古代ローマ時代の「百科事典」をつくった男の物語がスタート ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 1」

古代ローマ時代の政治家で、天文、塵、動植物、鉱物、地理などなど当時の世界の情報を集めた「博物誌」をまとめた「プリニウス」とローマに放火して焼き尽くし、「暗君」の見本のように扱われている「ネロ」をメインキャストにした、古代ローマの「叙事詩的」物語の開始である。

筆者は「テルマエ・ロマエ」で古代ローマと現代日本を「銭湯」を媒介に行き来する、建築技師・ルシウスを主人公した物語で、コメディ的なローマの物語で一世を風靡したのだが、今回は少々シリアスな「ローマ」の物語である。

【構成と注目ポイント】

構成は

1.ウェスウィウス
2.マグナ・グラエキア
3.ネロ
4.カティア
5.ローマ
6.プテオリ
7.パラティヌス

となっていて最初の「ウェスウィウス」は、ヴェスヴィオ火山の噴火に、プリニウス一行が立ち会うところから、このシリーズがスタートする。ネットで調べると、プリニウスはポンペイが壊滅したヴェスヴィオ火山の噴火のときに、ナポリのローマ西武艦隊の司令長官をしていて、噴火の調査と友人の救出のため、ポンペイ近くの町へ行き、そこで、火山の煙や有毒ガスを吸って喘息が悪化して亡くなったとされていて、その人物の最期のところからの「回想」の仕立てになっている。

プリニウスが彼の忠実な書記となる「エウクレス」とエトナ火山の麓で出会ったときも、咳をしている様子なので、喘息もちは若い頃からの持病という設定である。

で、このプリニウスがメインキャストとなる物語の魅力は

といったような「科学者」的な冷めた思考構造を有している反面、彼の「博物誌」には「ドラゴン」や「サラマンダー」であるとかエチオピアに生息する、顔は人間、体は獅子、尻尾はサソリという「マンティコア」といった怪しげな怪物や人類が登場するという怪しげなところが混在しているところであろう。

ちなみに、この巻の途中、カティアの町で出会う怪物は半人半魚の海の精霊・ネレイスであろうか

さらに、もう一人の主人公・ネロは、母親殺しの悪夢に取り憑かれていて、悪妻で定評のある彼の妻・ポッパエアも持て余し気味の状態。

【レビュアーから一言】

今巻は、ネロからローマへの帰還を命じられて、プリニウス一行がローマへ帰還するところまで。どちらかというと、プリニウス、彼の従者・フェリクス、書紀のエウクレス。彼の友人のウェスパシアヌス、ネロといった今シリーズのキャストを勢揃いさせて、舞台を整えたといったところでありましょうか。

【関連記事】

プリニウスを通して描かれる「ローマ帝国」の健全さと退廃 — ヤマザキマリ「プリニウス」(新潮社)1~6

ネロとポッパエアは「ローマ」の退廃の象徴か ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 2」

プリニウスたちの再びの旅を「火山」が待ち構える ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 3」

カンパニアの地震からプリニウスは助かるが、ローマの闇はもっと深くなる ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 4」

そしてプリニウスの旅は「アフリカ」を目指す ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 5」

プリニウスはアフリカへ、ネロはローマ。物語は二つに引き裂かれる ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 6」

ローマの大災害の陰に、いろんな者たちが蠢くー ヤマザキ・マリ「プリニウス 7」

ポッパエアが妊娠し、「ネロ」のローマ帝国も安泰か、と思いきや・・ ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 8」(バンチコミックス)

コメント

タイトルとURLをコピーしました