【ネタバレ】フリーレンは能力を秘匿し、魔族「断頭台のアウラ」を斃す=山田鐘人・アベツカサ「葬送のフリーレン」2~4

「魔王」を打ち倒し、世界に平和と安寧をもたらしてから50年経過後。パーティーの魔法使い役であった、エルフのフリーレンを主人公に、魔王が滅びた後の「その後」の世界が描かれる異色の冒険ファンタジー「葬送のフリーレン」の第2弾から第4弾

前巻では、冒険終了後、50年経過して、かつてのパーティーの仲間の元を訪ねて、勇者ヒンメルや僧侶ハイターの死に立ち会い、彼らや人間のことをもっとよく知るため、ハイターから託された魔法使い見習い「フェルン」とともに、「魂の眠る地」を目指すことになったフリーレンなのですが、このタームでは、新しい旅の仲間ができていきます。

あらすじと注目ポイント

第2巻 フリーレンは北方へ入り、魔族の「リュグナー」の一味と戦う

第2巻の構成は

第8話 百分の一
第9話 死者の幻影
第10話 紅鏡龍
第11話 村の英雄
第12話 北方の関所
第13話 解放祭
第14話 言葉を話す魔物
第15話 ドラート
第16話 衛兵殺し
第17話 葬送のフリーレン

前巻で、戦士アイゼンから死んだ者と会うことのできる「魂の眠る地」の伝説を聞いたフリーレンは、フェルンとともに、その地があるといわれている大陸の最北端にあるエンデの町を目指して旅を始めています。

アイゼンは、自分はもう年齢をとった、と旅には同行しないのですが、代わりに自らの弟子だったシュタルクという戦士をリーゲル峡谷沿いにある村でホロって連れて行ってくれ、と頼まれます。

この町の近くには、かつては村を襲った「紅鏡龍」が生息していて、その龍が村を襲撃するのを、シュタルクが防ぎ、それ以来、村はずれの崖の下で村を守っている、という設定のようです。彼はフリーレンたちの一行に加わることを承知するのですが、その条件は「紅鏡龍」をフリーレンたちが斃すこと。村を救った英雄であるはずの彼がなぜ自ら流を退治しないのか・・といったところに彼の身の上の秘密が隠されているのですが詳しくは原書で。

中盤では、北側の関所を抜けて旅を続けるのですが、ここでは、フリーレンたちの過去の旅の残滓が見られます。

後半では、いよいよ「魔族」がその姿を現してきます。大陸の北方諸国では「魔族」との戦いが勃発しているようですが、グラナト伯爵領の都で、フリーレンは伯爵のもとへ和睦の使者としてやってきている魔族「リュグナー」殺害の容疑で拘束されてしまいます。リュグナーはかつてフリーレンたちに敗れ、消息不明だったのが28年前に力を取り戻した大魔族七崩賢の一人「断頭台のアウラ」の部下の一人です。リュグナーとその一味は、和睦とみせかけて伯爵領内に入り込み、この地を侵略することを目論んでいて、まず手始めに、囚われているフリーレンを血祭にあげようとするのですが・・という展開です。

ここのところでは、それが放つ言葉をまともに信じてはいけない「魔族」というものの本質ががでてきます。

人を喰らう捕食者が人の言葉を話す理由などただ一つ
分かり合うための言葉ではなく、欺くための言葉

といったあたりには、種族というより、生物種の違いを感じてしまいますね。

第3巻 フリーレンは「断頭台のアウラ」を騙して打ち倒す

第3巻の構成は

第18話 不死の軍勢
第19話 急襲
第20話 師匠の技
第21話 卑怯者
第22話 服従の天秤
第23話 勝利と弔い
第24話 エルフの願望
第25話 剣の里
第26話 戦士への贈り物
第27話 平凡な村の僧侶

となっていて、リュグナーたちに襲われたグラナト伯爵はフェルンとシュタルクによって助けられたのですが、ちょうど同時期、フリーレンは魔族の七崩賢の一人「断頭台のアウラ」と対峙しています。

