アルキメデスの大戦4〜6「 新型戦闘機開発篇」その1=航空機へのシフトで「大和建造」の息の根を止めろ

世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」を阻止するため。海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦」(ヤングマガジンコミックス)』シリーズの第4弾から第6弾。

前巻までで平山造船中将に自ら「大和建造計画」を取り下げさせた櫂だったのですが、海軍内で櫂の味方であった艦政本部の基本設計主任をしていた藤岡造船少将の設計艦が転覆し、藤岡は自死を選択したのですが、彼の遺言に従い、櫂は、海軍の全艦改修計画を策定し、平岡中将の設計ミスもリカバリーすることとなります。これにより再び復活する怖れの出てきた「大和建造計画」を完全に葬るため、空母主導の戦略転換を図ろうと、航空機の開発に乗り出していきます。

あらすじと注目ポイント>航空機へのシフトで「大和建造」の息の根を止めろ

第4巻 三菱の航空機の天才・堀越に協力を拒まれた櫂は秘策をひねり出す

第4巻の構成は

第29話 計画の復活
第30話 日本の航空機
第31話 夢の乗り物
第32話 極限の美
第33話 逆ガル機
第34話 三菱と中島
第35話 航空廠
第36話 坂巻機関大尉
第37話 ポーカー対決
第38話 勝利の確率

となっていて、櫂は山本五十六海軍少将の主導する「航空主兵主義」に協力して世界最高の戦闘機の開発に乗り出します。

ここで、三菱重工業の名古屋航空機製作所の「堀越二郎」に出会うこととなります。あのジブリの「風立ちぬ」の主人公となった人ですね。彼は人々の暮らしを航空機が根本から変えてしまうことを信じていて、その基盤となる「平和な世界」を実現するため、戦闘機を抑止力として使うため、日本海軍の新型機開発に協力をしてきています。

この堀越の設計する翼が折れ曲がった「逆ガル機」の機体デザインの美しさに櫂は惚れ込むのですが、航空母艦の艦載機としての適性に疑問を抱きます。この段階では三菱重工業への海軍の注文が空母運用を前提としないものになっているので問題はないのですが、これが櫂と堀越との決別を呼ぶとともに、後の最終審査段階で大きく影響してくることになります。

逆ガル機での航空母艦着艦に不安を抱く櫂は堀越に通常翼での設計も追加するよう要請するのですが、馬力のあるエンジンを持つ中島飛行機に対抗するために堀越も譲るわけにないかず、櫂の要請は「却下」されます。

大和建造計画を葬り去るためには、航空母艦での運用を前提とした新型機の開発が必須です。堀越二郎率いる三菱の航空部門に断られた櫂は、海軍内で航空技術の研究と器材審査などを担当している「航空廠」に目をつけるのですが、ここは才能はありながら世を拗ねた研究者の集団。櫂の要請を簡単には受け付けません。そのため、櫂はリーダー格の坂巻機関大尉とポーカーで、恋人の美人芸者・佳つ世との仲を賭けてポーカー勝負で決着をつけることになるのですが・・という展開です

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第5巻 中島飛行機の説得作業に登場するのは陸軍の大物

第5巻の構成は

第39話 空冷式発動機
第40話 交渉の糸口
第41話 尾崎邸にて
第42話 大日本帝国陸軍
第43話 勝負の夜
第44話 永田鉄山
第45話 陸軍と満州
第46話 関東軍の暴走
第47話 合理性と客観性
第48話 中島飛行機の決断

となっていて、ポーカー勝負に勝った櫂は坂巻たち航空廠の研究者の協力を勝ち取るのですが、堀越の設計した機体を改良したものをさらに強化するため、中島飛行機の有する当時の最高レベルの空冷式発動機「寿」をこの機体に装備するよう中島飛行機との交渉を始めます。

しかし、坂巻達と約束した交渉期間はわずか10日間。この短期間で一発逆転を狙うため、外務省調査部の丹原課長を介して、陸軍の東条英機少将を紹介してみらい、さらにそこから陸軍軍務局の永田鉄山少将へと交渉の糸口を辿っていきます。櫂はこの交渉の中で、東條の粘着気質と不気味さを感じ取ることになります。

この交渉によって、当時、櫂は陸軍とは犬猿の中であった海軍少尉でありながら、陸軍の有力者たちに食い込んでいくのですが、この過程で繰り広げられるアジアにおける政略論争は日中戦争に突入していくまでの軍部内や政府内での対立の様相が描かれます。

本シリーズでは、永田鉄山少将は、関東軍の石原参謀に主導された満州事変と満州建国に反対し、欧米との協調路線と中国との戦争に反対する主張の持ち主として描かれています。このあたりは最近の「戦争への道を食い止めようとした軍人」とする研究に依っていると思われますが、永田鉄山については様々に評価が別れているところであるのは間違いないところです。

少しネタバレすると、中島飛行機からのエンジン提供は成功するのですが、成功の秘訣は、権力者からの要請が決め手ではなく、櫂少佐の「人物」であるところは、事を起こそうとする人は覚えておいていいでしょう。

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第6巻 中島飛行機の最強エンジン「寿」を手に入れろ

第6巻の構成は

第49話 小山悌
第50話 理想と現実
第51話 バラバラの八神
第52話 思惑の乖離
第53話 「Ka」試作1号機
第54話 試作機の欠点
第55話 可変ピッチプロペラ
第56話 男と女と男
第57話 天才集結
第58話 審査会開始

となっていて、陸軍の永田鉄山からの圧力で、中島飛行機から発動機の提供を受けることに成功した櫂は、その受け渡しのために同社の設計主務の「小山悌」に面談します。

彼に試作機を見せられ、その設計思想である「鉄壁の防御」「搭乗員の安全確保」という理念を聞かされ、「目鱗」状態になっています。この当時、この発想は日本軍では出てこなかったものには間違いありません。

そして、三菱と中島双方の発想を取り入れた「航空廠」の飛行機の搭乗員として、飛行機の安全性を試すためにとことん負荷をかける操縦能力をもった「八神中尉」を乗組員に迎えてテスト飛行を行うのですが、ここで八神は試作機に過酷な負荷をかけて試作機をバラバラにしてしまいます。

彼の過酷な操縦は航空廠機に弱点を見抜いたものだったのですが、これを踏まえて、「主翼の一枚構造」とか可変ピッチプロペラとか大規模な設計変更をする勇気があるのが、櫂少佐をはじめとした航空廠メンバーの度量の大きさというところでしょうか。

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レビュアーの一言

今回、櫂少佐は三菱重工の堀越二郎のデザインの機種に、中島飛行機のエンジンを乗せた改良機を、海軍の航空機製造の航空廠でつくる、という官民それぞれのアイデア力・開発力を結集した形で新型航空機を作り上げています。民間の成果を吸い上げた、という批判もあるかもしれないですが、企業の利害が絡む案件をまとめ上げるにはこれぐらいの強引さがないと仕上がらなかったような気がします。世界レベルと格差がついてしまったといわれる日本のデジタル社会を、官民の技術力をまとめて一気に飛躍させるには、「櫂少佐」のような才能が必要なのかもしれません。

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