「警察官」として「生き残る」のは誰？ー長岡弘樹「教場」 | 辺境駐在員の備忘録ーこの本を読め！（おまけつき）

警察学校というところは、警察組織の中でも、一般人にはほとんど接するところがない組織なのだが、警察官にとっては採用後の新任のときや、昇任のときなど節目節目で「教育」を受けるところであるので、そこの校長は「警視」以上が務める、警察組織の中でも「格上」の扱いがされているように思う。

そんな警察学校を舞台に、新規採用された警察官の卵たちが、初任者研修の過程での「生き残り」の様子を描いたのが『長岡弘樹「教場」（小学館文庫）』である。

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【収録と注目ポイント】
【レビュアーから一言】

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話　職質
第二話　牢問
第三話　蟻穴
第四話　調達
第五話　異物
第六話　背水
エピローグ

となっていて、単話構成ではあるのだが、警察官養成の第98期短期過程の新米たちの誰が脱落し、誰が警察官として巣立っていったかの6ヶ月の物語となっていて、その彼らを教える教官に、肺炎で緊急入院した「植松」に代わって、初老の「風間」が教官として赴任してくるところから本格的に開幕する。

まず第一話は、小学校の教員から転身した「宮坂」の物語。彼は年齢がいってから入校したせいで同級生たちからは異分子扱いされているのと時折、授業で下手をうつのでもうすぐ対校するのでは、と噂されている。しかし、彼が下手をうっていたのは、彼が警察官を志望するきっかけとなった警察官の息子が、同期で入校していて彼を援けるためであったとわかる。しかし、その相手・平田は、その行為が彼を哀れんだものと逆恨みして、トイレの洗剤と入浴剤を混ぜ合わせて硫化水素を合成して、宮坂を巻き込んで自殺を図ろうとする。その前に、宮坂からトイレの洗剤の一本が紛失していることを聞いた風間教官が命じたのは、全員にグラウンドを25周走らせる罰則だったが、その目的は・・・、といった展開で、かなり衝撃的な開幕でありますね。

第二話は、98期の研修生の中でも数少ない女性警察官の卵が主人公。この話のメインキャストの一人、楠本しのぶは、26歳でインテリアコーディネーターからの転職組。彼女は年上なことと気の強さで、同期の中でも一目置かれている存在なのだが、彼女が警察官になった目的は、彼女の婚約者の仇討ちである。彼女の婚約者は、ひき逃げで死亡し、その真犯人を捕まえるのが目的である。そして、彼女が、警察学校の同期の中で仲良くしている「岸川沙織」にある時脅迫状が届く。それには「お前が犯した罪を、知っている」と書かれているのだが、その真相は・・・、といった展開。彼女の復讐劇が意外な方向へ発展します。

第三話は、警察官の中でも花形の交通機動隊に白バイ警官志望の「鳥羽」と彼が仲良くしている「稲辺」がメインキャスト。「鳥羽」は白バイ警官になるために体調管理には万全を期している上に、白バイ警官として抜擢されるよう学業のほうのそれ向けに努力している、という設定。そんな彼がある時、学校からの「出抜け（無断外出）」の疑いのかかった「稲辺」を罪におとす証言をするのだが、その理由は・・、という展開。かれの偽証は「鳥羽」にとってかなり苦い結果を招くことになりますね。

このほか、警察学校内で秘密裏に外部から「物資」が運び込まれているらしいとい噂の真相を描く「調達」やパトカー乗務員を目指す「由良」が、パトカーの中に入り込んだ「スズメバチ」に驚き「風間」をはねてしまう顛末を描いた「異物」と、結末まで展開の読みきれない話が続きます。そして、最終話「背水」は、いよいよ卒業式を間近に控え、その首席を目指す「都筑」に「第一線では使い物にならないから、退校しろ」というのですがその真意は、そしてその言葉を聞いた都筑は・・といったところでクライマックスを迎えるのですが、ここから先は原書のほうで。