「アルキメデスの大戦」24〜25=連合艦隊の奇才二人の日米仮想海戦開幕

世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」の運命を変えようと、海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦』シリーズの第22弾から第23弾。

前巻まででアメリカとの和平協定の条件となっていた、中国からの撤退と南満州鉄道の株売却、南太平島の委任統治権とアリューシャン列島の交換に加えて、「大和」の売却を、政府、陸海軍の首脳陣に呑ませた櫂大佐だったのですが、そのかわりに山本五十六中将からの信頼という財産を失ってしまいます。このため、連合艦隊へ異動となった櫂大佐が、海軍きっての奇才と、日米開戦後を占う、模擬演習を行うのが本巻です。

あらすじと注目ポイント>連合艦隊の奇才二人の日米仮想海戦開幕

第24巻 櫂は連合艦隊勤務となり、海軍の奇才と出会う

第24巻の構成は

第229話 作り話
第230話 櫂への処分
第231話 運命の悪戯
第232話 敵意
第233話 嫉妬
第234話 暁作戦
第235話 櫂と黒沼
第236話 新天地
第237話 主計の使命
第238話 高速計算機

となっていて、前巻で特高警察の薮本刑事のスパイ容疑で監禁され、あやうくスパイ行為を白状したという偽の供述書をでっち上げられた末に拷問死させられそうになったところを大学時代の警視庁にいる友人に救われたのですが、綾部マキコの二重スパイ行為により、せっかく日米の秘密合意までこぎつけた和平協定の破棄につながることを怖れ、櫂は逮捕事件を、ヤクザものとの喧嘩として処理することを決意します。

このことが、今まで誠心誠意仕えてくれた田中中尉との決別を生み、さらにこの不祥事により、海軍省から異動し、連合艦隊への赴任が命じられることとなります。

新・大和売却に怒っている山本中将の仕返しともいえる措置なのですが、ここで後に真珠湾攻撃をはじめ、山本連合艦隊長官のもとで海軍の重要戦略を担当することとなる、奇人・黒沼大佐と出会うこととなります。

もっとも、連合艦隊の長官は山本中将が務めているので、条約締結の事務作業から櫂を切り離して、自分の手駒として使い切ろうという策略が巻の後半の、真珠湾攻撃の課題を黒沼と議論しているときに垣間見えますね。

黒沼は、山本中将から、海軍高等会議で櫂がアイデアを披露した「真珠湾奇襲攻撃戦」を、実際の作戦計画に落とし込み、「暁作戦」として仕上げています。単なるアイデアとして提案したと思っている櫂に対し、黒沼は

と主張し、櫂は「真珠湾攻撃」が思わぬうちに現実化しそうになっていることに恐れを抱き始めます。

一方、大和建造のほうは、櫂が家庭教師をしていた尾崎家の経営する尾崎造船で着々と建造が進行しているのですが、尾崎家の一人娘・鏡子と結婚した銀行家の夫・渡辺春彦による妨害の兆しが見え始めています。彼は、妻・鏡子がまだ櫂を慕っていることに気付き、嫉妬にかられての動きですね。

さらに、大和建造を櫂に潰された平山中将のほうも、密かに進めている「大和建造」が佳境を迎えているようです。

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第25話 ミッドウェーでの日米仮想海戦の結果は?

第25巻の構成は

第239話 兵棋演習
第240話 玩具遊び
第241話 ワンサイドゲーム
第242話 「大和」の実力
第243話 奇襲のその後
第245話 二人の天才
第246話 ミッドウェー海戦
第247話 アメリカの視座
第248話 決着

となっていて、前巻で連合艦隊勤務となった櫂を取り巻く環境はあまり芳しいものではありません。それは、納入業者との関係を見直したり、前例を無視して主計業務の改革を進める櫂の強引なやり方に起因しているのですが、もともと「理屈」を言い過ぎて軍部の上層部や海外の有力政治家と衝突をしていた櫂が止まるはずはありませんね。

このため、代理をだそうとしていた連合艦隊内で行われる実際の戦争の図上訓練「兵棋演習」の記録係として引っ張り出されることとなります。

この「兵棋演習」の題材として出されたのが、ハワイ・真珠湾への奇襲攻撃で、”連合艦隊”役に黒沼大尉、”アメリカ軍”役に南雲中将が司令官、人見中佐が参謀として、図上対戦を始めます。

