ミステリー

柴田よしき

タイムトラベラーネタを使った時代ミステリー — 柴田よしき「小袖日記」(文春文庫)

<br /><br /> 以前のエントリーで森谷明子さんの「源氏物語」のシリーズを取り上げたのだが、それとはまた違った風味の「源氏もの」のミステリーがこの「小袖日記」。 設定は、というと、森谷さんの「白の祝宴」「望月の後」といっ...
三木笙子

明治の幻想譚、各種 ー 三木笙子「世界記憶コンクール」(東京創元社)

<br /><br /> 「人魚は空に還える」で登場した日露戦争当時の名探偵、雑誌社勤めの里見高広と天才挿絵画家 有村 礼シリーズの第二弾である。 収録は 第一話 世界記憶コンクール 第二話 氷のような女 第三話 黄金の日々 第...
ミステリー

女性二人の企業再生ストーリー ー 碧野 圭「書店ガール」(PHP文芸文庫)

稲盛いずみ、渡辺麻友の出演で最初評判をとったものの、失墜してしまったTVドラマのせいか、再度のドラマ化や映画化の話が見えてこないのは、このお話にとっては不幸な事かどうかはわからないのだが、ドラマ化の話を抜いても、かなり面白く読める小説である...
森谷明子

泉にまつわるストレンジ・ストーリー ー 森谷明子「七姫幻想」(双葉文庫)

<br /><br /> 「七姫」の謂れは、織女の7つの異称、秋去姫、朝顔姫、薫姫、糸織姫、蜘蛛姫、梶葉姫、百子姫であるらしい。 そのあたりを受けて、収録は ささがにの泉 秋去衣 薫物合 朝顔斎宮 梶葉襲 百子淵 糸織草子 とな...
森谷明子

「都」という魔性の存在 ー 森谷明子「葛野盛衰記」(講談社)

<br /><br /> この物語をミステリーととらえるかどうか微妙なところであるが、古代に京都府にあった郡で、区域の一部が平安京になっているところ葛野あるいは葛野郡を舞台にした、いかにして「京都」あるいは「平安京」は「都」とな...
ミステリー

権勢欲と子を想う気持ちは仲の良い主従の間も割くのだね ー 森谷明子「望月のあと ー 覚書源氏物語『若菜』」(東京創元社)

<br /> 源氏物語の作者 紫式部とその周辺の人たちを主人公とした時代ミステリーの第三弾。 一作目、二作目では源氏物語の進展も栄耀栄華に向かっていたのだが、そろそろ源氏も老境にさしかかる頃。それと並行するように。現実の世界でも、藤原道長に...
森谷明子

平安時代の女房生活の追体験という不思議な読み心地 ー 森谷明子「白の祝宴ー逸文 紫式部日記」

<br /><br /> 「千年の黙 異本源氏物語」で大胆にも、紫式部の源氏物語の創作秘話として「かがやくひのみや」の帖がなぜ失われてしまったか?をとりあげ、「古典」も時代ミステリーになるんだと驚かせてくれた、森谷明子氏の「源氏...
ミステリー

久々の異譚・奇譚 ー 太田忠司「奇談蒐集家」(創元推理文庫)

そのミステリーの腕力は、登場人物とシチュエーションの巧妙さにかかっているといってよい。このミステリーもそのあたりは巧妙に仕掛けてきていて、都会の場末の「starwberry hill」が舞台。ここで新聞記事で募集した「世にも稀な奇談」が買わ...
ミステリー

明治末期の風情やいかに ー 三木笙子「人魚は空に還る」(創元推理文庫)

<br /><br /> 時代ミステリーというやつは、その時代についての知識や興味がないと入り込むのに手こずるもので、このミステリーの時代も日露戦争の後、明治40年代を舞台にしていて、恥ずかしながら、当方にとってかなり霧のかかっ...
ミステリー

人形作家の頼りない父と、しっかりした娘のほのぼのミステリー ー 藤野恵実「ハルさん」(創元推理文庫)

仕事が立て込んで気持ちがささくれている時や、あれこれうまくいかない時に、読書によって気を紛らすというのは、精神の安定を図る上で有効な手段であるのだが、そんな時にチョイスする本は、どちらかというと軽めのものがよくて、そのあたり、ミステリは種種...