【一挙紹介】土山しげる「極道めし 3〜10」ームショの中の美味い「メシ話」で喉を鳴らせ

外を出歩く自由もなく、何を食べたいかの希望が叶うこともない典型的なところ「刑務所」を舞台に、収監者が互いに、いままでシャバで食べた「旨いもの」の話の出来を、1年間の食事のうちで一番楽しみにしている「おせち」料理を賭けて競いあうのが「極道めし」シリーズです。

先だってレビューした1巻から2巻までで、大坂の刑務所で始まった賭けの様子が口コミで広がっていて、同じ刑務所の違う房に広がり、再犯者を通じて、他の刑務所へも広がっていきます。

構成と注目ポイント

第3巻の構成は

 第18話 オムライスに誓う想い
 第19話 焼き鳥大家族
 第20話 俺だけのすき焼き
 第21話 極道のクリスマス
 第22話 シュークリームの恩返し
 第23話 故郷の味「ザンギ」
 第24話 焼きそば大合戦
 第25話 最高のおせち

となっていて、浪速南刑務所の第307房へと場所を移した「美味いもの話」が決着を見ます。この房で語られるのは、焼き鳥、すき焼き焼きそば、といった茶色い系が多いのですが、元相撲取りがスナックのママさんの食べさせてもらっていた、番付表の上にのったオムライスとか

交番の定年間近のお巡りさんのおかげで更生しようとしていた男を再びチンピラに戻してしまった「シュークリーム」とか人情の厚さと薄さの療法を感じさせる話が印象的ですね

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第4巻の構成は

 第26話 追悼の駄菓子
 第27話 泪味のホットケーキ
 第28話 北の味に焦がれて
 第29話 北国の恋の味
 第30話 最後のおにぎり
 第31話 覚悟の贅沢
 第32話 逃避めし
 第33話 帰るべき味

となっていて、今度は同じ刑務所の北棟第317房の「おせち勝負」へと話が移ります。最初の「追悼の駄菓子」でカステラの下についている紙のついているところとか底の砂糖蜜の固まったジャリジャリした甘さを訴えておいての、百貨店で母親に置き去りにされた男の子が食べた「ホットケーキ」のしょっぱさは泣かせますね。

もうひとつは、北海道で風俗の店長をやっていた男が、父親の借金がかさんたために風俗からソープに店換えする娘からもらった不格好なおにぎりの中からでてきた「別れの手紙」とか、

鉄砲玉にされて故郷へ逃亡してきて母親にだしてもらった、白飯と味噌汁、野沢菜、高野豆腐としいたけの煮物の「温かさ」とか、この巻はホロッとさせる話が多いですね

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第5巻の構成は

 第34話 三人の母
 第35話 母という名の調味料
 第36話 瞼の母
 第37話 音と香りとサザエと極道
 第38話 モチモチ争奪戦
 第39話 生ツバ牛肉大作戦
 第40話 最後の一鳴り
 第41話 極楽清涼めし

となっていて、第34話や第35話の、元高校球児と野球部監督の奥さんに母親代わりに育ててもらった人情話もあるのですが、今回はシチュエーションで食わせる「美味いもの」という話が多いですね。
なかでも、開店同時の銭湯の「熱ーい」一番風呂にしっかりとつかった後、湯上がりに脱衣所でサービスで出されている「冷えたミカン」が絶品ですね。

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第6巻の構成は

 第42話 たまらない肉
 第43話 おせち以上の贅沢
 第44話 勝負のハンバーグ
 第45話 成人祝いめし
 第46話 託されたラーメン
 第47話 食べすぎた駅弁
 第48話 雪中の逃亡者
 第49話 熱々の一杯

となっていて、今までの巻はすべてが男子刑務所での「美味いもの」話だったのですが、今回は女子刑務所に場所を移します。今までは「おせち」料理の一品をかけての勝負だったのですが、今回は「クリスマスのお菓子」勝負となります。
女性受刑者の話なので、いままでの男子受刑者の話とは違ってきったはったは少ないのですが、男がらみの話が多くなってはいますが、中でも、第44話の「勝負のハンバーグ」の高校の時に好きになった先輩を巡っての「昼の弁当」争いは、手作り料理がコンビニ弁当に負けてしまう話で、現代を象徴しているようですね。
今回、ほろっとさせるのは、第45話の「成人祝いめし」で、バイトで生活費を稼ぐのに忙しくて成人式に出られなかった主人公が、バイト先の居酒屋で成人祝いに、ケーキのように飾った焼き鳥盛り合わせをプレゼントされるところですね。

さらに、その焼鳥を持ち帰りして、翌日にもう一回、焼鳥のタレを追加して温め直して

こんな風につくった焼き鳥丼は、美味そうですね。

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第7巻の構成は

 第50話 お水少女と串カツ
 第51話 塀を出たら・・
 第52話 塀の中んも三ツ星グルメ
 第53話 安芸の特食
 第54話 讃岐うどんへの茨道
 第55話 大食い自慢のワッパ稼業
 第56話 加賀のお節と寒空は
 第57話 カリッカリの耳

となっていて、前半に2話は、前巻の女子刑務所の続きですね。
今巻の特徴は第3話目から、このムショ内で非公式に行われる「美味いもの話」のことをテレビ局がききつけ、経験者を集めてのインタビュー番組がつくられるという筋立てです。全国各地のムショの受刑者の思い出に残る「メシ」ということで、ご当地色が満載で、広島でお好み焼き屋をしていた男が出会う「広島風お好み焼き」の調理パンであるとか

