総解説>キングダム22・23「魏・山陽攻略戦」その3=桓騎の奇策で魏本陣陥落。廉頗敗れる=

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズの第22弾と第23弾を総解説します。

前巻までで、砦を築いて万全の構えで待ち構えていた秦・蒙驁軍に対し、魏の廉頗軍が総攻撃をしかけてきます。さらに、廉頗四天王・輪虎と信との一騎打ちも結果がでるなど、山陽地方攻略戦の最終結末が明らかになります。

あらすじと注目ポイント>桓騎の奇策で魏本陣陥落。廉頗敗れる

第22巻 廉頗軍を撃破し、山陽地方を制圧

第22巻の構成は

第229話 知恵比べ
第230話 刹那
第231話 天の計らい
第232話 孤軍奮闘
第233話 大事な仲間
第234話 頂上一気
第235話 熱きもの
第236話 廉頗の怒り
第237話 あの時代
第238話 自分勝手に
第239話 意外な言葉

となっていて、廉頗本軍と蒙驁本軍、激突。

前巻で「断道の計」で魏軍を翻弄したいたかと思われた秦軍なのですが、実は廉頗は蒙驁の秘策を見抜き、蒙驁軍がつくる「迷路」のほころびをついて攻め込んできます。

一方、信、輪虎の戦いは正念場を迎え、輪虎の剣技は衰えるところがなく、信は輪虎によって徐々に斬り削られていきます。ここで一発逆転となったのは、飛信隊の楚水の動きです。輪虎軍の重鎮である「かく備」を斬った楚水に対し、輪虎がおもわず刃を向けた隙をついて、信が彼を肩口から切り裂くことに成功します。そして、最後は、双方がそれぞれ背負っているものもあわせた勝負となります。

一方、羌瘣のほうは、輪虎に向かって馬を走らせていく信を擁護するため、負傷兵300人とともに後方に残り、信たちへ追いすがっていく魏兵たちに立ち向かいます。攻めあがってくる魏兵は介子坊将軍の500人の強兵なので、彼女もこの戦闘でボロボロのj重傷を負い、その結果、飛信隊のメンバーが、羌瘣が女性であることや彼女の生い立ちを知ることになります。ただ、これも羌瘣が、名実共に飛信隊のメンバーとなるのには重要な通過儀礼であったように思います。

本陣のほうは蒙驁本陣に廉頗本人が肉薄しています。退却を進める部下たちに、蒙驁は断固として退却を拒否し、ここで大将軍同士の一騎打ちになります。今までの戦いでは形勢が不利になると蒙驁はいつも逃げ出していたと廉頗が小バカにするのですが、蒙驁が渾身力を振り絞って立ち向かうとともに、すでに「六将軍vs三大天時代」は過ぎ去ったと時の流れを忠告するのですが、まあ廉頗が聞く耳をもつわけはありませんよね。
「時代の流れなど知ったことか」と吠える廉頗に、王騎将軍の矛を手に、信が戦いを挑んでいく・・といった展開です。

ところがここで、戦場に異変がおきます。蒙驁や信、蒙恬たちが廉頗と死闘を繰り広げている間に、蒙驁の副将軍を務める桓騎が魏の本陣を急襲したのです。玄峰を討った後、山中に姿を消した桓騎軍は秦本軍に合流せず、別働隊として魏の本陣近くへ密かに兵を進めていたんですね。魏本陣の不意をついて、あっさりと総司令官である白亀西を仕留めてしまいます。玄峰戦のときの騙し討ちといい、こうした不規則な動きができるのが、桓騎の強みです。

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第23巻 河了貂、娘軍師となる

第23巻の構成は

第240話 詰み
第241話 唯一つ
第242話 見送り
第243話 論功行賞
第244話 信の作戦
第245話 軍師の到着
第246話 貂の覚悟
第247話 軍師の初陣
第248話 上を行く
第249話 飛信隊軍師
第250話 東郡

