病院薬剤師の仕事は院内だけじゃないー荒井ママレ「アンサング・シンデレラ2」

コミック

最近流行の医療ドラマや医療コミックでも、脇役としての登場もなかなか少ない「薬剤師」にスポットをあて、市中の総合病院の調剤部門に勤務する、お団子にまとめた髪がトレードマークの若手新米薬剤師「葵」を主人公にした病院医療コミックの「アンサング・シンデレラ」シリーズの第2弾。

主人公の立ち位置であるとか、主要キャストの紹介的なストーリーが多かった初巻を経て、今巻からは、いよいよ「葵」が薬剤師としてだけでなく、医療チームの一員として病院の内外に活躍していきます。

【収録と注目ポイント】

収録は

第6話 薬も積もれば
第7話 病院の外
第8話 ひとりよがり
第9話 清く正しく
第10話 夢と懐

となっていて、まず第6話は院内薬局の先輩・刈谷さんと薬の棚卸し。彼女は調剤薬局の店長から病院薬剤師に転職した変わり種で、当方は門外漢ゆえ詳細はわからないのですが、わざわざ給料も安く夜勤もある病院への転職はかなり珍しいものでしょうね。

仕事ぶりは厳格で、コスト管理にもかなり煩そうです。投薬の処方についても医師に注文をつけるほどなのですが、病院経営の面まで踏み込んでの進言は前職のときになにかあったのかもしれません。

第7話と第8話では、服薬をいい加減にしている患者への指導の延長で、葵が調剤薬局の若手薬剤師と対立します。投薬のやり方で面と向かって批判する「葵」に対して、調剤薬局の「小野塚」は

と言い放つのですが、彼は彼なりに人出が少ない中ワンオペが必須の勤務状況や、ドラッグを経営する会社の経営方針に「鬱憤」を貯めていたようです。この話以後、葵が病院外へ目を向け、視野を広げていく上での良いナビゲーターになりますね。

第9話は、「葵」の勤める病院内の職員のみだしなみとか振る舞いとかをチェックする「接遇委員会」との揉め事の後の停戦状態までが描かれてます。病院といった職種ごとのヒエラルキーがあって、しかも人の命を扱うところでは、こうした内部統制組織が力を持つのが通例なので、筋書的には、組織からはみ出しがちの主人公がよく遭遇する揉め事のネタです。さて、葵はどう「こなす」のでしょうか。

第10話は、直接的に医療行為に携わることの少ない「薬剤師」という仕事なのですが、医療に従事する一員として、「葵」が、退院後はおそらく治療を中断してしまうであろう患者へ関わっていく話です。ここまでの話では、医療スタッフとの対立もあった「葵」ですが、医療にかかわる「チーム」の一員としての自覚が芽生えてきたようですね。

【レビュアーからひと言】

コンビニでの処方など、規制緩和の目線で語られることの多い「調剤薬局」の世界なのですが、第2巻では、「医療・治療」の一環としての「調剤」というものを改めて意識しましたし、第3巻では、インターネットの普及で一般人の「薬物情報」が爆発的に増大した中での専門家の苦労もわかりますね。
「便利さ」の向上と「治療」の安全性の担保、この二つをどう折り合わせるか、「オンライン診療」の拡大も動いていく中、専門家任せでなく、利用する我々も考えていくべき時なのでしょう。

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