シェイクスピア一行の目標は、ロンドン一の売れっ子脚本家 ー 「七人のシェイクスピア(Part2) 1」

七人のシェイクスピア

大英帝国が絶頂期を迎えたエリザベス一世の時、イギリス・ルネサンス演劇の中心人物として、全世界の演劇界に大きな影響を残した「ウイリアム・シェイクスピア」は、彼がロンドンの劇場へデビューするまでの間の経歴は不明なことも多い上に、彼がその作品の中で示した「詩」や「音楽」の才能、あるいは深い「歴史的知識」など、その源泉がどこにあったのか謎の多い人物なのだが、その「秘密」とロンドン劇場界で成り上がっていく姿を描いたのが『ハロルド作石「七人のシェイクスピア」(ヤングマガジンコミックス)』シリーズのPart2です。

Part1はビッグコミックスピリッツに連載されていて、本書のメインキャストでもある、シェイクスピア(ランス・カーター)が中国人少女・リーや、元カトリック神父・ミルと出会い、故郷を捨てて、幼馴染のジョン・クーム(ワース・ヒューズ)とともにロンドンを目指そうとするところで終了していたのだが、Part2はその後のロンドンでの「シェイクスピア」の誕生と成り上がりの物語が語られます。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1話 ロンドン
第2話 クリストファー・マーロウ
第3話 運命の三女神
第4話 ホーリー・ウェルにて
第5話 新たなる住人
第6話 トマス・ソープ
第7話 シャイロック
第8話 羊の腸

となっていて、まず、ロンドンへ出てきたランス・カーターことシェイクスピアが、ロンドンの劇団に、自らの書いた脚本を売り込んでいくところからスタートします。

しかし、ランカシャーでは大当たりをとったといっても、そこは田舎でウケただけの話。本場・ロンドンでは、簡単にいくはずもなく、ストレンジ卿一座のジェームズ・バーベッジには「面白い脚本に出会った時は、紙にさわっただけでビリビリと感じるが、この原稿には何も感じないと」酷評されたり、海軍大臣一座の座長ヘンズロウには一目見るなり破り捨てられ、さらに「タンバレイン大王」の作者で、ロンドン一の売れっ子脚本家「クリストファー・マーロウ」には原稿を踏みつけにされたうえに

と暴言を吐かれる始末です。

そして、ロンドン中の劇団から断られ、失意を抱えて修道院後の「聖なる井戸」で祈ったシェイクスピアが出会ったのは、泉に投げ入れられた「賽銭」を拾い集めている「ケイン」という少年です。

父親のDVから母親の命を守るため、ケインは母・アンとともに、シェイクスピアたちの暮らす家に助けを求めてくるのですが、彼らを同居させることがシェイクスピアの劇作家としての運命に大きく影響することとなり・・・という展開です。

ケインから、売り込んでいた「オデット」の原稿を

とこきおこされて、シェイクスピアは、のちに「ヴェニスの商人」となる脚本の執筆にとりかかります。台詞はリーの才能でなんとかなったのですが、

まだ「ひと味」足りません。そこに、イギリスの下級地主階級の郷紳(ジェントリー階級)の4女のであるアンの

という意外な才能が発揮されることになり・・・といった筋立てですね。

シェイクスピアの演劇は、歴史や伝説などの深い知識、ソネットに代表される詩の才能、意表をつくストーリー展開、劇効果をあげる音楽といった様々なものの融合体であるのですが、彼がどこでそういう幅広い教養と技術を身に付けることができたのか、その秘密がだんだんとそろってきているようです。

【レビュアーからひと言】

1585年から1592年までの7年間の間、シェイクスピアがどこで何をしていたのか記録がほとんどなく、「失われた年月」と呼ばれているようですが、Part2は1588年から始まっていて、「失われた年月」の後半を埋める物語となっています。Part1では、劇作家としてまだ不完全な印象であった「シェイクスピア」完全体となっていく秘密はどこにあったのか。これから明らかになっていくのだと思います。

7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(1) (ヤングマガジンコミックス)
舞台は16世紀、空前の演劇熱に沸くロンドン。片田舎に育った無学の青年・ランス(...

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