帝国の傭兵軍団に囚われたプリンツを救出せよー「イサック」8・9

17世紀初頭から半ばにかけてドイツやオーストリアなどの中央ヨーロッパでカトリックとプロテスタントの間で戦われた宗教戦争「三十年戦争」を舞台に、大阪夏の陣の後、戦乱が収まった日本から、兄弟弟子が師匠のもとから盗み出した銃を取り返すため、傭兵としてやってきた火縄銃の名手「イサック」の活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLEーS「イサック』シリーズの第8弾と第9弾。
前巻までで神聖ローマ帝国皇帝・フェリディナンド2世の傭兵隊長・ヴァレンシュタイン将軍の軍勢によってプロテスタント軍が壊滅し、イサックたちもちりぢりになってしまった後の展開が描かれます。

構成と注目ポイント

第8巻の読みどころ

第8巻の構成は

第32話 選帝侯とゼッタ
第33話 死闘
第34話 執念
第35話 使命
第36話 作戦

となっていて、城の近くの森に住む神学者を訪ねるため、プファルツ選帝侯のお供で外出したゼッタは、プロテスタント軍が壊滅したことを知ります。

選帝侯と自らの安全を図るため、ゼッタはオランダへと向かうことを決意します。オランダは当時、スペインに対して独立戦争を戦っていて、二人にとっては唯一残された「亡命地」であったと推測されるのですが、この逃亡中に、選帝侯をしっかりと「守る」ゼッタの姿が「良い」ですね

一方、ヴァレンシュタイン軍とプロテスタント軍の大激突の中を生き延びたイサックは、彼から銃を奪うためにやってきた、ロレンツォと一騎打ちをすることになります。おそらくロレンツォは銃を奪うためにわざわざヴァレンシュタイン将軍の軍の傭兵になったのでしょうね。銃をめぐる攻防については原書のほうで。自分を足を犠牲にしてまで、銃を奪おうとするロレンツォ(錬蔵)の執念がちょっと怖いですね。

さらに、クラウスとエリザベート男爵も生き延びて合流することに成功するのですが、ハインリヒ王子がヴァレンシュタイン軍の捕虜となっていることが判明し・・、という展開です。

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第9巻の読みどころ

続く第9巻の構成は

第37話 決行
第38話 着火
第39話 不在の銃
第40話 貧者の戦い
第41話 ライン川の攻防

となっていて、ヴァレンシュタイン軍・プロテスタント軍の大激突を生き延びた、イサック、クラウス、エリザベート男爵たちは捕虜となっているハインリヒ王子の救出に向けて策を練ります。

ヴァレンシュタイン将軍は、もともとボヘミアの小さな貴族の出身で、今は傭兵隊長として権勢をふるっていますが、神聖ローマ帝国の爵位をもっていないため、きちんとした領国をもっていません。その爵位を手にするため、ハインリヒ王子を利用しするため、彼を簡単に殺してしまうわけにはいかないのがつけ目ですね。

さらに、イサックたちは、城の中に忍び込むのに、スラブ騎兵とマジャール弓騎兵との待遇の違いから生じた感情的な対立を利用します。このへんは、混成部隊のまとまりの悪さを利用した感じですね。

ヴァレンシュタインの隙きをついて牢からの脱出に成功したハインリヒ王子たちは、選帝侯とゼッタと出会い、さらに、選帝侯が雇っていた傭兵軍に合流することに成功します。しかし、選帝侯から契約金の支払いが滞っている穴埋めをするため、近くの町の略奪をしようとしているのですが、それを聞いたゼッタが略奪を止めようと説得に動くのですが・・・というところです。

体勢を立て直したヴァレンシュタイン軍との攻防のあたりも含めた、詳細は原書のほうでどうぞ。

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レビュアーから一言

こうした戦記物は、主人公が味方する勢力が結末は別として、一時は優勢になったりと景気のいい場面もあるものなのですが、本シリーズでは味方するのが、ボヘミア王に即位したものの短期間で王位をおわれた「冬王」フリードリヒ5世であるせいか、戦闘の行方は景気の悪い結末になってしまいます。
ただ、そうした不利な戦況の中で戦うイサックを、気丈に味方を支えようとする「ゼッタ」の健気なところが強調されるので、そこは作者の思う壺かもしれないですね。

コメント

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