川本三姉妹をかき乱す実父を「零」は撃退できるか?=羽海野チカ「3月のライオン」10~11

両親と妹を交通事故で失い、プロ棋士に家に引き取られ、孤独を抱えながら成長し、中学生でプロ棋士となった少年「桐山零」を主人公に、彼が下町でもんじゃ焼き屋を経営する祖父とともに暮らす「あかり」「ひなた」「モモ」の三姉妹と出会い、さらに彼を取り巻く高校の元担任教師・林田や、同期のライバル・二海堂などの棋士仲間と接しながら成長していく、ハートフル将棋マンガのシリーズ『羽海野チカ「3月のライオン」(ジェッツコミックス)』の第10弾~第11弾。

前巻までで、「零」が新人王を取り、宗谷名人との記念対局の中で新しい経験を積んで棋士としての実績を積み重ねたり、進路に迷っていた「ひなた」が「零」と同じ高校へと進学を決めていくなど万事が順調に進んでいっていると思われた中、突然、川本家の三姉妹に過去に決別したはずの「招かざる者」が訪れ、彼女たちの生活を脅かしていくのがこのタームです。

あらすじと注目ポイント

第10巻 「川本三姉妹」に過去に決別した「招かれざる者」が訪れる

第10巻の構成は

Chapter.95 新しい日々
Chapter.96 昼休み
Chapter.97 もうひとつの家
Chapter.98 やわらかい風
Chapter.99 雨の降る街
Chapter.100 泳ぐ人①
Chapter.101 泳ぐ人②
Chapter.102 訪問者①
Chapter.103 訪問者②
Chapter.104 約束

となっていて、冒頭では、零と同じ駒橋高校に入学した「ひなた」は、手作り部に入部して、新しい友人もでき、イジメに悩んでいた中学時代から一転して明るい学生生活を送っています。さらに零のほうも、将棋部に学校の校長・教頭、元担任が入部してどうにか存続もでき、それなりに充実した生活を送っているようです。ただ、三篇目の「もうひとつの家」をみると、世話になっていた「幸田」の家とのしこりは解消していないようです。

中ほどでは、零と順位戦で対局する「入江」が描かれます。彼は「B2」級いりまでに20年かかった遅咲きの騎士なのですが、勝率は6割を維持し続けているという粘り腰の棋士です。この彼が「零」と対局するわけですが、強さに磨きがかかりはじめた零といぶし銀のような彼の勝負がいい味を出しています。

後半では、梅雨に入り、体調を崩した川本家の祖父が入院したのですが、その隙を狙うように、三姉妹の実父・誠二郎が突然、川本家を訪問してきます。彼は、ようやく現在の妻を説得でき、三姉妹と一緒に暮らせるようになったので、この家で同居しようと申し出てきます。やけにうそ明るい口調の彼の態度にうさん臭さを感じる「零」と、彼におびえる「ひなた」だったのですが・・という展開です。

最終盤では、再び不倫を繰り返し、さらに勤めていた中古車販売店も女性問題で首になるという現在のだらしない状況を暴露されながらも、グダグダと自分の理不尽な要求ばかりを喋って退去しようとしない誠次郎に対し、零がある衝撃的な宣言をしますので詳細は原書で

第11巻 「あかり」は実父・誠次郎と決別する

第11巻の構成は

Chapter.105 小さいおはなし
Chapter.106 たのしい晩ごはん
Chapter.107 大阪①
Chapter.108 大阪②
Chapter.109 大阪③
Chapter.110 大阪④
Chapter.111 カッコウの鳴く夜
Chapter.112 にちようび①
Chapter.113 にちようび②
Chapter.114 やさしい歌
スピンオフ ファイター

となっていて、冒頭では前巻の最後の「零」の爆弾発言にショックを受けた「ひなた」は熱を出して寝込んでしまっているのですが、回復力の強い彼女は、零の発言を実父を追い払うための「便法」と理解して心の平穏を取り戻しています。まあ、この爆弾発言の結末がどうなるかは次巻以降で別展開があるので、そちらで確認してくださいね。

中盤では、零は大阪での「藤本雷堂」棋竜との対局に臨んでいます。対局中にあれこれとしゃべりかけてくる指し方で、いつもの「零」であればその雑音に翻弄されてしまうところなのですが、対局に短時間で勝って、東京へ一刻も早く帰りたい一心の彼は動じることなく、指し切っています。その代わり、「ひなた」にプロポーズしたことを「雷堂」にゲロすることとなり、次巻以降これがどう恋の行方に響いてくるかは未知数ですね。

そして、東京へようやく帰還した「零」は、「川本三姉妹」の帰りを、隠れて待っている誠次郎がいる近くの居酒屋へと乗り込みます。そこで、零は誠次郎が川本三姉妹に数年ぶりに接近してきた理由、今の妻が病気であることや、今の妻と子供の世話を三姉妹に押し付けて、自分は新しい彼女のところへ行こうと目論んでいることを暴露し、誠次郎を追い払おうと試みます。

その時点では彼を退散させることに成功するのですが、後日、誠次郎は最終手段に打って出ます。なんと現在の妻との間にできた幼い女の子をつれて、散歩途中の三姉妹の前に現れプレッシャーをかけてきます。これに対して、三姉妹はどう対応するのか・・といったところがポイントですね。

レビュアーの一言

今回、突然、三姉妹の前に現れて暴風雨のようにかき乱しながら、逃げ去っていった三姉妹の実父・誠次郎なのですが、この結末できになるのは、彼に連れられていた幼い女の子の行く末ですね。
おそらく、誠次郎が改心して真面目な生活に戻るとも思えず、三姉妹は祖父と一緒に団結して成長できたのですが、病弱の母親以外頼るもののいない彼女がどうなるか心配なところですね。

このシリーズでは、「ひなた」をいじめていたせいで逆に孤立してしまった高城とか、事態の解決後、取り残されてしまう人物がところどころにでてくるので、彼女たちの「救済」の場面を次巻以降のどこかで描いてほしいものです。

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