アルテはヴェネツィアの猫かぶり娘に苦戦ー大久保圭「アルテ 4・5」

アルテ

中世の頃に比べてまだマシではあるものの、女性の活躍するのに、今に比べ格段にアゲインストであったルネサンスの時代。貴族の家に生まれながらも、自分の力で画家になる道を開こうと、世間の荒波に、若い女性が立ち向かっていく物語『大久保圭「アルテ」』の第4弾と第5弾です。
前巻までで、レオ親方の工房での厳しい修行にも耐え、高級娼婦ヴェロニカや気難しい商人・ウベルティーノの難しい注文もこなした上に、フィレンツェの工房でも男性の職人たちに認められ始めたアルテなのですが、ここで裕福な貴族のお嬢様の家庭教師の口がかかり、新たなステップへの道が開ける「ヴェネツィア編」が始まります。

【構成と注目ポイント】

第4巻の構成は

第16話 ヴェネツィアの貴族①
第17話 ヴェネツィアの貴族②
第18話 ヴェネツィアの貴族③
第19話 別れ
第20話 海路
特別編 アルテの一日

となっていて、まずアルテが肖像画を描いた高級娼婦ヴェロニカのもとへ裕福そうな貴族がやってくるところから始まります。

この貴族はヴェネツィアの権勢家・ファリエル家の次男・ユーリという男性で、人をくったような行動の変わった人物なのですが、落ちぶれかけていたファリエル家を再興させたヤリ手でもあります。

そんな彼は、アルテのもとへ、ヴェネツィアに来て、彼の兄嫁の肖像画を描くとともに、姪の礼儀作法の家庭教師をしてくれ、という依頼を持ち込んできます。
アルテのところに依頼をもってきたのは、宮殿での壁画の共同制作のところで彼女が描いた落書きを見てその才能が気に入ったこともあるのですが、

ということが大きな要因でもあります。このあたりは性別による制約や妨害をはねのけて絵の道でのしあがろうと修行しているアルテにとっては面白くない理由に間違いないところです。

当然、彼女はこの依頼を断ろうとうするのですが、レオ親方の師匠の娘・ルザンナが身重の身ではるばるシエナからフィレンツェへ帰ってきたことで変化が生じます。

ルザンナの亭主は最近流行り病で急死したため、持参金を返してもらい、それで暮らしをたてようと故郷フィレンツェへ帰省してきたのですが、亭主の実家が難癖をつけて少額しか返そうとしないという状況に困り果ててしまいます。ここで、知り合いが困っているのを見逃せないアルテが乗り出すのですが、ルザンナやレオ親方には力のある親戚筋もなく、アルテの実家も貧乏貴族なのでこれまた頼りにならず、ということで、頼ったのはヴェネツィアの有力者・ファリエル家のユーリで・・という展開です。

当時、財産権は女性にはなく、さらに中流階級以上の女性は職につくことはなかったので、結婚する時にもってくる持参金は、結婚後の女性の死ぬまでの費用という性格があったようです。なので、夫が死んだ後は、持参金を返却してもらってそれで暮らしていくという仕組みになっていたのですが、持参金を実家の事業の費用に充てていたり、夫が使い込んでしまっていたり、とトラブルが絶えなかったことは間違いないようですね。

そしてファリエル家からの圧力によって、ルザンナへ無事持参金が返却されるのですが、その見返りにファリエル家のユーリからの要請を受け入れざるをえなくなり、アルテはヴェネツィアへ行くことを承諾するのですが、そのあたりの詳細は原書で。

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続く第5巻の構成は

第21話 新天地
第22話 悪童①
第23話 悪童②
第24話 秘密
第25話 カタリーナの食卓

となっていて、ファリエル家のユーリの依頼を受諾し、彼の兄嫁の肖像画製作と姪の家庭教師をすることになったアルテはベネツィアへ到着します。このシリーズの舞台はルネサンス期のイタリアなので、ちょうどヴェネツィアも最盛期を迎えている頃ですね。

ファリエル家に出向いて紹介されたのが、ユーリの兄嫁で絶世の美女・ソフィアと

姪のカタリーナです。

カタリーナは初対面のときは人見知りをする女の子という風情で、食事の際にはうまくフォークが使えないといって手づかみで食べる有様なのですが、これがとんでもない猫っかぶり。

食事マナーから礼儀作法。社交術に至るまで、実は完璧にこなすのに、家族や召使いの前では、けしてそれを見せず、アルテのような礼儀作法の家庭教師には教えているフリをしてればいい、という態度で接してきます。今までの家庭教師は、この上から目線の「お嬢様」に愛想をつかして辞めていった、というわけですね。

アルテは、カタリーナがなぜこういう態度をとるのか聞き出そうとするのですが、おとなしく喋ってくれるはずはないのですが、ある夜更け、カタリーナがまだ起きているのに気付いたアルテが彼女の部屋のドアをノックすると、料理本を読んで夜ふかししているカタリーナを発見します。

まあ、この秘密を両親にバラさなかったことで、カタリーナの信頼を得ていくのですから突撃してみた価値はあった、ということでしょうか。このおかげで、アルテはカタリーナの秘密の楽しみに招かれることになるのですが、これが次巻以降で、カタリーナが両親に対して頑なな態度をの理由がわかる緒になっていきます。

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【レビュアーから一言】

同じ女性であっても、夫に従い、自分の意見を言うことのないソフィア、自分に関心を持たない両親たちから心を閉ざし、自分を許容してくれる人たち以外に偽りの姿を見せるカタリーナ、自分の進むことにまっしぐらに突進していくアルテ。このシリーズに登場してくる女性たちの姿は、現在の女性たちの引き写しにも見えてきます。
ここに次巻以降で何か陰を感じさせるファリエル家の小間使・ダフネも絡んでくるようで、ルネサンスの物語でありながら、なにやら現代ビジネス漫画のようでありますね。

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