田舎の女子高生、「罠」で獣に立ち向かうー緑山のぶひろ「罠ガール」

田舎の農業高校に通う女子高生たちが、学校や家庭で栽培する作物を獣たちから守るため、罠を武器に立ち上がるのがこの『緑山のぶひろ「罠ガール」(「電撃コミックスNEXT)』シリーズです。
そこらにいそうな女の子たちが、イノシシや鹿の動きを探り、くくり罠や箱罠をしかけて真正面から獣たちに立ち向かう勇姿と「罠のしかけ」の知識がしっかり描かれています。

構成と注目ポイント

第1巻の読みどころー罠ガール、さっそうと登場

第1巻の構成は

1捕獲目 罠猟少女
2捕獲目 生徒会からの依頼
3捕獲目 ビワを守れ!
4捕獲目 シカ食べます
5捕獲目 鳥獣供養
おまけその1 止め刺しは慎重に
おまけその2 もしも和解できたら

となっていて、まず、本シリーズの主人公の「罠ガール」の女子高生・朝比奈千代丸が、幼馴染で農家の娘・昼間レモンがほうれん草を育てている畑が、イノシシにやられてしまい、彼女の依頼を受けてイノシシの罠猟に挑むところからスタートします。

いわゆる「くくり罠」というやつで、ワイヤーで輪っかをつくってイノシシの脚を捕まえるやつですね。ここで、罠の仕掛ける位置とかセットの仕方などが解説されているのが、このマンガの特徴的なところですね。

そして、罠を使ってイノシシであるとか

学校に出没するアナグマ、ビワを狙うシカを次々とつかまえていくのですが、ここで

といった罠にかかった動物の「凶暴さ」と「助かろうとする必死さ」とともに、残酷なタッチではないものの、イノシシにとどめをさしたり、解体して肉にしていく場面が丁寧に描かれています。ここらは、アウトドア礼賛だけを謳っていない感じがして好ましい筋立てのように思います。

Bitly

第2巻の読みどころーレモンはわな猟免許に挑戦する

第2巻の構成は

6捕獲目 空中防衛戦!
7捕獲目 わな猟免許を取ろう(前編)
8捕獲目 わな猟免許を取ろう(後編)
9捕獲目 レモンのお買い物
10捕獲目 おばあちゃんの畑
11捕獲目 外国からこんにちわ
おまけその1 出番は?
おまけその2 物に歴史あり

となっていて、最初の話は都心部でも見かける「カラス」の駆除の話から始まります。ぶどう園の近くに設置された箱罠の中にカラスが密集知っている様子はちょっと怖い感じですね。

この巻では、祖母の畑を荒らすアナグマを捕獲するために、千代丸の幼馴染・レモンが罠猟の免許取得に挑みます。ここは二話を使って丁寧に試験の様子が描かれているので、罠猟免許の興味のある人は事前知識として貴重かもしれません。

無事に免許を取得した「れもん」は、アナグマ猟に挑んでいきますので、彼女の奮闘を応援してあげてくださいね。もっとも、アナグマだけかと思っていたら、凶暴なアライグマにも遭遇することになるので、そこのところの詳細は原書のほうで。

Bitly

第3巻の読みどころー黒枝豆を「猿」から守れ

第3巻の構成は

12捕獲目 ちょっと息抜きしませんか
13捕獲目 招かれザル客
14捕獲目 モンキードッグ
15捕獲目 お米を守れ!
16捕獲目 2つ目の罠
おまけその1 清水さんへのお土産
おまけその2 動物4コマ

となっていて、今回は地元を離れて、京都府の宮津へ遠征です。

ここで従姉妹の家族が経営している旅館に泊まりながら、丹波特産の室枝豆の収穫を手伝いながら、これを狙ってやってくる「猿」の駆除に挑みます。

ただ、知恵のある猿が相手なので、捕獲というところまではできず、モンキードッグという猟犬や花火を使っての威嚇と猿の追い払いまでですね。ここでは、地域の行政とタイアップしての猿駆除の状況が解説されているので、動物の駆除の中でも一番の悩みのタネとなりつつある「サル被害」についての知識が得られます。

