アルキメデスの大戦18〜19「米国和平交渉篇1」=米国と陸軍の間で和平交渉を進展させろ

世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」の運命を変えようと、海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦』シリーズの第18弾から第19弾。

前巻で中国への侵攻を続ける陸軍の東條英機の動きを止めることができなかった櫂中佐なのですが、帰国後、海軍の非戦派に参画し、東條が帰国して陸軍内の支配を固める前に、アメリカとの和平交渉を進めようと動き出します。

アルキメデスの大戦16〜17「中国侵攻篇」=東条英機を説得し中国侵攻を停止できるか?
世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」の運命を変えようと、海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦』シリーズの第16弾から第17弾。前巻

あらすじと注目ポイント>米国と陸軍の間で和平交渉を進展させろ

第18巻 ドイツ軍、ポーランド侵攻。櫂はアメリカとの極秘和平交渉に臨む

第18巻の構成は

第169話 ヒトラー別荘にて
第170話 第二次世界大戦
第171話 情勢分析会議
第172話 偽の議事録
第173話 大統領の決断
第174話 ルーズベルトの腹心
第175話 交渉役の条件
第176話 アメリカ上陸
第177話 国家の価値
第178話 先制攻撃

となっていて、今巻は、日本の中国侵攻が本格化する中で、ヒトラーの別荘でナチス首脳陣がソ連戦略の見直しの一環で中国との協調戦略の再検討を始めているところから始まります。

ここで話題になったのが、櫂中佐が上海で展開した爆撃機で後方支援の補給基地を叩く戦法で、本書ではこれが、航空機で後方支援能力を奪い、そこに戦車を中心とした機動部隊が前線を突破して敵兵力を包囲殲滅するという、第2次世界大戦で地上戦の革命をもたらしたドイツの「電撃戦」やロンドン市民を恐怖させた「イギリス本土爆撃」のヒントになったとされています。

この電撃戦のアイデアは、フランスのマジノ戦突破からソ連侵攻までつながり、イギリス本土爆撃はアメリカの参戦を引き出したのですから、日本の真珠湾攻撃のアイデアと同様、櫂少佐のアイデアが戦争の阻止を目的としながら戦争遂行に使われたことになるのは皮肉な結果です。

本書では、この後、ドイツはポーランドへ侵攻し、ヨーロパ戦線で第二次世界大戦が開戦することとなります。

一方、櫂のほうは、ドイツのポーランド侵攻から一年後に締結されることになる日独伊三国同盟を締結すべきでないことを海軍内で主張するのですが、成り行きに安心できない櫂は、アメリカとの直接交渉の途を探ります。

窓口として使うのは、恋人となった二重スパイの綾部マキコを通じて、偽の会議情報や、新・大和の建造情報を流していきます。

対するアメリカ側の大統領の経済顧問を務める経済学者のガードナーは、もともと日本をアジアにおけるアメリカの橋頭堡とするプランの立案者なので日本と開戦する機会を虎視眈々と狙っていて、その方向へリードしようと誘導してきます。しかし、新・大和の攻撃力を警戒する海軍や将兵をアジアでの戦闘に送り込むこととなる陸軍は和平交渉を試してみる方向に傾き、アメリカの首脳部と、日本の陸軍・海軍の代表者による秘密会談が開かれることとなり、櫂中佐が海軍の代表者として会談に臨むこととなります。

ちなみに櫂のパートナーとなる陸軍代表の牟田口少将は

といった感じに描かれてます。

ここで櫂は交渉を日本側の主導で進めるために、あえて「礼儀作法」という、200年の歴史しかないアメリカを挑発する奇策を会議の冒頭でかますのですが・・といった展開です。

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第19巻 櫂は、アメリカと陸軍の強硬姿勢をどうさばく?

第19巻の構成は

第179話 アメリカの腹案
第180話 日米交渉の歴史
第181話 東條の思惑
第183話 交渉再開への布石
第184話 瀬島龍三
第185話 交渉再開
第186話 マッカーサーの本音
第187話 休戦
第188話 ニューヨークにて

となっていて、前巻で櫂から「会議の座席の位置が無礼」という些末なイチャモンをつけられ、一旦会議が中断するのですが、これは前哨戦に過ぎません。

再開後、アメリカは会議の回数を限定するなど強気の態度を回復しています。

アメリカ側は陸軍と海軍の思惑が一致していないことと、陸軍代表の牟田口少将が櫂がでしゃばるのを良く思っていないのを見抜いて、そこをついてきたわけですね。

もともと日本陸軍側が和平会議に出席する目的は、最初から中国での権益を一方的に主張することが目的で、アメリカと折り合う気はなく、交渉をまとめる気がありません。ここらは、「局益あって省益なし、省益あって国益なし」といわれる霞が関の状況と同じなのかもしれません。

ついでに、自分の主張最優先で、交渉の場面に「武士道云々」を持ち出してくる牟田口少将の精神論偏重のスタンスは、彼だけがそうとはいえないのですが疑問が残るところでもあります・・・。

そして、あわや交渉決裂か、と思われたところで、再び櫂が奇策を思いつきます。それは情報をマスコミにリークし、反戦世論を巻き起こそうという作戦です。これはアメリカ側を揺さぶる妙手となってきます。

ここで障害となるのはアメリカとの開戦やむなしとする頑迷な陸軍側なのですが、ここで櫂は、陸軍側に瀬島大尉という味方を得て、日米交渉を再開させることができます。

しかし、再開したとはいっても、アメリカ側の強硬な態度には変化はありません。その中心となっているのはルーズベルト大統領の側近中の側近・ハル国務長官で、櫂がマスコミに情報をリークした報復として、妥結の条件を上げてきます。これに対し、日本側のほうでも陸軍の牟田口少々は強硬な態度を崩さず、交渉妥結に向けた糸口は見いだせない状況が続きます。

悩む櫂は休養日の朝、散歩にでかけるのですが、そこでフィリピンを統括するアメリカ軍のマッカーサー元帥に出会います。彼は「アメリカは他国に譲ることは絶対にした。一歩も引かない。・・・国家の問題を武力で解決することをいとわない」とクギをさした上で、「全く新しい画期的なアイデア」が必要だ、と櫂にアドバイスするのですが・・・といった展開です。

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レビュアーの一言>陸軍側のキーマンは瀬島大尉

今回の「日米交渉篇」の日本側のキーマンの一人が、陸軍側の代表・牟田口少将の秘書官を務める瀬島陸軍大尉なのですが、この人は後に陸軍参謀本部の本部員となり南東太平洋方面の作戦を担当しています。

戦後はソ連軍によって11年間シベリアに抑留された後帰国。1958年に伊藤忠商事に入社し、最後は会長まで出世した人ですね。国の行政改革で大ナタを振るった経団連の土光会長の第二臨調の委員となり、会長の参謀役として「臨調の官房長官」とも称され、中曽根内閣のブレーンともなった人です。

このシリーズでは

といった評価がされていますね。

もっと詳しく知りたい人は『保阪正康「参謀の昭和史 瀬島龍三」(文春文庫)』がオススメです。

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