おせち料理をかけた「旨いもの話」の勝負始まる ー 土山しげる「極道めし 1・2」(アクションコミックス)

土山しげる

外を出歩く自由もなく、何を食べたいかの希望が叶うこともない場所の典型的なところといえば、刑務所をおいてほかにはないでしょう。その刑務所に収監されている受刑者たちが、「美味いもの」の話を順番にして、一年で一番楽しみな「おせち料理」の1品を賭ける物語が「極道めし」のシリーズ。

【構成と注目ポイント】

第一巻の構成は

第一話 「めし」バトル開幕
第二話 空腹の「どて焼き」
第三話 「カツ」の真理
第四話 「そば」の極み(前編)
第五話 「そば」の極み(後編)
第六話 泪の「餃子」
第七話 満点の「お好み焼き」
第八話 渾身の「重箱」

第二巻は

第9話 命懸けのボタ餅 上
第10話 命懸けのボタ餅 下
第11話 馬刺しに賭ける想い
第12話 最高のラーメン
第13話 詐欺師からの手紙
第14話 307号房
第15話 思い出の甘露
第16話 ナポリタンの恋
第17話 闘志のオムライス

となっていて、まず、有名国立大の学生・相田が運営しているホストクラブ・グループでの監禁・暴行事件で逮捕されるところからスタート。彼が、このシリーズの最初の独居房の語り部となります。

彼はシャバにいたときの豪華な食事が忘れられず、悶々としていたのですが、今年も、刑務所の中の食事の中で、一番のご馳走となる「おせち」の料理を賭けてのイベントが開催されることを聞いて大喜びします。

勝負の内容は、自分が今まで食べた中で、一番旨いと思う食べ物を話して聞かせ、聞いたみんな全員がそれを食いたくなったら勝ち。各自のおせち料理から一品ずつとれるという闘いです。
食いたいかどうかは、生唾を飲み込んだかどうかで判定する、というかなり客観的な基準が導入されているあたりが「真剣勝負」ですね。

そして語られる話は、少年院から脱走した途中で、飛び込んだ「どて焼き」の店で黙って出してくれた「三本のどて焼き」であったり、

横領犯がまだ現役の営業マンが熊本、博多、広島と出張して、最終近くの新幹線で東京駅へ空腹を抱えて帰ってきた時の「かきあげ蕎麦」

といった、かなり食欲をそそる話が続くのですが、どて焼きを食ったことがない奴がいたり、若い頃に勤めていた店で嫌になるほど「まかない」で蕎麦を食っていた奴がいたり、となかなか満点というわけにはいきません。

ここで、満を持して登場するのは、元刑事の御子柴丈治。かれは腕利きの刑事だったのですが、その警察官時代の捜査のときに山狩りで単独捜査に入ったときの話です。
話の最初のほうでは、山中で犯人に出くわしたときに取り合いを繰り広げた「ぼた餅」の話がでるのですが、本命は犯人確保後、近くの民家で出してくれた、あの朝飯の定番の定番の

という展開で満点を獲得します。さて、その料理は何だったかは、本書のほうで。

第2巻でひとまず第204号房での「勝負」は完結。この後、仮釈放で外にでた男が、刑務所の前で食った「カツ丼」や、再就職後の職場の花見で出た有名料亭の仕出し弁当といった話が出るのですが、どこまで本当の話かどうかは、これまた本書のほうで確かめないといけないですね。

そして、「おせち」をかけた「旨いもの話」は他の独居房へと伝承されていくことになるのでありました。

【レビュアーから一言】

旨いものをひたすら語る、といった話が多いのですが、時折交じる人情話がほろりとして泣かせます。
今回でオススメなのは、詐欺グループのリーダーの子供の頃の話で、祖母のところに預けられた彼がその貧しさから、周囲に嫌がらせを受けていた時、彼が引け目を感じずに学校にいけるように、少ない田畑を質にして用意してくれた

という重箱のお弁当の話が泣かせます。特に話が終わった後、「作り話や」とうそぶく彼の姿が最後のダメ押しになりますね。

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