地元に帰ってからの第15話からは、おなじみの「イノシシ猟」です。ここでは罠を仕掛ける場所とか、餌による誘引など、

くくり罠をしかける時のポイントがしっかり書いてあるので、ふむふむという感じで罠猟の感じがつかめます。さらに、罠があることを気づかれて掘り返されてから、餌をtべはじめ、段々と罠へ近づいていく様子が書いてあって臨場感がありますな。

Bitly

第4巻の読みどころー罠ガール、イノシシと対決

第4巻の構成は

17捕獲目 箱罠とイノシシ
18捕獲目 vsイノシシ
19捕獲目 イノシシの解体
20捕獲目 トレイルカメラ
おまけマンガ 近づく時は・・・

となっていて、いよいよ箱ワナをしかけてのイノシシ猟です。

大きさは2mぐらいのものとなっていますが、それでも100kgぐらいの重量はあるようですね。この罠を「千代丸」と「れもん」が、女性猟師の「清水夏芽」のアドバイスを受けながら設定していくのですが、獣道をたどってイノシシの行動を分析したり、

罠をおくというのは餌場をつくることにもなるので、かえってイノシシをおびき寄せる危険性も考えないといけない、であったり、イノシシの習性を考えて、地面と同じ高さに罠を埋めないといけないといった「専門知識」が披瀝されているので、イノシシ猟の豆知識も豊富に得ることができますね。

そして、さつまいもを仕掛けておびきよせたり、米ぬかの餌を使った「箱罠」の中への誘導方法といったところは、ほかのマンガでは教えてくれないかもしれません。

さらに、イノシシを捕まえた後、トドメをさすあたりの迫真さや、解体の様子も丁寧に描かれているので、動物を「狩る」ということがどんなものかを知る上では貴重な描写だと思います。もっとも、かなりユーモラスなタッチで描いてあるので、陰惨さはないので、そこのところは御安心ください。

Bitly

第5巻のよみどころー園芸部の畑をシカから守れ

第5巻の構成は

21捕獲目 小さな影
22捕獲目 園芸部の畑
23捕獲目 それぞれの役割
24捕獲目 千代丸と比嘉
25捕獲目 現場調査
26捕獲目 囲い罠
おまけマンガ アナグマの体

となっていて、今までは、千代丸とレモン、そして師匠格の「清水夏芽」といった限られたメンバーでやっていた猟の実績が評価されたのか、学校の園芸部が栽培している農園の鳥獣対策を一手に任されることになります。といっても、かなり広い農園なので、相当の手間と覚悟がいりそうですね。

そして、畑の中で作物を荒らしている一頭の鹿を見つけた千代丸たちは、鹿の生息地を確かめるために山の中に入り、一番痕跡の多かった場所で

とあたりを照らすと

といった様子で、まさに「うじゃうじゃ」といる状況で、こんなにいるとまさに「怖い」ですね。鹿は、植わっている作物だけでなく、木の芽や皮まで食べてしまうので、ある意味、イノシシより捕食被害のおおきくなる獣なので、こんなにいれば、山も農園もかなりの被害がでているのは間違いないところです。

そして、この鹿たちに対抗するため、千代丸たちは

といった大きな「囲い罠」を設置するのですが・・といったところで、この効果がどうなるかは次巻を待て、ですね。

Bitly

レビュアーから一言

アウトドアの流行で一般の人たちも興味を持ち始めている「猟」「ハンティング」には、その魅力とともに、動物の生命を奪うということで、批判もあることも事実です。ただ、一方で、農作物への「獣害」は拡大しているのも事実です。
本シリーズは、そんな問題をいろんな側面から考えさせてくれますね。さらに、「罠猟」について、ここまで詳細に解説してくれるマンガは他にないのではないでしょうか。

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