都会少女の成れの果てにエールを ー 酒井順子「オリーブの罠」(講談社新書)

いわゆる「雑誌」は古今東西、数多く出版されているのだが、時代をつくった「雑誌」といった当方が思い浮かぶのは、「平凡パンチ」「PLAY BOY」「少年ジャンプ」「アスキー」といったところで、男性ゆえのバイアスがかかってしまっているのだが、女性的には、本書でとりあげる「オリーブ」もそうであるらしい。
構成は

序章 「オリーブ誕生」
第1章 オリーブ伝説の始まり
 1 一九八三年の大転換
 2 ターゲットは女子高生
第2章 リセエンヌ登場
 1 オリーブ少女とツッパリ少女
 2 リセエンヌ宣言
第3章 「オリーブ」と格差社会
 1 付属校カルチャー
 2 八〇年代の格差
 3 アイコン、栗尾美恵子さん
第4章 「オリーブ」とファッション
 1 おしゃれ中毒
 2 コスプレおめかし
第5章 オリーブ少女の恋愛能力
 1 非モテの源流「アンアン」
 2 「聖少女」願望
 3 オリーブ少女の男女交際
第6章 オリーブ少女の未来=現在
 1 「オリーブ」の教え
 2 オリーブ少女の職業観
 3 オリーブチルドレン
終章 オリーブの罠

というところで、1982年の創刊から、ほぼ20年後の休刊まで、誌にコラムも書いていた、いわば「中の人」である酒井順子さんが、オリーブを通じた社会世相史を書いたといったところなのが本書。

社会世相とかいっても、「オリーブ」の読者層であるから、いわゆるお色気たっぷりの、でもないし、ツッパリ系でもないし、どちらかというと非モテ系(あるいはモテ系は志向しない)で、意識高い系に属しつつも、おしゃれは大好きといった女性を中心とした層。
ただ、この層、ふとあたりを見回すと、辺境部でも、意外に彼女がそうかな、と思える方々が、カタカナ職場や公務員を中心としたお固い職場にいるもので、「オリーブ少女」たちの浸透力はけっこうなものではあるようだ。

というのも、この「オリーブ」の憧れとして揚げる対象が、アメリカ→フランス、都会の付属高文化→ナチュラルと変遷するとしても
「オリーブ」はロマンチィックすなわち現実を離れたところの甘美さを求めた雑誌(P52)
「リセエンヌ=フランスのオリーブ少女なのです」
@さりげなくおしゃれで、いい感じ。どことなくかわいくて、夢がありそう。大人っぽくみえるからといって、ちっとも背伸びしてるわkではなくて、ティーン・エイジのいまにぴったりの自分のライフスタイルをもっている少女でもあります・・」(P62)
という価値観を基礎において、異性に気に入られることではなく、異性に目立つ「オシャレ」を志向するという、一種の「自己完結的な生き方」は「オリーブ」によって形作られ、「オリーブ」という媒体で辺境を含む地方へ撒かれ、増殖したものであるのは間違いないだろうからだ。
まあ、辺境部に住まう当方としては、この「オリーブ少女」たち、そうはいっても「都会」に生息する女性たちの色彩が強く感じられるのだが、
「オリーブは」最初から、「学ぶ」という姿勢とともにあったのですねぇ(P205)
「いつだって。最先端(いちばん)でいたい!この気持ちがあってこそ、オリーブ少女」(P207)
「素敵な女性になるために、よい生活をするために必要なのは、自分にとっての本物を見極める目。感性磨いて、いまから養いたいね。」(P209)
といった気持ちをもって生活している女の子(あるいは女性)は、都会に限らず、上昇志向のある女性に感じられる特性でもある。女性の部下職員に日頃発破をかけられている男性管理職の諸氏は本書を読んで、その生態系をよく勉強したほうがいいかも。

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