このシリーズで繰り広げられてきた「おせち勝負」の中でもひときわ豪華な「加賀のお節料理」であるとか

大食いでテレビタレントのようになったのが原因で身を持ち崩したトラック・ドライバーがいつも食していた、ドライブインの「特盛カツ丼」とか食欲をそそります。

そしてこれらに輪をかけるのが「お節バトル」で10勝無敗の伝説の「話王」が語る一番旨いパンの話。それはパンの耳をカリッカリッにキツネ色になるまで揚げて、新聞紙で油をザッと切り、砂糖をバーっとふりかけたもので

油のまわった安っぽい感じなのですが、思わず手を伸ばしていしまうそうになります。

第8巻の構成は

 第58話 うどん返し
 第59話 もう一人の話王
 第60話 飯小僧の本領
 第61話 梅松師匠の思惑
 第62話 十人の話王
 第63話 清々しいラーメン
 第64話 丼の極み
 第65話 酒と泪とドヤの夜

となっていて前半部分は、前巻に続いて、テレビ局のインタビュー番組で出てきた「話王」たちが語る、風邪をひいて熱を出した時に食べる「鍋焼きうどん」の味であるとか、自分の「飯の話」を聞いて、素うどんや白飯、塩にぎりを食べているのに

まるで鰻や天ぷらが乗っているかのように想像して喜んでくれる幼少期の原体験をきっかけに、会社を起業して成功しているのに、そうしたうまそうにご飯を食べる人の顔がみたくて、犯罪をかさねて人生を棒に振った男の話とかが展開されます。

そして、後半部分では竹林亭梅松という関西の落語家が、「その男の話を聴くと、話した料理が目の前に浮かんで、実際に食べたくなるという受刑者」の話をどこからか聞きつけて、全国のムショ10人の「話王」、「麺王」「丼王」「粉もん王」「寿司王」「カツ王」「定食王」「甘味王」「ムショ飯王」などの話を集めて回るストーリーになります。
第8巻では、麺好きが講じて即席麺会社の商品開発をしていた男が、その純粋さで行き着いた「麺」であるとか、丼に魅せられた男が一番うまいと思う丼もの、一番泣かせるのは、地方都市の商店街で営業していた家業のスーパーを潰して「ドヤ街」へ流れ着き、アル中になった男が、場末のスナックのママさんに食べさせてもらった、熱々のご飯ととろろ昆布の吸い物、目玉焼きとソーセージを食べて感動し・・という展開です。

ところが、8巻まではメデタシメデタシという筋かな、と思わせておいて、続く9巻でひっくり返すあたりが、このシリーズの皮肉なところでありますね。

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第9巻と第10巻の構成は

第9巻は、

 第66話 芝浜
 第67話 大喜利開始ッ!
 第68話 技ありハムエッグ
 第69話 果糖は強し
 第70話 トロトロの・・・
 第71話 湯気のカーテン
 第72話 破壊歴な味

第10巻は

 第73話 最強国民食コンビ
 第74話 賞味期限切れの親父
 第75話 幻の百五十円ラーメン
 第76話 真打競演
 第77話 イヴのご馳走
 最終話 最後めし

となっていて、前巻の「話王」の話を引き継いで、話王の話を集めていた竹林亭梅松師匠とムショ飯のインタビュー番組を制作したテレビ局が組んで、「大喜利」を開いて、一番を決めようというイベントを開催することになります。全国各地から受刑者を集めての大喜利を開くという設定はかなり奇想天外なものですが、一房ずつの「お節バトル」や「ケーキバトル」では、エピソードも煮詰まってしまうので、ここでまとめてケリをつけてしまおうという意図かもしれません。
で、大喜利という設定なので、それぞれの話王が得意なジャンルの「メシ話」を語る、というのではなく、司会者の竹林手亭師匠の出すお題にそった話をしていくという筋立てです。

まず最初に出されたのは「自炊飯」というもので、父親が苦戦しながらつくった「焼き飯」や昼下がりに自分でつくったハムエッグを載せた丼とか

家族の病気見舞いの果物を使った「バナナジュース」とかがでてくるのですが、本書では「OK」となっているのですが、バナナジュースは自炊飯としては対象外のような気がしますね。

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そして、2つ目のお題の「ラーメン」で、味噌ラーメンやカレーラーメンといった定番系の話が続くので安心していると、「幻の百五十円ラーメン」のあたりで、

といった指をいれても熱くない、ぬるーいラーメンが登場したかと思うと、突然の「怪談話」となって驚かされること間違いなしですね。
本書によると、ラーメンというのは受刑者が出所間際に実社会慣れをするための外出の際に一番食べたいものとして選ぶものようで、この国民食にふさわしく、親子の人情はなしで最後はまとめてあるので安心してくださいね。

で、シリーズの締は、大喜利終了後、受刑者たちが夕食を食べたあと、人生最後の飯として選ぶのは、といった話題です。分厚いステーキから、大トロの握りに始まって、味噌汁の汁かけ飯、塩昆布茶漬け、そして卵かけごはんと横綱級が出てきます。

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レビュアーから一言

「食キング」「喰いしん坊」「ばくめし」「大食い甲子園」と、大食いグルメ漫画で数々の名作を送り出してきた土山しげるさんなのですが、本シリーズの第9巻にインタビュー記事が掲載されたます。筆者が「めし漫画」を始めたきっかけは、体を壊して入院し、同室の患者さんたちが「退院したら真っ先にアレを食う」といいあっていた経験からだそうです。本シリーズにも入院患者が「絶品」と褒めるラーメンを食べに行く回がありましたが、めし話のネタもとはすべて自分の食体験だそうですから、そのへんの迫真感は定評のあるところですね。
2018年に急死されて、新作は望めないところなのですが、「食の記憶は誰かとの”想い出”なんです」という言葉を噛み締めながら、筆者の「めし漫画」を読み継いでいきましょう。

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