フリーレンは二人の大魔族の人間への侮りの油断をつく=「葬送のフリーレン」11【ネタバレあり】

「魔王」を打ち倒し、世界に平和と安寧をもたらしてから50年経過後。パーティーの魔法使い役であった、エルフのフリーレンを主人公に、魔王が滅びた後の「その後」の世界が描かれる異色の冒険ファンタジー『山田鐘人・アベツカサ「葬送のフリーレン」』の第11弾

前巻で、結界が解かれたヴァイゼの町を舞台にフェルン+シュタルクvsソリテール、デンケンvsマハトのバトルが始まったのですが、今回はその決着がつくとともに、フリーレンが過去へとタイムリップする「女神の石碑」篇のスタートです。

あらすじと注目ポイント

第11巻の構成は

第98話 報い
第99話 攻防
第100話 魔法使いの基礎
第101話 打開策
第102話 相打ち
第103話 報いの時
第104話 墓参り
第105話 ゴーレム
第106話 天脈竜
第107話 女神の石碑

となっていて、冒頭ではフリーレンが、前巻の最後でマハトに倒され黄金化されてしまったデンケンを復活させています。彼女はマハトの記憶を読み込み解析することで、黄金化する魔法の解除方法と防御方法を見つけ出したわけですね。実は解析には、記憶の解析だけではなく、600年前に戦ったときに黄金化された右腕を元通りにした経験も活かされているようですね。

ここで、フリーレンはマハトが黄金化したヴァイゼも元通りにできると豪語しているのですが、これはソリテールやマハトとの第二戦で効果を見せることになります。

戦いのほうは、デンケンvsマハト、フリーレンvsソリテールへと移っていきます。その戦いの前にフリーレンは、かつて彼女たちが斃した魔王も人間との共生を考え、人間を理解しようとしていたという驚くべきことを告げます。魔族と人間との融和を図る良案のように思えるのですが、そこに至る過程で人類が絶滅に瀕してしまう、という恐怖の結末をフリーレンは予言します。

魔族と人間との完全な「共存」というのはどちらかが「記憶の中」に移行してしまわない限り無理だ、ということを暗示しているのでしょうか・・。

そして戦いのほうはまずフリーレンとソリテールのバトルが始まります。両方とも歳を経たエルフと魔族なので、攻撃魔法の打ち合いかと思いきや、高密度の魔力のぶつけ合いです。二人ほどの魔力の持ち主となると、ごちょごちょした技よりも、素の力をぶつけるほうが攻撃力も防御力も強くなるようです。

さらにソリテールはフリーレンの魔力制限の技も見抜いた上で、魔力をぶつけてきます。このままでは押し負けてしまうと考えたフリーレンは、ある撹乱方法を思いつくのですが、それはデンケンの戦いをアシストするものでもあって・・という筋立てです。

一方、デンケンとマハトの戦いでも、単純な「ゾルとラーク」が効果を見せています。黄金郷の中に長い期間、封印されていたマハトは、半世紀にわたって人類が「ゾルトラーク」を研究し、改良してきた成果をしらないからですね。

しかし、高い魔力を持つソリテールとマハトの前では、「ゾルトラーク」の攻撃力も限界があって、じりじりと二人の魔族たちの攻撃がフリーレントデンケンを削っていくのですが、ここでフリーレンの「黄金都市ヴァイゼ」の呪いの解除という奇策が炸裂し・・という展開です。

少しネタバレをしておくと、戦闘という面で人類を少し侮っていた二人の魔族の油断が敗因となったようですね。戦いの詳細は原書のほうでどうぞ。

巻の後半の「ゴーレム」と「天脈竜」は、マハト・ソリテールとの死闘のあと北部高原を抜けかけたところでのエピソードですね。ここでは、千年前に大陸全土を統治していた「統一帝国」時代の異物にめぐり逢います。話の雰囲気は「天空のラピュタ」に似ていますね。

そして「天脈竜」はかつてヒンメルと実在するかどうか議論したはるか高い天空を飛行する巨大な竜に遭遇する話です。

最終話は、次巻以降に続く「女神の石碑」篇の導入部です。大昔、天地創造の女神が自らの魔法を込めた十の石碑の一つが道中にあり、ヒンメルたちとの旅の際は魔王討伐を控えていたため、詳しく調べることのできなかった「女神の石碑」の解読に挑戦します。

すでに半欠けとなっている石碑の解析を始めるフリーレンだったのですが、ふと気がつくと、後ろにはヒンメルやハイター、アイゼンといったかつてのパーティーの仲間たちがいて・・と新章へ突入していきます。

レビュアーの一言

この「黄金郷のマハト」の章では、人類とは単純な敵対関係にあるだけと思われていた魔族の中にも、魔王やマハトのように人類との「共存」を望む魔族もいたということがわたるのですが、その共存に向けた取り組みが人類の殺戮や都市破壊を産んでしまっていた、というのはやりきれない事実ですね。

このことは、互いの理解の推進が謳われながら、一向に解決しない人間社会の民族対立にも一部共通するところがあるのかもしれません。

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