「ちるらん 新撰組鎮魂歌」18~20=幕末の二大巨星・高杉晋作、坂本龍馬、志半ばに堕つ

幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第18弾から第20 弾。

前巻までで、試衛館以来の同士・山南敬助を粛清し、隊の中に動揺が走ったところなのですが、第二次長州征伐の幕府軍敗北が新選組へも影響してくる中、幕末を動かした二大巨星に不慮の最期が訪るとともに、伊東甲子太郎による「御陵衛士」という分派行動に決着がつけられます。

第18巻 幕府軍を敗走させた高杉晋作、力尽きる

第18巻の構成は

第七十五話 最期の花火
第七十六話 開戦前夜
第七十七話 それぞれの覚悟
第七十八話 遺言

となっていて、幕府による第二次長州征伐の包囲網が敷かれていく中、高杉晋作と坂本龍馬は、起死回生の一手・薩長同盟の締結に向けて動き始めています。

高杉の目的は薩摩を通じて英国から軍艦と最新鋭の銃・大砲を買付け、それを使って幕府と戦争をすることなのですが、彼が焦っているのは、高杉の結核が悪化していることもあるようですね。

そして、第二次長州征伐位が本格化し、周防大島が幕府艦隊に占領された上に、四方から長州領へと攻め込まれる中、坂本龍馬の調整で薩長同盟を成立させた高杉晋作は、英国から200トンの老朽蒸気船を手に入れ、これを使って幕府の艦隊に奇襲をかけ、幕府艦隊を撤退させることに成功します。
これがきっかけとなって、長州軍が反撃。ついには幕府軍の陸上の最重要拠点・小倉城を陥落させ、幕府軍が攻め入った四境のうち三箇所で敗走させることとなります。

高杉晋作の戦争指揮によって、徳川幕府瓦解が始まるわけですが、残念ながらこの半年後、彼は結核によって病死することとなります。

一方、新選組のほうでは、山南敬助粛清後、参謀の伊東甲子太郎が持ち前の能弁で力を伸ばしてきています。彼には、怪物公家の岩倉具視が手を回していて、彼に新選組を乗っ取らせて操るつもりなのですが、伊東は伊東で、岩倉や西郷の力を使って国の実権を握る魂胆のようです。

この後、山南敬助が自らの生命を犠牲にしてまとめた新選組が、「人の心を読んで、人の心を操る」異能を持つ伊東甲子太郎によって分断されていくこととなります。

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第19巻 坂本竜馬、京都「近江屋」に斃れる

第19巻の構成は

第七十九話 堕ちていく
第八十話  哀しき裏切り
第八十一話 奥底の本音
第八十二話 暗殺計画

となっていて、冒頭でイギリスの武器商人・グラバーから手に入れた「阿片」を使って、伊東甲子太郎が、藤堂平助を阿片中毒とした様子が描かれています。

史実では明らかになっていないのですが、今シリーズでは、薩摩示現流への恐怖心が隠せない平助の隙をついて、精神安定のために阿片を勧めたこととなっています。試衛館以来の生え抜きの同士である藤堂がこの後、近藤や土方と決別し、伊東たちと合流して新選組を離れた理由をこのあたりに求めているようです。

そして、1867年3月10日、伊東甲子太郎は、岩倉具視や薩摩勢の後押しを得て、孝明天皇の墓陵を守るという役目の天皇の直属軍、「御陵衛士」を拝命します。建前は朝廷からの勅命で、薩摩・長州の監視は続けると言っているのですが、実質的には新選組からの離脱なのですが、ここで一番問題になったのが、藤堂平助も伊東と一緒に離脱するというところです。新選組結成以来のメンバーの脱退で、実質的に新選組は二つに割れることとなりますね。

表面上はにこやかに送り出した近藤たちだったのですが、伊東たちの動きにはなにか裏のあるはず、と斎藤一を密偵として送り込み、それを探ることとなるのですが・・という筋立てです。

