読むスピードの競争は厳禁。「速く読むこと」にもきちんと目的はある。 — 角田和将「速読日本一が教える すごい読書術」(ダイヤモンド社)

先だって、「人生で大切なことはすべて「書店」で買える」のレビューの際に「速読」のことをあまり褒めなかったのだが、そのままでは、ちょっと公平性に欠けるな、と思ったので、速読派の中から本書をレビューしておこう。
 
構成は
 
序章 なぜ速く読んでも覚えられるのか?
第1章 社会人の9割が知らない本当の読書術
第2章 最速・最短で読書もモノにする4つののポイント
第3章 速読を極めて、情報収集力を上げる
第4章 本の価値を最大化し、自身のスキルに変える
終章 読書のスキルで、人生が変わる
 
となっているのだが、注意しないといけないのは、本書は、けして本を「速く読むための技術」の本ではないということ。だから、例えば、本の読み解きの「目の動かし方」であるとか、「読む姿勢」であるとかのフィジカルな部分はむしろ枝葉である。要は、
 
読書に限れば、「読書速度」と「頭に残っている情報量」との間には、そもそも関係性などないのです。 読書速度と頭に残る情報量に関係がないのであれば、速く読んだほうがいいし、「忘れる前に読み返す=忘れない」と考えれば、むしろ速いスピードで読んだほうが何度も読めるので、頭に残る情報量が増える
 
といったように、「本の情報をいかに頭に残すか」の技術、そのための速読の技が述べられているのである。
 
なので、その方法論も
 
なるべく速いスピードで1〜2回、本を読んでいきましょう。次の6つのポイントを意識しながら取り組んでみてください。 ① 普段読む時間の3分の1を目標にする ② 1行1秒以内のペースで見る ③ 立ち止まりそうになったらマークをつける ④ 速読モードに切り替える ⑤「自己満足」よりも「自己成長」を優先する ⑥ ツールを活用して「難しそう」のハードルを下げる。
 
基準としては普段読んでいるスピードで1冊を読み切るのにかかる時間の3分の1の時間内で読み切れるように進めてください。
 
といったことを基本に
 
 1冊を3時間で1回読むよりも、1冊を1時間で3回見るほうが、記憶に残るページ数は増えるのです
 
 
ひととおり読み切ることができたら、次は「何が書いてあったか?」を思い出して、頭に残っている内容を引き出していきます。
(中略)
必死におもいだそうとすることによって、速く読んでいたなかで何となく目にした文章から記憶を引き出す力を鍛えることができます。
 
といったように、単に速度を競うのではなく、頭に内容を残すために一工夫が必要なものが多い。
 
とはいっても、いわゆる「読書術」の本のアドバイスとも食い違っているところもあって、
 
私は、 本を読む前にあらかじめ読む目的を明確にする必要はない と考えています。・・・本を読む目的は知識を得ることではなく、自分を進化させるために必要な行動イメージを得ること です。ですから、レベルアップする前の自分が本を読む前に、検索したい言葉を明確にすることは不可能なのです。
 
といったところには、「齋藤孝さん派」はちょっとカリッときてしまうかもしれないのだが、そこは用法に応じて読み分ける、といった大人の対応をお願いしたい。
 
まあ、読書の目的は、筆者の引用する「バフェットの教訓」の「「人は経験から学ぼうとするが、他人の経験から学べるならそれに越したことはない」であることも事実。上手に大量の本が読めるように、様々な方法論を比較しながら「やってみる」ということが一番大事なのかもしれないですね。
 

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