アウラは「服従の天秤」というものを術具にして、天秤に自身と相手の魂を乗せて、魔力の大きさが大きいものが、相手を服従させ操り人形化させることができるという魔法で、多くの人間たちを配下にしています。この魔物とフリーレンが戦うわけですが、アウラはフリーレンの魔力を精々100年程度鍛錬を積んだ魔術と見切るのですが・・という筋立てです。

一方、街のほうでは、魔族リュグナーvsフェルン、魔族リーニエvsシュタルクの戦闘が始まっています。二人の魔族は、どちらもフェルンやシュタルクより魔力や戦闘力が上だと舐めてかかってくるのですが・・という展開です。

魔族たちは、相手の力を過小評価したことで、いずれも墓穴を掘るのですが、フリーレンとフェルンは、彼らが過小評価するよう仕掛けを講じています。それは・・という謎解きでもありますね。

そして、後半部分では、さらに北方を目指すのですが、北方に進むには「一級魔法使い」の動向が帝国によって求められている、ということで、しばらく周辺の地域を旅をしています。ここでは、勇者の剣が抜けなかった勇者の話などの周辺エピソードが描かれています。

第4巻 フリーレンたちは僧侶ザインをパーティーメンバーに加えるが・・

第4巻の構成は

第28話 僧侶と後悔
第29話 理想のオトナ
第30話 鏡蓮華
第31話 混沌花
第32話 オルデン家
第33話 フォル爺
第34話 英雄の像
第35話 旅立ちのきっかけ
第36話 心の支え
第37話 一級試験

となっていて、冒頭では、前巻の最終話で知り合った村の僧侶・ザインを、彼の兄に頼まれてパーティーの一員にすべく説得中です。

彼は幼い頃、一緒に冒険の旅に出ようと誓った親友がいたのですが、その親友が旅に出かける時に躊躇して同行せず、そのまま親友は還ってこなかった、というのがトラウマになっているようですね。これをどう、フリーレンが翻意させたかってところは原書のほうで。

中盤では、北側諸国の要塞都市・フォーリヒにやってきた一行は、その地を支配しているオルデン家の跡取り息子の戦死を隠すための「身代わり役」にシュタルクが駆り出されています。実は次男はいるのですが、父親に才能を評価されていないという設定で、故郷の村で出来のいい兄と比較され続け、結局は村を飛び出したシュタルクにとっては気の進まない「代役」のようですね。

さらに、この巻から旅に同行した僧侶のザインは、行方不明の親友を探すため、フリーレンたととはここで別行動をとることとなります。わずか1巻分の登場ですので、ひょっとすると次巻以降で再度、フリーレンたちと関わってくる雰囲気が漂うのですが、ここは妄想かもしれません。

巻の最後半では、北側諸国最大の魔法都市「オイサースト」に到着し、ここで行われる一級魔法使いの資格試験に挑戦することとなります。この試験を受けるためには五級以上の魔法使い資格がいるようなのですが、世間から離れて久しいフリーレンは当然もっていません。彼女はいつの時代の何の資格かよくわからない「聖杖の証」のペンダントを取り出すのですが、意外にも、通り合わせた魔法使いギルドの高官っぽい人がその価値を認め・・といった展開です。フリーレンはこの魔法都市関連で何か秘密を隠していそうな雰囲気が漂っていますが、詳細は次巻以降、というところですね。

レビュアーの一言

このタームでは、旅の仲間となる初期メンバーがだいたい確定してくることや、フリーレンの魔力を隠す術が魔族たちに有効な対抗手段になること、あるいは仲間になったシュタルクの幼少期のトラウマといったところが明らかになってきます。

魔王滅亡後の世界をゆるいタッチで描いてきた本作なのですが、魔族リュグナーや「断頭台のアウラ」との対決シーンは、冒険ファンタジーらしい「活劇」が展開されていますので、真生ファンタジーファンも楽しめるかと思います。

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