大食いハンター・トラッカー錠二の「東北」の旨いもの紹介 ー 土山しげる「流浪のグルメ 東北めし1~3」

土山しげる

現時点では思うに任せないのですが、食べ歩きやグルメ・リポートというのは、TVでもBooksでも一つの大きなジャンルをつくっているのは間違いのないところ。
とりわけ「大食い」のジャンルというのは根強い人気を誇っているのですが、その中で、食べるシーンの豪快さ、と料理の描写の美味そうなことで定評のある筆者が「東北地方」のグルメについて描いたのがこの、『土山しげる「流浪のグルメ 東北めし」(リイドコミックス)』シリーズです。

【構成と注目ポイント】

「流浪のグルメ 東北めし Ⅰ」が

第一章 「仙台」

第1回 希望の牛タン/第2回 完璧な大衆食堂/第3回 魅惑の水煮肉片/第4回 コロッケの泡/第5回 バターの味、海の幸/第6回 舞い踊るあげ玉/第7回 絶品の味噌かつ/第8回 車内で開けろ

第二章 「塩釜」

第9回 夢の寿司街道/第10回 夢は市場で花開く/第11回 潮の香りが口一杯/第12回 丼飯と海の幸/第13回 最高に幸せな瞬間/第14回 道往くグルメ

第三章 「石巻」

第15回 海は麺処/第16回 味の魔法を/第17回 幻の揚げアンパン/第18回 買い占めの罠/第19回 スパイシー・ソバ/第20回 スシ食いねェ!/第21回 朝の和食、夜の冒険/第22回 石巻で韓国料理を/第23回 奇跡の「蟹めし」/第24回 慟哭のおかわり/第25話 おまかせの幸福/第26話 おかわりアゲイン

「流浪のグルメ 東北めし Ⅱ」が

第一章 「盛岡」

第1回 盛岡のシメ飯/第2回 郷愁のコッペパン/第3回 パンが人をつなぐ/
第4回 溢れ出す肉汁/ 第5回 麦芽の魅惑/第6回 嵐の中華まん/第7回 肉の昼休み/第8回 から揚げ浪漫/第9回 紅白のマジック/ 第10回 じゃじゃ麺ふたたび/第11回 様式美は突然に/第12回 天空の食堂

第二章 「花巻」

第13回 米処で舌鼓を/第14回 薬味のイリュージョン/第15回 何枚でもズズッ/第16回 ご褒美サクサク

第三章 「遠野」

第17回 聖地へ急げっ!/第18回 ジュジュジュ天国/第19回 ライス・イズ・ゴッド/第20回 みんなで食べれば

第四章 「花巻」おかわり

第21回 レトロな未来味/第22回 キムチじゃない

「流浪のグルメ 東北めし Ⅲ」が

第一章 「八戸」

第1回 憩いの食堂は宝/第2回 因縁のカツ丼/第3回 滋味と慈愛のグラタンフライ/第4回 節介は焼く物だから/第5回 拭えない舌の記憶Ⅰ/第6回 拭えない舌の記憶Ⅱ/第7回 せんべいに染みる/第8回 朝の元気なバイキング/ 第9回 海鮮パラダイス/第10回 東北はラーメン王国

第二章 「五戸」

第11回 食って仇を取る/第12回 馬がウマい!

第三章 「弘前」

第13回 教師の宴会

第四章 「青森」

第14回 失恋を癒す貝/第15回 朝から3杯ッ/ 第16回 ズゾゾッ!ズゾゾッ!/第17回 嗚呼トラック運転手/第18回 刺し身でドンッ/第19回 香るコンビニめし/第20回 極上の普通

となっていて、「食いしん坊」でプロのフードファイターの道へ、主人公の満太郎を導いた「ハンター錠二」が、彼の生業である長距離トラック運転手の仕事のかたわら、東北各地の美味いものを食い歩くとともに、それぞれの地で、「食」の世界の入口でうろうろしている初心者たちに、旨い店や美味いものを仇バイスしていく、といった構成です。

で、彼が各地で出会う人物も旅行でやってきた若いカップルから、盛岡へ赴任してきたビジネスマン、大阪からやってきた学校教師、あるいは錠二のトラッカー仲間など多数多様なのですが、どの人も悪意や地方に対する妙な思い入れも偏見もなく、各地の美味いものを素直に食べて、感動するってのがこのシリーズのいいところですね。

そして、紹介される料理も、かしこまったり、一時期大流行したグルメマンガのように理屈が先にでるんではなくて、例えば第一巻では、仙台の「水煮肉片」

という麺類に始まり、塩釜の「三色丼」という定番っぽいものが出たかとおもうと、

石巻では「揚げパン」という変化球が投げられてくる。

そして第二巻では

と名物の「じゃじゃ麺」や「ほや」の旨さがわからない他所からの赴任者の目と感覚を使って、土地の人では当たり前なのかもしれない「から揚げ」の旨さに着目したり、

「花巻」での麺体験を通じて、

というところに気づかせたり、と地方の食文化に対しての敬意が表されるのである。

ここらへんの地元の食への称賛は「八戸」のグラタンフライという他所にはないであろう惣菜パンとか

という「青森」の「朝ラー」の食習慣とかにも現れているような気がしますね。

この「東北めし」の旅は、第三巻も「青森」の第20回までで終わっていて、とおそらくは青森から日本海側に回って秋田方面へ向かったであろうグルメの旅は中断されているのが残念なところである。筆者の急逝が惜しまれるところです。

【レビュアーから一言】

「喰いしん坊」「大食い甲子園」「食キング」といった大食いグルメ・マンガで、日本各地の名物を、豪快に大量に食するシーンで、奇妙な爽快感を味あわせてくれていた、土山しげるさんが、2018年に逝去されて、そろそろ三回忌を迎える頃となりました。
その頃は、上り調子がずっと続くと思われていた世の中も、突然の疫病禍で、旅行もグルメ探訪も制約される時を迎えているのですが、せめて、ブックレビューの世界では、往年のグルメ旅をとりあげて、フツーにあちこちの美味いものを求めて旅することのできる日の復活を待つこととしましょうか。

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