となっていて、魏本陣の総大将が斃されたことを見た廉頗は、「敗北」を宣言し、蒙驁に無理やり、和睦を申し入れ承諾させます。

早急な敗北宣言に異を唱える魏将は多いですが、魏の主力である、介子坊軍と姜燕軍も山中内にいて、中央軍は輪虎を失って無統制状態、これに対し、秦は蒙驁軍、桓騎軍がまだ兵力を残している上に、王翦軍がまだ無傷という状況を冷静にみて、これ以上戦いを続ければ、魏軍が大きな損害をうけることを予測しての判断です。
ここらは、やはり歴戦の将の名判断というべきですね。

そして、戦争が集結したところで、廉頗は信に、大将軍になるのに必要なものを教えます。しかし、六将や三大天を超える大将軍になる道はそれだけでは足りず、「伝説の塗替え」で、その中身は「中華の統一」であることを助言し、信の斃した「輪虎」の剣を授けます。信の中に自分を超える大将軍となる、かすかな可能性を感じた、というところでしょうか。

ここで、秦vs魏の「山陽攻略戦」は蒙驁軍勝利のもとに終わり、秦は「山陽地方」という中原へ進出する重要な要地を手に入れたことになります。この敗戦の責任を問われ、廉頗は魏を追放され、楚へ亡命することになります。

この攻略戦の功績で 信、正式に「千人将」となるのですが、新任地・里井での信の部隊は、連戦連敗。これは、羌瘣が幼馴染・羌象の敵討ちのため、飛信隊を一時離脱したため、部隊の中で戦術をまともにたてられる人物がいなくなったためで、信は千人将の資格を剥奪されるかもしれない危機を迎えます。

このピンチに蒙恬が助け舟を出し、軍師の斡旋を申し出ます。本当は蒙恬は自分の弟・蒙毅を送るつもりだったですが、やってきたのは、シリーズ開始以来のおなじみで、昌平君のもとで軍師修行をしていた「河了貂」です。

しかし、軍師の才能はあっても、新参者である上に、女性であることから河了貂は隊の信頼がなかなか得られず、しばらくは引き続き「信」が戦術をたてることにするのですが、やはり大苦戦は続きます。魏軍の軍師・氷鬼と間永将軍の攻撃で、飛信隊の多くの部隊が壊滅しようかと言うピンチで、信は貂に軍師を任せます。

難局にバトンを受けた貂は、自軍と魏軍の間にある「隘路」を利用して、主将の信の部隊を囮に使う戦法で、相手の守備軍に穴を開け、相手を撃破します。
この戦いを皮切りに、貂が軍師になって戦術・戦略を立てることで、飛信隊の戦いのレベルが急激にUP。独立遊軍として広域戦を展開するなど急成長を遂げていきます。
まあ、娘軍師を、こんな感じで歓迎するのは「飛信隊」ぐらいのものでしょうが・・・

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レビュアーの一言>盗賊上がりの武将・桓騎の正体は?

この山陽地方攻略戦で異彩を放つのは、なんといっても秦の桓騎将軍でしょう。介子坊軍に戦死者の目玉や死体を送り付けて精神的なダメージを与えたり、玄峰の本陣に、魏軍の斥候に変装して忍び込み、彼を暗殺したり、さらには神出鬼没な采配で、魏の本陣を陥としたり、と曲者ぶりを発揮しています。

このシリーズでは「盗賊あがり」となっているのですが、史書的には経歴不明の人物です。
一説によると、燕の太子・丹が計画した秦王・政暗殺事件で、政の命を狙った刺客・荊軻が、政に会うために「首」を土産として首をもっていった「樊於期」将軍(もとは秦の将軍で、政が提案した軍の少数精鋭化に対し諫めたために政の怒りに触れ一族を処刑され、燕へ逃亡してきていたとされる」)は桓騎将軍の改名後の名前であった、とも言われています。

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