人間の「四類型」ごとに最適なワークスタイルを考えよう ー カーソン・テイト「ワーク・シンプル」

「ハードワーク」のため心が疲れ切ったり家庭やプライベートを犠牲にしてしまうのは、日本人のワークスタイルの特徴の一つとしてあげられるのだが、これは、けして日本だけのことではなく、特にハードワーカーの度合いは、グローバル化が
より進んでいたり、競争原理の徹底度が高い、といったことから、特に「アメリカ」のビジネス社会は、日本のそれより輪をかけた状態であるらしい。

そのアメリカで、コンサルタント会社を経営し、コンサルタントとしてバリバリとハードワークをこなしつつも、「単なる」疲労や睡眠不足ではなかった。魂が消耗していたのだ」と自覚した女性コンサルタントによる、忙しさに振り回されずに、生きる目的や意味を取り戻すための「シンプルに働く」ための提案が、本書『カーソン・テイト「ワーク・シンプル」 がんばらずに成果が上がる働き方(日経BP社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ 無理をやめ、シンプルに働くと決めた日
第1章 ハードワークではなくスマートワーク
第2章 楽になるための準備をしよう
第3章 あなたの生産性タイプは?
第4章 注意力をコントロールする
第5章 あなたの本当の優先事項は?
第6章 狙った時間に賢く投資する
第7章 「マスター・タスクリスト」で脳を開放する
第8章 絶対できるタイプ別の実行・管理法
第9章 メールの手なづけ方
第10章 作業効率の良い空間作りのコツ
第11章 書類整理に時間をかけないために
第12章 チームメンバーへの上手な助けの求め方
第13章 違う生産性タイプとうまく働くコツ
第14章 会議革命を起こす
第15章 「本当のあなた」が一番、生産性が高い
エピローグ 忙しさは克服できる

となっていて、基本のところは、それぞれの人の「生産性のタイプ」に応じて、タスク管理、書類の管理などの仕事のノウハウを提案していく、というつくりとなっている。

日本では、人間のタイプ別分類というとビジネス系では「人間は9種類」といったところがメジャー系なのだが、本書では4種類に分類していて、それは

①プライオリティ型
論理的、分析駅、批判的、現実的な考え方をする。
時間を有効に使うために、価値の高いタスクや、プロジェクトの成果を挙げることに注力する。大量の仕事を正確に完遂したり、効果的にタスクの優先順位(プライオリティ)うぃつかたりすることができる

②プラン型
系統的で、連続的で、計画的で、細部にこだわった考え方をする。タスクを終わらせるのに必要な時間を見積、時間軸に従って整理し、正確で詳細にわたる行動計画をつくる。・・・詳細なリストを作成し、締め切りより早く仕事を終えることが多い

③アレンジ型
協力的、意欲的、感情的な思考をする。時間の使い方を決めて仕事をす進め、最大の結果を得るためにチームワークを大切にし、状況の変化に応じて、瞬時に直観的に決断する。視覚的な表、特にカラーのものを利用し、どの業務を終わらせるべきかを直観的に判断する

④ビジョン型
全体的、直観的、総合的な考え方をする。全体像を見て、迅速に仕事を進めることができる。マルチつくや複数のプロジェクトのうまく対応する。共通点のないアイデアをまとめ、新しい企画案を生みだすことも得意。プロジェクトの戦略を練り、複数のアイデアを同時に、効果的に取り入れる一方で、タスクを効果的に完遂する

といった分類になるようで、本書によれば、ゼネラル・エレクトリックス社の能力開発センターの所長を務めた人が開発した、思考や行動の複雑性を正確に反映した認知スタイルの多次元の「全脳モデル」というものらしい。
この4種類ごとに、コミュニケーションの特徴や意思決定のスタイル、強み、きらいなこと、好きなこと、著名人といったことが分類されていて、このあたりはかなり」「アメリカ風」を感じます。この4つの類型のどれに該当するのか判定する自己チェックリストがついているので各自試してみてもよいかも。

そして第4章以後で、スケジューリングの優先順位のつけ方、タスク管理、メール処理の仕方、注意力を維持するメソッドなどなど、ビジネスシーンに応じて、タイプ別の処方箋を示してくれる構成となっているのだが、ここらは、大部にわたるので、興味がある事項をピックアップしながら、原書で確認をしてください。ちなみに「空間づくり」という項目があって、作業スペースの配置やデザインの類型ごとの提案があるのは、結構アメリカっぽいですね。

【レビュアーからひと言】

本書の最後の「解説」のところで、ブロガーで有名な立花岳志さんが

本書の著者は、以前の僕や今後にアドバイスを求めてやってくる人々と同じように、忙しさのあまり、目月欠けた経験を持つ米国人のワーキングマザーだ。・・そんなとき大事なのは、自分にあった生産性の上げ方、「生産性タイプ」を知ること。これをマスターすることで、最短の時間で最大の成果を出せるという

と述べているように、本書のキモは、自分の心理タイプや得意な働き方のタイプを認識して、自分なりのワークスタイルをつくろう、というところにある。よくある能率向上本では、読者がどんな人であろうがお構いなしに、ステロタイプのノウハウが押し付けられるところがあるのだが、プラグマティックなアメリカ人の著作らしく、システマティックに仕上がっているのが本書の特徴である。「人の類型」と「仕事術」に興味のある方は目を通しておいて損はありません。

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