雪だるまの中の「人魚の腕」の謎を解け ー 有馬美季子「はないちもんめ 冬の人魚」

祖母の「お紋」、母親の「お市」、娘の「お花」の三世代で経営する八丁堀近くの北紺屋町にある、小さな料理屋「はないちもんめ」を舞台に繰り広げられる時代ものミステリーの第3弾。

第一作の「はないちもんめ」が文政五年(1822年)の5月前に始まった物語も、二作目の「はないちもんめ 秋祭り」を経て、文政6年の冬となったのが本作『有馬美季子「はないちもんめ 冬の人魚」』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 鮟鱇鍋で熱々に
第二話 雪の日のおぼろ豆腐
第三話 不老長寿の料理
第四話 ほろほろ甘露煮
第五話 元気に軍鶏鍋

となっていて、まずはこの巻の話を全体をリードする、雨矢冬伝という江戸時代の怪奇モノ作家の「雪達磨の中の人魚」という融けかけた雪だるまの中に入っていた「人魚の片腕」に魅せられた男の話の独演会兼食事会からスタート。

もっとも、この話が全体をリードするというより、少々迷わせる役割を果たしたりもするので、ここは筆者の謀略にのらないように要注意ですね。

事件のほうは、両国橋で、心中のような男女の水死体が見つかるのが第一の事件。この死体は両方とも「右腕」がない状態でみつかるのだが、ここが謎解きの鍵となってくるところですね。
この二人の身元が「陰間」と「元花魁」ということがわかるのだが、この「陰間」を贔屓しているのだが、本宗寺の坊主、「元花魁」を身請けしたのが大店の酒問屋なのだが、雨矢冬伝の父親も贔屓にしていた、ということもわかり、といった感じで、あれこれが噛み合わさってくる、という展開。

さらに、この二人が、蓬莱乙女という美女を教祖とする、信仰すれば、永遠の美しさと若さのご利益があるという、通称「人魚教」に関わっていることが判明する。そして、この二人が通っていた飯屋を経営する女性の証言に基づいた似顔絵が発端となって、雨矢冬伝や彼の実家の家族が、教団の黒幕ではないか、そして、二人の殺人は彼らの仕業では、と八丁堀たちが疑いを持ち・・・、といった感じで展開していく。

まあ、これが原因で、人魚教や雨矢冬伝とその実家が坂を転がり落ち始めるなのだが、事件の真相は、もう一回どんでん返しがあるので、そこらは原書で確認してくださいね。

【レビュアーから一言】

今回は「冬」が」舞台ということで、登場する料理は「鍋」や熱い蕎麦とかの冬料理が多いですね。
なかでも、一番食欲をそそりそうなのが、「蕎麦の上につややかな桃色の軍鶏肉が載り、刻んだ青葱が散っている。汁に溶けた脂がまたそそり」「歯応えがあり、噛めば噛むほど味が出る。軍鶏がブラが滲んだ汁は、鴨肉のそれより一段とコクがあり、躰の芯からぽかぽかと温まるようだ」という軍鶏蕎麦で、こういうのを冬の寒い日に丼を抱えてハフハフして食べたら、さぞや旨いでしょうね。

はないちもんめ 冬の人魚 (祥伝社文庫)
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