・、といった展開のところである。

劉がなぜ先頭ランナーの方向へ逃げていったか、というあたりには、さらに仕掛けが隠されているのだが、これ以上の詳細は原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

「木乃美」と「潤」がそれぞれに相手を気づかいながら、箱根の先導と捜査を務めていく姿は涙腺をゆるくしてしまうところがあるのだが、もう一つ注目なのは、劉の拉致される「麗奈」の成長ぶりである。
最初はチャラい女子大生風の描写なのだが、苦学生であったり、箱根を走る十区の兄を心配させないようにする気遣いや、劉の監視をかいくぐって警察を連絡をとる手法であるとか、話が展開するにつれ、どんどんしっかりしたお嬢さんになっていくので、そのあたりも本書の楽しみの一つですな。

「木乃美」と「潤」の白バイガール・コンビの活躍は今回も絶好調であるので、彼女たちに声援を送りながら読み進めてくださいね。

【関連記事】

女性白バイ警官は、明るく、元気に、「謎」を解く ー 佐藤青南「白バイガール」(実業之日本社)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です