センゴクは高野山で人が変わる。そして西国平定間近の秀吉は・・ ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 12」ネタバレ

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第12巻。

九州攻めでの敗走の責を負って改易されてからのセンゴク、そして、徳川家康の臣従によって、本格的に九州攻めにとりかかり、西国を支配下におく時期の秀吉が描かれるのが第4シリーズの12巻目になる本巻。
いままでイケイケで、人の言うことなど聴かない、上昇志向丸出しのセンゴクが、この人生の急転直下でどう変わるのか、そして、天下統一が成し遂げられる中で、秀吉の変化はどうか、といったところが気になる展開である。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.91 高野山
VOL.92 黒髪
VOL.93 居場所
VOL.94 無用の者
VOL.95 我執
VOL.96 軍神の眼
VOL.97 永遠の家久
VOL.98 貿易立国
VOL.99 寧波銀貿易

となっていて、センゴクが家族のもとを離れ、「高野山」へやってくるところからスタート。

高野山といえば、古から政争に破れた貴族や武将が流罪に鳴ったり、身を隠したところで、今も真言宗の総本山として荘厳な寺院を擁しているのだが、当時は信長、秀吉の圧迫で窮乏していた状態であったらしい。ここで、センゴクは「増福院」という僧僧坊にやっかいになることになります。

ただ、「逃げ出して一万石をもらうは卑怯」などといった落書きがされていたり、センゴク本人がいるとは知らず悪口雑言とか、かなり居心地の悪い毎日が続きますね。

ただ、その中で暮らすうちに、今まで身体や心に付着していた様々な雑念が落ちてきます。そこは、

といった風に、虐げられても「束の間の生」を精一杯、楽しんで生きる人々とともに暮らしたせいなのかもしれません。見るからに「アク」がとれてきています。

一方、秀吉のほうは、秀長軍十万余、後ろから秀吉軍十万という総勢二十万の軍勢で再度の九州攻めを開始します。しかも、兵三十万の兵糧・馬二万匹の飼葉が一年分という万全の構えで、島津を圧迫していきます。

こういう攻め方は秀吉の真骨頂なのですが、センゴクが九州駐在のときにこういう態勢がとられていれば、彼の改易もなかったかもしれないですね。

そして、秀吉が九州を制圧するにあわせて、センゴクに関わった人々が不幸な結末を迎えていきます。秀吉のもとでともに戦っていた尾藤は秀吉の第二次九州征伐の時に臆病な戦をしたということで改易、小牧長久手の戦で逃亡して改易となっていた神子田は九州攻めの秀吉勝利の後、帰参を願いますが持ち前の皮肉な物言いが逆鱗にふれて打首、さらには、センゴクに苦杯を飲ませた島津家久も突然死します。
どうやら、藤堂高虎に豊臣秀長が

というように、「戦国は遠くなって」いきつつあるようです。

ここで、センゴクの身の上を激変させた「九州征伐編」は終了。時代は「戦後」へ向かいます。ここで、利休の頼みでセンゴクの様子を見ている大徳寺の古溪和尚が

と、秀吉の今後に不吉な兆しを見出すとともに、センゴクに武将に復帰するだろうとの予言をします。
ここらは、センゴクの人相をみて、ということもあるのですが、秀吉の今後を案じての発言として考えておいたほうがよいようですね。

【レビュアーから一言】

本シリーズによれば、九州征伐終了後から秀吉は中国に狙いを定めて、「貿易」による富国強兵を企画し始める筋立てになってます。その動機は

ということで、戦国時代が終了し、封土を戦の報奨として分配できなくなることによる不満を解消するためで、ここらは堺屋太一さんもそう分析していましたね。ただ、このへんになると、織田信長の描いた絵図とほぼ同じなような気が当方にはしていて、秀吉の対外政策が「信長のデキの悪いコピー」といわれる所以かもしれません。

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