ポンペイ大噴火。そしてプリニウスとネロの物語、終結=ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」12

古代ローマ時代の政治家で、天文、塵、動植物、鉱物、地理などなど当時の世界の情報を集めた「博物誌」をまとめた「プリニウス」とローマに放火して焼き尽くし、「暗君」の見本のように扱われている「ネロ」をメインキャストにした、古代ローマの「叙事詩的」物語である『ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(BUNCH COMICS)』シリーズの第12巻。

前々巻までで、後世に「暴君」の典型とされ」ネロが錯乱の中で死亡。前巻ではプリニウスが「自然」に目覚めることになった幼少期から恩師の娘との恋に破れて戦場へ向かった青年期が描かれていたのですが、今回はプリニウスの昔からの知り合い・ヴェスパシアヌスが皇帝に即位し、ローマ帝国の要職につけられたプリニウスが、いよいよヴェスビオ火山の噴火によるポンペイ壊滅へ直面します。

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あらすじと注目ポイント

構成は

78 ラス・メデゥラス
79 リウィウス
80 ピシーナ・ミラビリス
81 メルクリウス
82 ヘルクラネウム
83 ミラベラ
84 テラ

となっていて、前々巻は皇帝ネロの自死のシーンで締めくくられていたのですが、実はネロの死から今巻で皇帝となっているヴェスパシアヌスが即位までの2年間の間、ローマ帝国は内乱の時代となっていま。

ネロによる元老院議員や有力軍人の粛清に不満をつのらせたガリア総督の反乱に始まって、ゲルマニアなど広範な地域で反乱が勃発し、ヴェスパシアヌス即位までの間に、ガルバ、オトー、ウィッテリススと3人の皇帝が即位しては殺されたり、自死したりしています。

この混乱を収めたヴェスパシアヌスは、このシリーズではキャベツ好きのプリニウスと仲の好いおじいさん、といった感じに描かれているのですが、庶民階級出身でありながら、ユダヤ戦争を鎮圧するために派遣された軍司令官をスタートし、即位前はオリエント全体を統治する有力軍人に成り上がった人なので、一筋縄ではいかない人物であったことは間違いないですね。

さらに倹約皇帝としても有名で、本書の中にでてくる公衆便所の集まった尿の取引に税金をかけたり、息子のティトゥスが反対したときに、金貨が臭うか、といったエピソードは実話なのですが、当時、人の尿は羊毛の脂分を落とすために使われていたので、尿に税をかけたというより、羊毛取引への税金を重くしたというとこrですね。

で、その彼からスペインへ皇帝代行として赴任した後、ローマへ帰り、今まで集めてきたものをまとめていたのですが、ローマ艦隊の司令官として海軍をまとめるよう命じられ、ナポリ近郊にあるミセヌムへ赴任します。ここで、ヴェスビオ山の大噴火に遭遇したわけですね。

この赴任地には、ローマでの商売がうまくいかなくなった元護衛官のフェリクスもプリニウスを頼ってやってきたほか、美人技師のミラベラもミセヌムの対岸のポンペイで水道建設に従事していて、ここで、今までのプリニウスと旅をともにした人々が集まってくることになります。

そして、羊の大量突然死や水の出が悪くなったりといった、17年前にポンペイを襲った大地震と同じような兆候が起きるのですが、今回はヴェスビオ山の噴火です。そして、ポンペイを歴史に残る「災害の町」としたあの大災害の火へとつながっていきます。
その結末については、原書のほうでどうぞ。

レビュアーの一言

今巻でプリニウス・シリーズは終結となり、最後はプリニウスが自然への畏敬を強調しながら死んでいく場面と、ポンペイから逃れたフェリクスとミラベラのシーンで終わっているですが、シリーズを通して印象的なのはやはり「ネロ」ではないでしょうか。ネロについては「暴君」「母親殺し」「悪徳皇帝」というイメージが通常くっついてくるのですが、本シリーズで受けた印象は「狂乱の皇帝」という感じですね。ネロのイメージを確認する意味で、もう一度読み返してみましょうかね。

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