ここで注目しておくべきは、アメリカ軍役を務める南雲中将が役回りが面白くなくやる気がないところで、このあたりは実際の真珠湾攻撃の際の再攻撃をやらなかったことへの采配ミスにつながっているのかもしれません。

真珠湾攻撃の図上訓練は、櫂のアイデアを黒沼が具体化するという、海軍の二人の奇才がタッグを組んだ作戦攻撃をやる気のない南雲中将が守るという図式なので、見事、連合艦隊側の勝利と終わるのですが、歓声をあげる艦隊司令部の中で、櫂一人は「攻撃に成功した後、アメリカとどう戦うつもりなのか?」と疑念を呈します。

この櫂の疑問に対し、黒沼大佐は、オアフ島の占領と連合艦隊の拠点港によえるアメリカ西海岸攻撃の作戦を提示し、三ヶ月でアメリカとの戦争を集結させると豪語するのですが、これに対し、さらに櫂が異を唱え、とうとう、櫂が”アメリカ海軍”役の司令官役となって、黒沼大佐の指揮する”連合艦隊”と図上演習を行うこととなってきます。

そして、いよいよ始まった、真珠湾攻撃後の日米の太平洋での艦隊決戦なのですが、西太平洋での艦隊決戦が最有力と考える連合艦隊の首脳・参謀たちに対し、黒沼、櫂の二人の奇才が期せずして選んだのが、「ミッドウェー」での対決です。

ミッドウェー攻略に、黒沼大佐指揮の”連合艦隊”は、第1次攻撃隊として空母4隻、航空機250機(戦闘機84機、爆撃機81機、攻撃機90機)を先発させ、その300海里後方に上陸船団と護衛の戦艦群を配するという布陣です。

これに対し、櫂大佐が指揮する”アメリカ海軍”は第一任務部隊が空母2隻、戦闘機のみ140機で、”連合艦隊”側の第1次攻撃隊に対し、後方に第二任務部隊が空母3隻、航空機210機(爆撃機174機、攻撃機36機)という布陣です。

”アメリカ海軍”側の艦隊機の編成は非常に偏った編成で、第一任務部隊は、防空能力は高いものの、”連合艦隊”側の攻撃手段がなく、双方が激突すれば一方的の攻撃を受ける「悪手」としか思えない配備です。

当然、演習が始まると、”アメリカ海軍”側の第一任務部隊は、”連合艦隊”の航空機の爆撃を受けるのですが、櫂大佐は、第二任務部隊による救援に向かわさせず、そのまま西南西に航行させます。

この作戦展開に、連合艦隊首脳陣は、「素人の采配」と櫂のことをさんざん馬鹿にするのですが、”連合艦隊”の爆撃で、第一任務部隊が壊滅状態となり、ミッドウェー島攻撃のため、給油と装備交換のために”連合艦隊”の航空機が空母に帰還したところで、櫂大佐の本当の狙いが動き始めます。

それは第一任務部隊の犠牲の上に無傷の第二任務部隊とミッドウェー島の重爆撃機の大部隊が、”連合艦隊”を迎え撃つ作戦で・・という展開なのですが、詳細は原書のほうで。櫂大佐の大逆転の采配にスカッとするのですが、実際は、太平洋戦争のミッドウェー海戦で悪夢が再現されています。

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レビュアーの一言>航空母艦は「虎の子」?

保有する空母4隻を二手に分け、一方が攻撃を受けても救援に向かわせない櫂の作戦に、連合艦隊首脳部は、「虎の子」の空母を失うことを恐れたのだと推測するのですが、櫂は

と断言します。
ここで、当時の日米の空母保有数を、室蘭工業大学の教授をしておられた方のブログ(よし坊のブログ「太平洋戦争の日米戦略比較2 航空母艦」)から引用すると

となっていて、大戦中の増強ではあるものの、いざとなったときの製造能力の違いからアメリカの航空母艦1隻はけして「虎の子」ではなかったように思えます。この物量の圧倒的な差が勝敗を決した原因でしょうね。

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