ヨーロッパを揺るがす宗教戦争を、日本人銃士が駆け抜けるー「イサック」 1・2

17世紀初頭から半ばにかけてカトリックとプロテスタントが中央ヨーロッパを舞台に争った宗教戦争で、ドイツ人口の20%を含む800万人の死者を出した「人類史上で、最も破壊的な戦争の一つ」といわれた三十年戦争の時代に、戦国時代の日本から傭兵としてやってきた、火縄銃の名手「イサック」の戦場での活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLEーS「イサック』シリーズの第1弾と第2弾。

構成と注目ポイント

日本の銃士・イサック登場

第1巻の構成は

第1話 たった一人の援軍
第2話 傭兵契約
第3話 王太子アルフォンソ

となっていて、舞台は、スペインのカトリック軍の攻撃が間近な、ドイツ南西部のプファルツ選帝侯領のフックスブルグ城外で、バイエルンから逃れてきた老人と少女を襲う兵士を、日本人の傭兵が救うとところからスタートします。

少女の名前は「ゼッタ」といって、鍛冶屋をしている祖父と一緒にバイエルンのカトリック軍から逃れてきたプロテスタントという設定。さらに、日本人傭兵のほうの名前は「イサック」。オランダのオランニエ公の派遣した百人の傭兵のうち、たった一人の残留者です。

当然、ここを守るプファルツ選帝侯フリードリヒ五世の弟・ハインリッヒは、残りの傭兵はみな逃げた、と聞いてとんでもなく失望するのですが、ここからの逆転劇が本巻も読みどころですね。

この城を攻めるのは、スペインに傭兵として雇われた「城攻めの悪魔」と呼ばれる「スピノラ」の傭兵部隊9000人で、この傭兵部隊は、率いるスピノラ将軍の才気と信用で統制がとれ、士気も衰えていない最強の傭兵たちです。

その最強に軍隊が、万全の城攻めの準備をして攻めかかるのですから、守備するハインリヒ軍の劣勢は明らかで、攻撃側のスピノラ将軍は余裕たっぷりに城近くまでやっくるのですが、ここで彼が予測していなかったのが、日本人銃士・イサックの存在です。

城から350歩のところまでやってきたスピノラを狙うイサックの銃弾は・・・ということで、一人の銃士が戦局を変えていくドラマの始まりです。

イサックの銃撃でひとまずの危機を脱したハインリヒ軍なのですが、雇っていた傭兵隊長のボルマンが契約切れを通告してくるとともに、スペイン軍は王子アルフォンソが騎兵3千、歩兵5千、輜重部隊6千の大軍で迫ってくるさらなる危機に見舞われることになるですが、さて、ハインリッヒとイサックの作戦は・・・、という展開です。

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イサック、スペイン王太子を敗走させる

続く第2巻の構成は

第4話 ゼッタの決意
第5話 渓谷の攻防
第6話 二つの銃
第7話 イサックとロレンツォ

となっていて、スペインの王太子アルフォンソの大軍を前に、ハインリヒとイサックは奇襲によって危機を脱することを計画します。

ハインリヒは、スペイン軍が野営する渓谷の隘路から奇襲攻撃をかけ、イサックは、渓谷の中ほどのテントで眠る王太子を銃撃する、という作戦です。ここで、負傷したイサックにゼッタが銃撃の介助につくこととなり、二人の間に信頼関係がつくられるとともに、ハインリヒ軍の士気を高めていきます。

ハインリヒの奇襲攻撃で不意をつかれたスペイン軍はすぐさま体制を立て直し、そこへ王太子らしい騎士が登場します。ここで騎士を撃てば、と期待がかかるところですが、イサックは馬を撃っただけでスルー。この騎士が影武者であることを見抜いていたようですね。

そして、彼が次にうった手は、王太子のいるテントを守護する兵士たちを次々と撃ち殺していきます。イサックは、けして王太子を銃撃しようとせず、周囲の者を撃つことで、王太子に恐怖感を抱かせ逃走させるのですが、ここには彼の考え抜かれた作戦が秘められているのですが、その理由は原書のほうでご確認を。

で、自らの逃走でスペイン軍の総崩れを招いたアルフォンソ王太子なのですが、ここで再度、攻撃をかけるための作戦を練り上げます。イサックに対抗するために、ロレンツォという銃士を呼び寄せ、イサックに撃たれて戦死したスピノラ将軍の替え玉に彼の弟を立てて傭兵軍を指揮させる、という作戦なのですが、このロレンツォという男が、イサックが仇として日本から追ってきた人物らしく・・という展開をしていきます。

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レビュアーから一言

日本史と世界史の流れが妙に接合する時というのがあって、日本の幕末の頃、アメリカの南北戦争の集結で不要になった銃が大量に日本に流れ込んで、倒幕の流れと薩長の優位さを作り上げていったように、本シリーズでも、日本で戦国時代が終わりを告げ、そこで不要になった精度のいい火縄銃とその使い手が、ヨーロッパの戦争に傭兵として流れ込んでいく、という設定は見事ですね。

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