社会起業家は新しい「公的サービスの担い手」になりうるか  ー 「社会に役立つ」を仕事にする人々(洋泉社)

最近、公的サービスの代替あるいは代行をするにはどういう主体がよいのか、といったことを考えていて、その一つの「解」となる可能性の一つが「社会起業家」ではないかと思い始めている。
数年前の民間委託ブームの時に主体となりうるか、と考えられていた「一般民間起業」は、どうも「拡大」「収益最大化」をめざす本能が内在化されているがために、なにかしら齟齬をきたしていることが最近見られている。
そうしたことで、拡大要求が少なく、しかも収益性を一定程度確保しないと存続できない「社会企業」のような形式が新しい担い手として適性が高いのでは、と思った次第。構成は
第1章 社会起業家という生き方
第2章 「社会を変える」を仕事にする
 カタリバ
 フローレンス
 マイファーム
 SOL
第3章 「弱者を救う」を仕事にする
 ワンファミリー仙台
 楽患ナース
第4章 「地域再生」を仕事にする
 えがおつなげて
 コミュニティータクシー
 さくらノート
第5章 「環境保護」を仕事にする
 アサザ基金
 アンビエックス
第6章 明日の起業家をめざすあなたに
となっていて、発刊当時元気のある社会起業家のインタビューを通じて、社会起業家群像を描いたのが本書。
インタビューの引用などは、こうしたインタビュー主体の本の肝をぬいてしまうことにもなるので今回は控えるとして、共通して言えることは、こうした社会起業に関わっている人の将来への希望の期待の大きさと楽観性。結構ハードルの高い分野であるから、エネルギッシュなほうが良いのは当然なことなのだろうが、それにもましてオポチュニストであることが社会企業家の条件ではないか、と思っているところ
取り上げられている社会起業の種類は、環境保護、途上国への食糧支援、ホームレス支援といった今までのNPO活動でよくみるものから高校生の進路相談、病児保育、耕作放棄地対策、ビニール傘レンタルによる街の美化まで多種にわたっている。
公的サービスの代替という側面から見ると、「起業」という切り分けが必要なため、公的サービスの補完的な事業が多めになってしまうことは否めず、民間委託とか指定管理とかの手法に比べると線が細いのはしょうがないが、携わっている人の社会貢献の意欲や利益追及のほどあいなどを考えると、程度の良い形で公的サービスを代行してもらう可能性もたかいのでは、と期待する次第である。
本書中の「社会起業家と呼ばれる人の仕事の成果は、社会貢献の到達度でこそ測るべきだろう。」という言葉を引用して、努力している社会起業家に声援を送って、この稿を了としよう。

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