時間貧乏から「時間リッチ」に転換する方法とは ー 臼井由妃「やりたいことを全部やる!時間術」(日経ビジネス人文庫)

時間管理について書かれた本は、時間を有効に使って趣味であるとか家庭生活に、という方向性のものと、時間を使う密度を濃くして、仕事も趣味も何でも熱く向かっていく、というものと二種類あるのだが、一人の主婦が、病気で亡くなった旦那さんから事業を引き継ぎ、がむしゃらに事業を勧めてきた、という筆者によるものであるので、迷うことなく後者に属する「熱い」時間樹の本である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
第1章 タイムマネジメントの基本は時間密度
第2章 時間は支配したほうのものになる
第3章 メール・SNSの切り捨て術
第4章 1週間は金曜日から始めなさい
第5章 考えるのは15分でやめなさい
第6章 頭がフル回転なら、時間効率はグンとよくなる
第7章 時間を上手に使い人のちょっとした工夫
おわりに

となっていて、その熱いところは第1章の

「時間がないから○○ができない」「△△をやめれば□□をする時間ができる」という「引き算の発想」は、タイムマネジメントにおいてはキッパリと捨ててください。
そして「あれをやるなら、これをやらない」という「あれか、これか」の考え方ではなく、「あれも、これも」という「足し算の発想」に切り替えるようにしてください。これが、時間貧乏から時間リッチに変わるための大原則です。

といったあたりに明らかで、「量をこなすと質がついてくる」という、少々前時代的な方向性には抵抗もある人もあるとは思うが、筆者が「時間の密度をあげること」が大事という主張は間違ってはいない。

さらに

もしあなたが本気で時間リッチになりたいなら、時間の無駄を省くことばかりに気をとられ、人づき合いを粗末に考えないことです。
(略)
チャンスも時間もお金も、結局は人が運んでくる

ということが強調されているところは、経営者やコンサルが書く「時間術」の本によくある「効率のために人間関係を切り捨てる」といった寒々としたものがないのは評価していい。

で、こういった見地から、メールの作法とか、スケジュールと手帳の使い方とか細々したものも提案されているのだが、当方的に注目しておきたいのは、「1週間の使い方」ということで、「もう少し厳密にいうと、 金曜日から1週間を始める。」を原則に

① 1週間は月曜日から水曜日までの3日間しかない。
 こう考えて、仕事はその3日で終わらせるようにしている。

②月曜日から水曜日までの3日間で終える。この間に、今やらなければならないこと、あるいは回収度の高い仕事を優先的に行う
(「回収度の高い仕事」とは、重要であり、締め切りがあり、かけた時間に対して対価が短期的に返ってくる仕事のこと)

③木曜日はなるべく、月曜日から水曜日までに行った仕事の進み具合や、仕事の問題点をチェックする日にする。予定通りにいかなければ、何が原因なのかを早めにチェックする。

④金曜日は「攻撃の日」。金曜日になると、翌週の仕事に備え、資料の準備やアポイントの確認をする。こうすることで翌週が、月曜日から「やることハッキリ、用意もバッチリ」な状態になり、1週間全体の時間密度が高まる。

⑤金曜日にはもう1つ、大事なことをします。それは、普段は忙しくて頭が回らないようなこと、たとえば販売戦略の立案やマーケティングといった、中長期的な未来のことを考える

といったところで、かなりアグレッシブな1週間の過ごし方で、提案通りできるかは別として、このあたりの「熱い計画性」は見習っておくべきであろう。

さらに

同様に、明日を時間密度の高い充実した日にするためには、明日のスケジュール、明日の予定を立てる必要があります。誰といつ会うのか、どういう仕事をどのタイミングでするべきなのか、明日の予定が決まっていなければ、当日になって時間を有効活用しようと思っても無理なのです。
退社時間になったら仕事は終わりとばかりに頭の電源を切るのではなくて、最後に明日の予定を組み立てる一工夫が、明日の時間リッチと時間貧乏の差となる

といったところまで模倣できれば、かなりの勢いで毎日が疾走できる「熱い実践者」となれること間違いなしであろう。

【レビュアーから一言】

ここまで読むと、一頃流行した「根性もの」の時間樹であるかのような印象をうけるのだが、そういったところと、妙に醒めているところ、例えば

かけた時間と成果は比例しません。
たとえ、それがか「考える」という大事な作業であろうとです。
私は何かを考えるときにも15分と時間を決めています

とか

アイデア不足に悩む人の多くは、アイデアについて誤解しているようです。アイデアとは、画期的である必要はありません。ましてや世界初である必要もないのです。
(略)
まずは何事もモノマネから始めてはどうでしょう

といったところが混在しているのが、本書の良さでもある。

まあ、「時間術」の類は、「これだけ」「この本だけ」といったキャッチフレーズが横行しるのだが、当方的には、たくさんの本やノウハウの中から、自分にあったものを抽出して、自分に合ったやり方をみつけるのが「一番」と思っているのだが、本書はそのノウハウを見つけることのできる一冊と考えていい。

「熱気」のところに好き嫌いは分かれるかもしれないが、まあ一読してみてはいかがですか。

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