小田原城の虎口を陥落させたセンゴクへの秀吉の評価は? ー 宮下英樹「センゴク権兵衛19」

宮下英樹

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第19巻。

徳川家に陣借りし、秀吉の小田原攻めに参画すること出来たセンゴクたちであったのだが、前巻で徳川家の軍使の役ももらい、徳川、黒田、池田、堀の軍勢の「ヤマイヌの計」の陽動側に協力することとなったのだ、途中から命令を飛び越して、小田原城の虎口に攻めかかることとなったセンゴクたち牢人衆の活躍と戦の顛末が描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.154 会心の攻撃
VOL.155 最後の門
VOL.156 付け入り出来
VOL.157 願い
VOL.158 挽回への躍動
VOL.159 嗚呼
VOL.160 無の旗
VOL.161 合戦の沙汰
VOL.162 金の団扇
VOL.163 誇り高く死す

となっていて、まずは大手門に攻めかかったが北条勢の猛攻で退却したセンゴク隊が城外へ出、本間隊とともに第三の門の兵と対峙するところから始まります。

この第三の門は大手門や搦手門へ攻め入る敵を横や後ろから襲うための「隠し門」ですね。


そして、この第三の門からでた北条方の兵士を救援するために外枡へと向かう増兵が到着する前に、センゴクは総攻撃をしかけます
遠目からこれを見ている秀吉が「懐かしい戦をするもんじゃ」とつぶやくのですが、どうやらセンゴクの戦働きは、分厚い包囲陣を敷いて、物量で押しつぶす最近の「秀吉の戦のやり方」と遠く離れたものになっているようです。

第三の門を守る北条方に攻撃をしかけ、「付け入り」を狙うセンゴク隊をみて、北条方の百人組頭・須田伊那介は、守将・笠原正巖に「閉門」を進言するのですが、間一髪、センゴク隊の一員「有用ノ介」が門内に入り込むことに成功し、ここからセンゴク隊の反撃が始まります。センゴク自らが枡の上で攻めかかるなど、大将が先頭に立ついつもの戦のやり方が炸裂し、とうとう虎口を陥落させることに成功します。

しかし、混乱し始めた北条勢に対し、センゴク隊だけでなく、牢人衆が総掛かりで攻めかかるのですが、秀吉はここで先陣を離れます。

ということのようですが、奮闘するセンゴクとはすでに距離が遠くなっているということでしょうか。

そして、このことは、この戦の評価を巡っての、本来は陽動だけをすればいいところを抜け駆けして攻め入ってしまい、「ヤマイヌの計」を台無しにしてしまったという桑原貞成、大村由己など、秀吉の戦目付たちの評価にも結びついているように思います。ただ、秀吉の命令でセンゴクを呼び出しにいく黃母衣衆の中には彼の戦ぶりを評価するものもいるので、、文治派と武断派の対立がすでに始まっているのかもしれません。

センゴクの命令違反に対し、厳しい処分をくだすべきと主張する戦目付たちに対し、秀吉は、おそらくセンゴクは、泣きながら詫びるだろうからそれに免じて処置しようというのですが、センゴクは「何の御用で」とすっとぼけたことを言い出します。

これに象徴されるセンゴク秀吉との全く噛み合わないやり取りの末、秀吉から「金の団扇」を賜り、これでセンゴクは九州の陣での不始末を許された、ということに史実ではなっているのですが、真相のところは本書でご確認を。ただ、ここらのやりとりには、センゴクの秀吉への敬愛が隠れているのですが、そこらもあわせてどうぞ。

【レビュアーから一言】

この虎口から城内を守っているのが民衆が武装した「民兵」というのが、後北条家の特徴です。このへんが今までの浅井・朝倉攻め九州の陣とは異なるところで、彼らを打倒していくセンゴクには、かつて岐阜城で籠城していた「自ら」と戦っているような感覚に襲われたり、センゴクに「戦」の意味を改めて問うこととなりますね。

そして、この民兵がともに戦って討ち死にしていることが、北条方の守将・笠原正巖が、あえて汚名を一身にかぶった理由でもあるのでしょう。

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