楽丸と「あお」は恐丸の最終試験に挑戦するー安達智「あおのたつき」6

江戸を代表する遊郭「新吉原」の羅生門河岸の角にある「九郎助稲荷」の奥の浮世と冥土の境にある「鎮守の社」を舞台に、売れっ子の時に死んだ花魁の霊「あお」と宮司の「楽丸」と社の主神・薄神の三人が、思いを遺して死んだ遊女の霊を浄化させていく、少しコミカルなオカルト時代劇本『安達智「あおのたつき」(マンガボックス)』シリーズの第6弾です。

前巻で淡神白狐社の喜丸大宮司から認めてもらった楽丸とあおなのですが、今巻では楽丸に惚れている儚神白狐社の「哀ゐ丸」宮司と、楽丸の陰の姿ともいうべき微神黒狐社の「恐丸」宮司の承認をもらうための奮闘が描かれます。

「あおのたつき 6」の構成と注目ポイント

構成は

其ノ弐拾陸 儚神白狐社②
其ノ弐拾漆 微神黒狐社①ー深淵ー
其ノ弐拾捌 微神黒狐社②ー夜噺ー
其ノ弐拾玖 微神黒狐社③ー傀儡ー
其ノ参拾  微神黒狐社④ー足抜けー
番外編   昼見世漫談
単行本限定 訓練日和

となっていて、まず最初の物語は、吉原の四大稲荷をつかさどる廓番衆のうち「朧神白狐社」を司る怒宮司、「淡神白狐社」を司る喜丸大宮司の承認を得た楽丸とあおが、「儚神白狐社」の「哀ゐ丸」宮司の承認を得られるかどうかの決着編です。
前巻に最終話をおさらいすると、「哀ゐ丸」の命じた修験は「鈴づくり」。それもただの「鈴」ではなく言霊を閉じ込める鈴に「良い言霊」を封じ込めて「良い鈴」をつくることができるかどうかの修験です。で、この修験を開始する前に、「哀ゐ丸」は「あお」の悪口を鈴に吹き込んで「極悪」な鈴をこしらえるのですが、その悪口の

「食うにも困る貧乏百姓の子」や「田舎娘」と言う言葉に反応して悪口を吹き込みそうになる「あお」を止めるため、薬丸のとった手段は、お神酒徳利をぐっと呷って・・という展開です。この楽丸の行動によって、正体を現した「哀ゐ丸」にかける「碧」の言葉が、売れっ子の花魁らしいですね。

そして、最後に残るのが、楽丸の甘ちゃんの「お祓い」を非難し、不浄なものはすべて祓ってしまおうとする「恐丸」宮司の承認です。今回、彼が楽丸に与える「修験」の試練は、「あお」のわだかまりを解け、という宿題です。恐丸によって神社内の暗闇の中に放り込まれた「あお」を救出するために、楽丸もその中に入り込むことになります。

「あお」たちが放り込まれた闇の中では、まだ生きていた時の「あお」こと三浦屋の「濃紫」花魁が、遊郭の中で下働きの禿やおつきの新造たちを助けながら、「姉さん」遊女として活躍している姿が描かれます。

ただ、彼女の気がかりとなっているのが、娘の稼ぐを搾り取っていく、アコギな母親と、実家に遺してきた足の不自由な妹です。濃紫は、妹に健やかな暮らしをさせるために、苦界に身を沈めたらしいのですが、どうやら母親のほうは濃紫だけではなくて、妹も遊郭に売り飛ばして自分の贅沢な暮らしの足しにしているようです。
妹のそんな情報を掴んだ濃紫は妹に会うために、吉原からの脱出を画策するのですが・・・といった筋立てです。売れっ子花魁だった「濃紫」が、「あお」となって楽丸のいる神社にやってきた経緯の一端が垣間見えてくる展開となってます。

あおのたつき (6)
廓番衆の修験を通じて、目指すべき「お祓い」の形が明確になった楽丸とあお。そ&...

レビュアーの一言ー「濃紫」時代の吉原が興味深い

妹に会うために吉原からの脱出を計画する「濃紫」は、吉原のお歯黒溝あたりの構造を調べたり、花魁から巧みに金を搾り取って年季明けを遅らす廓主の仕掛けとか、いろんな裏情報も仕入れていくことになります。このあたり、作者が趣味にまかせて集めまくった「江戸期の吉原」情報が惜しげもなくでてくるので、「あおのたつき」ファンだけでなく、「歴史」ファン、「江戸」ファンも楽しめるのではないでしょうか。

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