「フツー」のビジネスマンだってアイデアは出せる ー 美崎栄一郎「アイデアは才能では生まれない」

「アイデアがない」言われ、暗〜い気分になって、出勤するのが億劫になる、という経験をした人も多いはず。特に、新規プロジェクトや新商品企画の会議などで、隣に座っている同僚や後輩のしゃべっていることと比べて自分は・・・、といった気分になることの多いあなたにオススメしたいのが本書『美崎栄一郎「アイデアは才能では生まれない」(日本経済新聞出版社)』である。
現在は、ほとんどの職場や職種で「アイデアを出せ」と迫られる環境の職場がほとんどということを考えると、本書は、新規でキレのいいアイデアを出すのは、「才能」によるのでは、と思いがちな常識を軽く揺さぶってくれるので、企画セクション以外に勤めているサラリーマンにこそオススメしたいですね。

【構成と注目ポイント】

構成は

1 最終目標から逆算する
2 経験と知識で「結び目」を見つける
3 さまざまなタイプのチーム構成でアイデアを生む
4 方法論を現場で実践する
5 アイデアをつなげてストーリーをつくる
6 問題解決への意識が「ひらめき」のベースをつくる
7 常識を壊し、全部逆で考える
8 情報をつなぎ合わせて、”創造的瞬間”を導く
9 アイデアは才能では生まれない

となっていて、基本は、各企業などの勤務している新商品の開発担当者やデザイナーの新進気鋭のところへの、インタビュー記事に基づいて構成されている。

とりあげられている会社や商品は、「花王」のソフィーナ・ファインフィット、「カルビー」のじゃがりこ、サントリーの「サントリー烏龍茶」、ゲーム開発といったように多種多様なのだが、

結論を先に言えば、ゲームも化粧品も飲料もお菓子もネット系サービスも同じような思考で考えていたということです。
この事実は、私にとって驚きだったと同時に希望がもてました。
「才能ではなく、手法を学んで、身につけていれば、どの業界でもアイデアを出すことができるんだ!」と。

といったあたりに、本書が書かれた動機が示されている。

で、「才能ではない」としたら、どんな手法で、というところなのだが、ここは結構泥臭いものがあって、

アイデアを出すために必要なこととして、こういった知識や経験を自分の中に貯めておくことが大事で、これは才能ではありません。日々の努力なのです(P58)


アイデアは方向性をきちんと決め、それに沿って考え抜けば出てくるものです。才能ではなく、経験や知識がアイデアを良質なものにしてくれるのです。
偶然ひらめくのではなく、世の中にあるたくさんんの面白い要素を結びつける結び目を自らが見つけることができるかどうかなのです。(P61)

いわゆる企画の作業というのは、このようにさまざまな情報を何度も何度も繰り返しつなぎ合わせて、一本のシナリオをつくることだと思っています。そしてそのシナリオが、いかに素直にお客様の心の中に落ちるものになっているかが、とても大切なことだと考えています(P212)

といったところを見ると、新規のアイデアというものは、ちゃらちゃらっと才能ありげな人が思いつくよりも、その仕事にきちんと取り組んで商品知識や周辺知識を溜め込んだ末にでてくるものも多いようで、このあたりは、当方も含め、凡人のビジネスマンには、「門前払い」ではない分、一種ありがたいことである。

もっとも、

消費者は、今あるものに対してよい悪いと批評をすることはできるけれど、ないものを具体的にイメージすることは難しいのです。こんな商品があればいいなと想像することはできても、具体的な完成品は思いつかないのです。
そうした漠然としたニーズを完成品として実現するには、長年培ってきた経験や技術、ノウハウに裏打ちされたプロフェッショナルの支店が必要なのです(P143)

とも言われているから、単に消費者インタビューや、コンサルタントのやる市場調査を鵜呑みにして考えればいいものではないので、そこは個々人が頭を振り絞る「汗の結晶」が必要ということであるようだ。

【レビュアーから一言】

「アイデアは才能ではない」とはいっても、「アイデア1000本ノック」とか「よいだけではダメなんです」といった表現を見ると、誰でも、簡単に、楽にひねり出せるものではないよ、ということを実感させる本書なのだが、

目指すべき目標がはっきりすると、みんなアイデアを出すことができる(P31)

会社において商品を作り上げるためには、越えなければならないハードルが幾重にも登場してきます。それを超えるためには、正攻法だけでは無理で、今までに存在しなかったアイデアで解決していくことが求められます。
ただ、そこを越えるのは、自分だけの知恵でなくてもよいと考えると、発想も広がるのです(P36)

といったところでは、「天才」がいない「フツーの職場」への「エール」と考えていいようだ。

よく言われるように、アイデアは、すでにあるモノの組み合わせにすぎません。
ここで異質なモノをいかに拾うことができるかが重要で、そのためには、いろいろなことを自分のモノとして頭に蓄積しておくことが大事なのです(P217)

という言葉を胸に刻んで、もうひと頑張りしてみてはどうでしょうか。

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