一方、歴史の大きな動きは、新選組内の対立だけでなく、薩長同盟を成功させた坂本龍馬にも及んできます。第二次長州征伐での勝利をてこに、倒幕の準備を進める薩摩と長州、そして岩倉具視ら倒幕派の公家の動きを封じるため、龍馬は土佐藩主・山内容堂を通じて、第15代将軍・徳川慶喜に「大政奉還」の建白。慶喜が多くの幕臣の反対を押し切ってこれを進めていきます。

これによって平和裏に政権交代が進むのか、と思われたところで起きたのが、「竜馬暗殺事件」ですね。暗殺を行ったのは一応、幕府見廻組となっているですが、新選組や薩摩、長州など様々な陰謀説が消えない事件ですね。

そして、ここで密偵として潜入していた斎藤一が、藤堂平助の阿片中毒と、伊東たちが武器弾薬を蓄え、薩長と組んで、倒幕に動くことをつきとめます。大政奉還により徳川幕府が消滅し、龍馬暗殺によって徳川慶喜が政府の首班となる可能性がなくなり、新選組にとって圧倒的に政治的には不利な状況の中で、近藤と土方が決断したのは、伊東甲子太郎の抹殺と「御陵衛士」の殲滅で・・といった展開で次巻に続いていきます。

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第20巻 新選組を壊す「伊東甲子太郎」を葬れ

第20巻の構成は

第八十三話 罠と誤算
第八十四話 油小路の変
第八十五話 最期の選択
第八十六話 最後の将軍

となっていて、伊東甲子太郎と「御陵衛士」との決戦を覚悟した近藤勇、土方歳三たち新選組の幹部七名は彼らを不動堂村の屯所近くの空き地に呼び出します。

もちろん何の備えもなく彼らがやってくるとは思ってもいなかったのですが、甲子太郎が集めたのは、御陵衛士の隊員・薩摩藩士ほか50名という大勢のほか、幕末の四大人斬りのうちの二人、薩摩の中村半次郎と肥後の河上彦斎も加わっています。

伊東は、中村と河上の後ろに避難して自分は安全な位置で戦いに臨むことを考えているようですが、中村半次郎は彼に立ち去れと命じます。

中村半次郎は、明治になってから、下野した西郷隆盛に忠実に従い、西南戦争で彼の殉じた、ある意味「忠義者」なので、今回は、西郷の命令で伊東の加勢には来たのですが、卑劣な伊東は大っ嫌いなようですね。

この半次郎の言葉に従って、伊東甲子太郎は、藤堂平助とともに油小路まで逃げて、弟の鈴木三樹三郎たちと合流しようとするのですが、ここで待ちかまえていたのが、近藤たちの本隊から病気のため外されていた沖田総司です。卑劣な伊東甲子太郎と阿片がまわったままの藤堂平助に対して沖田はどう行動するか、詳しくは原書のほうで。

少しネタバレしておくと、伊東は沖田の剣によってあっさり片付けられてしまうのですが、藤堂は昔の「新選組八番隊組長」当時の気持ちを思い出し、鈴木三樹三郎たちを斃した後、新選組隊士らしい「決着」を自らの手でつけることとなります。

一方、土方たちは、幕末最凶の剣士である中村半次郎、河上彦斎、そして薩摩の示現流との戦いを強いられることとなり、戦いが長引けば相当の犠牲がでることが予測されたのですが、途中で伊東が斃されとの報告入った途端、半次郎は剣を収め、戦いからフェードアウトします。どうやら、伊東率いる「御陵衛士」隊に生命をかけて味方する気は毛頭なかったようです。

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レビュアーの一言

明治維新を見ずに高杉晋作と坂本龍馬は非業の死を遂げるわけですが、もし彼らが生きていれば、薩長を主体とした政府ではなく、諸藩が連合し、徳川慶喜が政府の中心となる合衆国政府が成立したのでは、といわれています。

もし、そうなっていれば、内乱といえる「戊辰戦争」や賊軍とされた側に長く残った怨恨もなかったのでは、とも推測されるのですが、一方で、イギリス、フランス、プロシア、ロシアといった外国勢力は虎視眈々と「日本」を狙っていたわけで、彼らがそれぞれ違う勢力を担いでいたら、日本は分裂国家に陥っていたかもしれず、判断に迷うところでありますね。

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