マツリカさんの正体は自殺した女子生徒の亡霊? ー 相沢沙呼「マツリカ・マハリタ」

相沢沙呼

学校近くの廃ビルに住んでいる、と自称する「S系」の美少女・マツリカと、彼女のパシリとして買い物をさせられたり、「学園の怪異」を調査させられている「柴山祐希」の二人が、学園におきる不思議な事件を解決していく、学園アームチェア・ディクティティブ・ミステリーの第2弾がこの『相沢沙呼「マツリカ・マハリタ」(角川文庫)』。

前巻では、マツリカに知り合って、彼女の魅力と「S系」の命令に魅惑されながら、学園内に起きる事件の謎を解き明かしていっているうちに、心の底に封印してきた「姉の死」をマツリカによって開放されたのだが、今回は、そのマツリカが以前ここで自殺した少女の幽霊ではないか、という疑惑が解き明かされる。

【収録と注目ポイント】

収録は

「落英インフュリア」
「心霊ディクティティブ」
「墜落インビジブル」
「おわかれソリチュード」

となっていて、第一話の「落英インフュリア」は、前巻でマツリカの指令をうけながら学園内を調査しているうちに、仲良くなったクラスメイトの小西菜穂の属する「写真部」の新入部員希望者が、部屋を出て忽然と消えてしまった、という謎を解く話。

その新入部員希望の女子生徒は、写真部の部室に見学に来ていたのだが、突然部屋を飛び出していき廊下を走り去る。写真部の周囲の部屋はすべて鍵がかかっているのか扉が開かない状態で、階段を上がって二階に行くしかないのだが、そこで練習をしていた吹奏楽部の部員は誰も来なかった、というのだが・・、といったところ。そして、その新入部希望の「松本まりか」という女子生徒は、1年生の誰も知らないというのだが、彼女の正体は・・、といった展開です。この松本さんは、柴山の同級生である「高梨」くんの姿を見て逃げ出したことと、新入生でない1年生で、クラスにいない人は、ってなところがヒントですね。
この話で、今話のマツリカさんの秘密に関連する、以前この学校で自殺した「1年生のりかこさん」こと「松本梨香子」さんの怪談話がでてきます。

第二話の「心霊ディクティティブ」は、同級生の写真部員・小西菜穂におきた怪事件。彼女の写真の才能はかなりのものらしいのですが、その彼女が写したカメラにはいっていたフィルムが全感光してしまうというトラブルがおきます。彼女のカメラは、鍵のかかった部室においてあったので、カメラには誰もれにふれることもできない状態で、カメラ店の店員は、この学校の写真部OBの櫻井梨香子さんでフィルムカメラの扱いに慣れているのでミスは考えられない、という状況です。第一話で出た「松本梨香子」の幽霊を写したときはすべてフィルムが感光してしまうということなのですが、小西さんは知らずに撮影してしまったのでしょうか・・・、といった展開ですね。
この謎解きのヒントに、マツリカさんは、柴山くんに彼女のスカートのポケットからハンカチをとらせて

「外からでは、中の様子はわからないもの。手を入れるまでは、ハンカチがあるかどうかわからない。仕方ないでしょう?」

といったヒントを出すのですが、その時の状況はかなり「十八禁」に近いですね。

第三話の「墜落インビジブル」では、マツリカさんの、学校の旧校舎に、その中で一時間を過ごすと、湧き出る灼熱で、身体を溶かされてしまうという「怪奇絶叫殺人ロッカー」があるという噂の真相をつきとめろ、という命令で、柴山くんは旧校舎内のロッカーに一つずつ隠れて調べることになります。
そして五つ目のロッカーに隠れたところで、村木翔子という同級生が、「リカコ」というな名前の子とそのロッカーがある部屋に入ってきます。変質者と思われないようにロッカー内で息を潜めていたのですが、いつの間にか、その「リカコ」が姿を消していた、という謎です。

第四話の「おわかれソリチュード」では、マツリカさんの正体が、以前この学校で自殺したといわれている「松本梨香子」なのではという疑惑が広がってきます。そして、彼女の住んでいるという「廃ビル」に忍び込んだ「高梨」の、そこはガランドウで何もなかったという証言の上に、「松本梨香子」の写真といわれる写真に写っているのが「マツリカ」さんにそっくり。さらにマツリカさんの携帯メールも繋がらなくなり・・・といった展開です。

この話で、「マツリカ」は過去に自殺した女子生徒の亡霊なのか、といった疑惑がはっきりするので、最後の方まで読んでくださいね。

【レビュアーから一言】

今巻の「マツリカ」さんは、やたらと、柴山くんを蠱惑的に「挑発」してくるのが特徴です。例えば、第二話の「心霊ディクティティブ」で、メープル・ワッフルを食べて蜜のついた手を彼のほうへ伸ばして

「舐めて、綺麗にして」
(略)
立ち尽くしたまま、メープルに濡れた彼女の指を眺める。綺麗にする。舐める?え、いいの・・・。マツリカさんは横顔を向けたまま、気だるそうに顎をあげて、暗い双眸を虚空に向けている。僕は三度ほど、生唾を飲み込んだ。窓から差し込む陽は逆光気味で、彼女の姿は影のよう。それなのに、その指先は雪の如き白さ、丸みを帯びた爪の先は、ほんのりと桃に色づいて、甘い汁を溢れさせて濡れる果実のようだった。

といった悪魔の所業に出ます。このあと、柴山くんが躊躇しているうちに、彼女は「時間切れ」と宣言して、結局、柴山くんは空振りに終わるのですが、まさに女王様キャラ炸裂でありますね。

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