いわゆる「ギョーカイ」のタコツボ化を壊せるか — 山口啓一「10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す」(ローソンHMWエンタテイメント)

筆者は音楽プロデュースを中心に、様々な分野のエンターテインメント分野のプロデュースにも関わっているのだが、音楽を含め、いわゆる「ギョーカイ」化して、蛸壺的な様相を示している分野について、乱暴なところもあるが、その蛸壺を壊す処方箋を提案してみるのが本書。
 
構成は
 
PROLOGUE 時代を換える3つのポイントを知ろう
CHAPTER1 音楽は「ストリーミング」で聴く時代
CHAPTER2 変わるテレビ、変わらないテレビ
CHAPTER3 「コネクテッドカー」から「ロボットカー」へ
CHAPTER4 電子書籍は出版業界を再定義するか
CHAPTER5 ニュースと新聞の行方
CHAPTER6 ウェアラブルデバイスとIoTの衝撃
CHAPTER7 非オタクのためのUGM入門
SUPPLEMENT コンテンツの価値を多様にとらえよう
EPILOGUE 時代を予見する力を持とう
 
となっていて、とりあげられる「ギョーカイ」は、音楽、テレビ、車、出版、報道、と「花形」としてとりあげられることの多かった世界である。
 
本書では、今風の手法として
 
「グロースハック」とは、仮設を立て、結果を計測、検証し、その結果をプロダクトやサービスにフィードバックするという作業を、短期間で頻繁に繰り返すという方法のことです。
ユーザーがすべてを決める時代ですし、そのユーザーの意思が、可視化されている時代なので、事業者側が一方的に長期にわたる精密なプランを立てても、ほとんどその通りにはなりません。サービスの基本形ができたら、まずはユーザーに提示してみて、反応をみながらサービスの変更、調整を繰り返していく、このグロースハッカー的なやり方が、もっとも効果的といわれています。(P26)
 
が採用されているようで、それは、「車ギョーカイ」では
 
コネクテッドカー(自動車がインターネットに常時接続する)に進化することによって、従来のカーナビ+カーステレオという社内サービスがより高度化します。(P110)
 
コネクテッド・カーは、すぐその先のロボットカーによって再定義されるのです(P117)
 
ロボットカーが一般化すると、自動車の中は、エンターテインメント・シアターになるでしょう。(P120)
 
であったり、「出版ギョーカイ」では
 
これまでは”仕方なく”書物であった本は、デジタル化するときに、紙の書物を単純に電子化した「電子書籍」という携帯である必要はありません(P140)
 
電子書籍の議論をする際に、忘れてはいけないのは、出版業は、その国の母国語を基本にしたビジネスだということです(P145)
 
といった感じで、少し変わった切り口が提案されてくるのが斬新である。
 
で、当方的にこうした提案を面白がりつつも、「おっ」と唸らされたのは
 
音楽プロデューサーも、映画プロデューサーも、エンターテインメント作品をプロデュースするときは、みんなヒットして高い収益を上げること、誰かの人生に大きな影響を及ぼすような作品にすること、歴史に残る名作になることなど、レイヤーもベクトルも違った目標をあわせ持つものです。この矛盾しがちな異なる欲望を同居させられる器の大きさが、プロデューサーには必要だと僕は思っています。
文化やアートは、市場経済より何十倍の長い歴史を持っています。コンテンツを四半期の収益性だけで判断する人は、コンテンツの神様に愛されることはないよ、と強くいっておきたいです(P231)
 
というところで、この辺で、筆者のコンテンツを創っていくクリエイターの「心意気」を感じてしまいましたな。
才気溢れる音楽プロデューサーの斬新な提案を愉しみつつ、「コンテンツ」を創造する人の凛とした精神性を感じさせる本でしたな。
 

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