第1巻から第6巻までは、中央アジアのウズベキスタンとかを舞台にしていたせいが、いろいろな意味で、ごく健全な印象が強かったのだが、舞台が、歴史の長い集積のあるペルシャ(イラン)に移ると、少々風合いが変わってくる。シリーズの前巻までとは、ちょっと異質に思えるのが本書『森 薫「乙嫁語り 7」(ビームコミックス)』
【収録は】
第三十六話 水の園
第三十七話 姉妹妻
第三十八話 男湯
第三十九話 はじめまして
第四十話 シーリーン
第四十一話 契りの儀式
第四十二話 あなたなら
第四十三話 ふたりの園
番外編 熱
となっていて、本巻のほとんどが、民俗学者のスミスが訪ねたペルシャの大富豪のところの奥さんとその女友達の話である。
【あらすじ・・・】
あらすじ的には、大富豪の奥さんであるアニスと、彼女が銭湯で知り合ったシーリーンが、この地域の風習である「姉妹妻」の契約を結び、アニスの旦那の家で一緒に暮らし始める、といった展開。
この姉妹妻というのは、
結婚して子供のいる情勢同士が、姉妹妻の契りを交わすもjので、お互い以上に仲の良い相手はつくらない。
嬉しいことも、悲しいことも悩みもなんでも話して、お互いの心の本当の理解者になる
一生の親友
といったものであるらしいのだが、今までの中央アジアの物語でが出てこなかった話なので、歴史が堆積し、爛熟した地「ペルシャ」ならではのものであるのだろうが、アニスが銭湯でシーリーンに再会するところとか、はにかみながら距離を縮めていく姿であるとか、うーむ、これは、友情物語といった類ではなくて、「百合族」の世界の話ではないのか・・・と思えてくるのである。
もっとも、奥方のアニスは、もともとが裕福な生まれっぽくて、生活の苦労なぞしたこともないような印象。その彼女が、旦那にいかに優しくされても、心の空洞は大きくなるばかり、といった描写があちこちあるので、満ち足りすぎた生活の中に忍び込んでくる「虚無」のお話、といった風に解釈できないこともないのだが、今巻はやたらと「裸」のシーンが多いので、やはり「百合」の世界に行ってしまうよね、と思わざるをえないですね。
【レビュアーから一言】
アニスの胸は薄く華奢なヌードとか、シーリーンのグラマラスな姿とか、女湯の描写とか、とにかく「裸」が多い。
そのせいもあってか、他の巻とはかなり印象をことにするので、好き嫌いが別れてしまうかもしれない。まあ、アニスの綺麗さに免じて「了」としておきましょうかね。
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