ビジネスマンのグルメは、トップエリートで交際費バンバン使える、という境遇でない限り、多くない小遣いの中でやりくりする限られた予算の中で、できるだけ美味しいものを探す、というのがほとんどでしょう。
本書の主人公で。首都圏の中堅企業に勤める「神藤」もそんな典型的なビジネスマンで、双子ができて家計的にも緊縮が求められているのですが、奥さんの愛子さんからたった一つ許された贅沢が、「給料日」に寄り道をして、1万円以内で旨いものを食べてもいいというもの。彼の「普段できない贅沢を1万円以内で」という給料日のグルメルールに沿ったグルメ探訪を描いたのが『楠本哲「給料日のグルメ」(ニチブンコミックス)』です。
【構成と注目ポイント】
構成は
第1話 老舗洋食店のエビフライ
第2話 ふぐの重なり
第3話 コースのもつ焼き
第4話 値札のないおでん
第5話 憧れのTボーンステーキ
第6話 BARの嗜み
第7話 同期との特上鰻重
第8話 野菜づくしデート
第9話 豪華冷やし中華
第10話 大人の蕎麦屋呑み
となっていて、今回は洋食系から粋な伝統系まで幅広いラインナップです。
で、こうしたビジネスマンが主人公のグルメ漫画というと、突然、グルメ評論家のような行動を見せたりして、普通のサラリーマンじゃないだろ、ってな感じで展開してしまうものもあるのだが、本書の主人公は、あくまで私達と等身大に、名店の旨いものに素直に感動しながらグルメしてくれるのでそこのところは安心して読めますね。
それは例えば、第1話の「老舗洋食店のエビフライ」では、 食すのは、老舗のビヤホール「ランチョン」のエビフライ。特大天然エビ使用2600円です。 エビフライを迎えるための体制を整えるための食前酒的に、泡が細かくて苦味が少ない小麦を使った「ヒューガルデン・ホワイト(ホワイトビール)」と牛タン、ポテサラといったのが期待感を誘ったところで やってきた大きなエビフライを迎え撃つと
といった感じで期待を裏切りません。
あるいは第5話の「 憧れのTボーンステーキ」では、 イタリア料理店「マキャベリの食卓」という店の400gのTボーンに挑むのですが、 まず胃袋の準備運動として「マッシュルームのアヒージョ」+「フォカッチャ」へ。そして、お酒のほうは苦味を抑えたキリッとした イタリアのビール「ナストロアズーロ」から赤ワインへといくのですが、メインとなるTボーンステーキは
で、ナイフをいれると
といった具合ですね。主人公のワクワクする気持ちが伝わってくるようです。
さらに最終話の「 大人の蕎麦屋呑み」では、酒の呑み方の中で「粋」な上級ランクに属する「蕎麦屋」での一人呑みに挑戦します。 今回主人公は、板わさ→酢の物→焼き鳥→焼き葱→そば味噌のあと、締めは「天ぷらそば」という呑み方で、 海老天2本とかき揚げが載った「天ぷらそば」
に、 主人公は江戸の伝統を食しているような感慨に襲われて満足しそうになるのですが、近くの年配のお客さんが「天抜き」、天ぷらそばの蕎麦を抜いた蕎麦屋ならではのつまみを注文して、日本酒を傾けているのを見て、まだまだ修行が足りないことを自覚する展開となってますね。
このほか、ビジネスマンが給料日にワクワクしながら、いい店を探していく感じがあふれてくる展開となってます。
出てくる料理も、ちょっと頑張れば手が届くものばかりで、自分ならあの店にいくかな、といった想像をしなが読んでいくのがオススメです。
【レビュアーから一言】
本書を読んでいると 「寄り道Blog」という鷺ノ宮や野方といった西武新宿線沿線や高円寺・中野といった中央線沿線の駅の周辺を中心に仕事からの帰り道に寄った店のグルメと雑感を綴ったブログを思い出しました。検索してみると、2010年で更新が止まっているようですが、まだlivedoorブログで読むことができますね。ブログ創成期のこうした、まったりとした日々の出来事を綴ったブログもまた良いものだな、と思ったところでありますが、この「給料日のグルメ」シリーズも似た雰囲気がありますね。
【スポンサードリンク】
本書ででてくる「ヒューガルテン・ホワイト」といったビールや「カリラ」などのウィスキーを呑んでみたい方はこちらから注文できます。
コメント