総解説>キングダム5.5〜7「蛇甘平原攻略篇」=信は、麃公将軍の下で歩兵デビュー=

中国の春秋戦国時代の末期、乱立していた諸国も秦、趙、魏、韓、斉、楚、燕の七カ国体制が長く続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズの第5弾の後半から第7弾までを総解説します。

前巻までで、王弟・成蟜と竭丞相のクーデターで王宮を追われた秦王・政を助けて、玉座奪還に成功した信は、大将軍を目指していよいよ戦乱の中に飛び込んでいきます。

あらすじと注目ポイント>蛇甘平原攻略篇

第5巻後半 信の初陣は「余り者」同士の五人組

第5巻の中盤で、玉座を政に取り戻させた信は、小さな小屋を昌文君からもらい、そこで貂と一緒に暮らしています。ここを住居にして次の動きを待っていたのですがいよいよ、秦が魏と戦を始めることとなり、その歩兵として参加することとなります。

ただ、全く名前の売れていない末端兵士なので、秦の歩兵の基礎単位である「伍」(五人組)を組む際にもほかから全く声がかからず、余り物同士、信、生まれ故郷の城戸村の尾兄弟、羌瘣という小柄な剣士、そして伍長の澤圭というメンバーで「伍」を組むこととなります。

そして、今回、秦軍を率いるのは「麃公」という将軍なのですが、昭王による咸陽召喚に応じず、前線勤務ばかりを担当していたため、「壁」など中央の将校たちにはほとんどその実力が知られていない将軍です。

これに対し、魏軍を率いるのが、戦国の四君で有名だった「信陵君」の食客頭であった「呉慶」将軍で、彼はこの地域の拠点である榮楊城の城兵も併合して、秦の丸城をあっという間に攻め落とし、魏軍主力の戦車隊を使った蛇甘平原での「平地戦」を仕掛けてきます。

第6巻 蛇尼平原の戦始まる

構成は

第53話 軍編成
第54話 五身一体
第55話 伍の戦い
第56話 戦車隊
第57話 羌瘣の防壁
第58話 一騎打ち
第59話 嗅覚
第60話 騎馬隊怒涛
第61話 栄誉と恩賞
第62話 肉迫
第63話 奇蹟

となっていて、今回の戦では、信の属する「澤圭隊」は、特攻好きで、毎回兵士が大勢死ぬという「縛虎申」率いる千人隊へ配属になります。初陣となる「信」は臆すること亡く前線を突撃していき、魏の歩兵隊長を斃す活躍ぶりをみせます。

歩兵戦での戦況が不利に展開しはじめた魏軍はすかさず、得意の「戦車部隊」を投入してきて、秦の歩兵の多くは蹴散らされていくのですが、「澤圭隊」は羌瘣の提案した死体を使った防御陣でなんとかしのぎます。そして、倒した戦車隊の馬を奪った「信」はそれに乗って、生き残りの兵士をまとめて戦車隊を迎撃していきます。

ただ、全体の趨勢としては、秦の歩兵軍が魏の戦車部隊に蹴散らされている状況で、これを打開するために、麃公は信たちが健闘を続ける「第4軍」に秦の騎馬隊全部を集結させ、ここを核にした戦局の転換を図ります。そして、この隙に乗じて、「縛虎申」は、魏の副将・宮元の陣めがけて、自らの「千人隊」を突撃させていきます。陣中で座って指揮をとる「宮元」に、倒れていく味方の将兵を乗り越えて突貫する「縛虎申」隊と、先陣を切っていく信の活躍は原書のほうで。

ちなみに、この突撃戦の中で、魏軍に取り囲まれた「尾平」を救出するため、羌瘣が凄まじい剣技を見せています。

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第7巻 蛇甘平原の戦い、終結。麃公は、呉慶を斃す

構成は

第64話 将の言葉
第65話 乱入者
第66話 武将の型
第67話 将の才力
第68話 将軍
第69話 挟撃
第70話 両雄
第71話 大将対決
第72話 亡国
第73話 帰国
第74話 伽

となっていて、前巻での一騎打ちの末、縛虎申が魏の副将・宮元を仕留めたのですが、それを察知していたかのように、宮元が陣を置いていた丘を再占拠するべく、魏の呉慶大将軍が兵を進めてきます。

ここで戦局を動かす鍵を握ったのが、突然、姿を表した王騎と彼の私兵団で、呉慶の動きを牽制するかのように、宮元の陣取っていた丘を占拠して、秦旗を掲げてしまいます。

ここで主戦場は宮元の丘にむけて「九重の槍壁」をつくって攻撃態勢をつくっている魏の呉慶軍と、これに向かって攻めかかる麃公軍の戦闘に移ります。
はじめは虚をつかれた呉慶なのですが、すぐさま陣形を立て直し、突進してくる麃公軍を挟み込み、すりつぶしにかかります。麃公軍が崩れるのも時間の問題か、と思われたとき、丘上から急行した「壁」隊が到着。数は少ないながらも逆に魏軍を挟み込む体制をとり、麃公軍の逆襲を助け、戦況は一進一退となります。

そして、最後の決着は、麃公と呉慶の一騎打ちです。ここで、呉慶がもとは趙国の滅ぼされた「甲」という小国の王族の出身で、成長して信陵君の食客となった過去が語られます。今回の一騎打ちでは、麃公の武将としての心根が、呉慶の「思い」ごと、彼をぶった斬ることとなります。

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レビュアーから一言>麃公将軍の正体は?

今回の蛇甘平原の攻略戦を指揮する秦の将軍・ 麃公は、これ以後、秦の重要な侵略戦を指揮していく重要なポジションとして登場するとともに、「将軍」のスタイルが、信とよく似た「本能型」として、王騎と並んで信のロールモデルになる将軍です。
麃公の前歴についてはこのシリーズでははっきりとしたことは描かれていないですが、ほぼ同時期の中国を扱った「達人伝」では、秦を他国から守る防波堤「函谷関」の守備隊長として、信陵君率いる五カ国連合軍から、まだ秦の太子であった政を守りきって入関させる姿がが描かれています(王欣太「達人伝~9万里を風に乗り」第27巻参照)。当時、他国との攻防戦で有名だったのは、白起や王齕で、彼の名は世に知られていなかったのですが、政が即位後の紀元前246年に将軍に任じられたのにはそんな秘話があったのかもしれません。

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