裏同心の京都の敵は「禁裏」の刺客ー佐伯泰英「赤い雨 新・吉原裏同心抄2」

九州の小藩・豊後岡藩を人妻となっていた幼馴染・汀女とともに出奔し、諸国放浪の末、吉原の四郎兵衛会所の用心棒「吉原裏同心」として陰から吉原の治安を守っていた神守幹次郎が、謹慎処分を受け、義妹の元薄墨太夫の「加門麻」とともに京都で修行をする「新吉原同心抄」シリーズの第2弾が本書『佐伯泰英「赤い雨 新・吉原裏同心抄2」(光文社文庫)』です。

前巻で、神守幹次郎のほうは、京都での修行先もようやく決まったような状態で、少しもたもた感がある中、彼が留守にしている吉原のほうでは遊郭を乗っ取ろうという怪しげな人物が出現し、京都でゆっくりしている場合ではないだろ、という感があったのですが、京都でも事件に巻き込まれることとなり、京都と江戸の二か所での並行した事件が本格的に展開していくのが本巻です。

構成と注目ポイント

構成は

第一章 修行始め
第二章 借家暮らし
第三章 祇園の謎
第四章 魔の手
第五章 剣客の影

となっていて、今回も、京都と江戸の同時並行の展開です。

幹次郎は、祇園の旦那衆の連続殺人の捜査へ

前巻き祇園社に住まわせてもらって修行を開始することににした神守幹次郎なのですが、とりあえずのところ、京都と江戸の違いに圧倒されて、何を修行していいのかわからない状態なのですが、ここで酔っ払った三人の侍に絡まれている芸妓衆を助けて、元花魁・薄墨太夫の加門麻が修行している「お茶屋」に名を売ることに成功するあたりは、この人の持っている「運」というもの。この「運」を脱藩した国元で発揮することができていたら、よかったのにね、と思ってしまいますね。

この「人に出会う運」はさらに、清水寺の高僧・羽毛田亮禅を訪ねた際に、産寧坂の茶店の老婆と孫娘と知り合うこととなります。この老婆は、祇園で長い間、売れっ子の髪結いをしていた人らしく、祇園や島原の「内部事情」を知る情報源をさらに手に入れることとなります。

そして、京都に来てから1か月超かかって、ようやく「事件」にたどり着きます。前巻で、おなじ旅籠に泊まっていた江戸の第呉服商・三井の御隠居の紹介で知り合った、祇園の大商人たちで組織する祇園七人衆の旦那から、彼らの仲間が一昨年の夏に一人、昨年の夏の一人と祇園祭の始まりの頃に殺されるという事件が起きていることを知らされます。この事件の謎を解いて、次の犠牲者の発生を防止するよう依頼されます。
そして、調べをすすめるうちに、この祇園七人衆の連続殺人の背後には、禁裏とこれに結びついた西国の大大名の影がちらついていることが分かってくるのですが・・・、という展開です。

吉原の老舗乗っ取りは計画的犯行

一方、吉原の方では、老舗の遊郭・俵屋を乗っ取った荒海屋に関する調査を続けています。俵屋の店内には、まだ番頭の角蔵が店じまいの後始末をしているので、彼を呼び出して事情を聞きだそうとするのですが、彼は何者かに殺されてしまいます。

さらに俵屋の元主人・萬右衛門が家族と一緒に目黒のほうの百姓家に隠れ住んでいることをききつけます。彼から詳しい事情が聞けるのでは、と四郎兵衛たちが訪ねてみるのですが、
満右衛門は全く事情を打ち明けようとはしません。しかし、息子の一番下の孫娘の小指が失われていたり、五人いるはずの孫が三人しかいなかったり、となにやら犯罪の臭いがプンプンです。
そして、俵屋が店を乗っ取られたのは、大店の若旦那のふりをして通ってきていた詐欺師に、俵屋の遊女が騙され、店の内情を探られたことがわかり、店の乗っ取りだけではない大きな仕掛けがありそうな気配をつかんだところで、俵屋の元主人たちが自殺にみせかけて殺され・・という展開です。

レビュアーからひと言

京都で、江戸での用心棒稼業と同じように、事件の捜査に関わることとなった幹次郎なのですが、今回は今までの口は立つが腕は見掛け倒し、といった武芸者や浪人を相手にするのではなく、「禁裏」に古から伝わる秘密の武術という、京都らしい敵と戦うことになりそうですね。今巻は細身の剣を使い、突き技が得意で、舌打ちが癖の「不善院三十三坊」という刺客だったのですが、これからどんな技や怪しい刺客がでてくるか楽しみにしておきましょう。

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