しつけ次第で「脳」も「あなた」も変われるー中野信子「あなたの「脳」のしつけ方」

「サイコパス」や「毒親」などなど、「脳」をネタにした話題の中心に必ずいる脳科学者・中野信子さんによる、ちょっと変わった「能力開発」論が、本書『中野信子「あなたの脳のしつけ方(青春出版社)』です。
筆者によれば「誰でも脳をしつければ、自分の力をもっと引き出せる。自分自身を上手にしつけることで、自分のありようを生かしながら、悠々と楽しい人生を送っていくことができる」ということなのですが、はたして、その「しつけ方」のノウハウは・・といった始まりです。

構成と注目ポイント

構成は

LESSON1 集中力のしつけ方
LESSON2 記憶力のしつけ方
LESSON3 判断力のしつけ方
LESSON4 モテ力のしつけ方
LESSON5 アイデア力のしつけ方
LESSON6 努力のしつけ方
LESSON7 強運力のしつけ方
LESSON8 愛情力のしつけ方

となっていて、本書による「脳のしつけ」で能力開発するのは、「集中力」「記憶力」「判断力」・・・といった多くの人が「どうも自分は・・・」と劣等感をもっている力ばかりで、本書の期待度も高まるばかり、といったところです。こういう時、よくある「自己啓発本」では、遮二無二、努力することであるとか、頑張りなんてことを推奨するものが多いのですが、本書は一味違っていて、たとえば「集中力」のところでは「

この”集中できない”という状態は、じつは脳科学的には、いたって”普通”のことなのです。むしろ集中しているほうが”危険”な状態ともいえるものです。

であったり、「アイデア力」のところでは

じつのところ、アイデア力と右脳派・左脳派はまったく関係ないのです。そもそも右脳はが想像性が高くて』差脳はが論履的というのも、実は科学では証明されていません。
(中略)
人間はものごとおの全体を把握するのに、主に右脳を使い、細部をじっくり見るのには主に左脳を使うということがわかったのです。
でも、そのような調査結果が出たからといって、”全体を把握すること”と”創造性”を結びつけるのは飛躍しすぎではないでしょうか

といった感じで、私たちが「ふんわり」と信じ込んでいる「常識」を木っ端みじんにしてくるあたりは妙な爽快感があります。
で、こうした「常識破壊」をやったあと、今までの筆者の本では、脳の構造であるとか、脳内物質によりる影響度などといった「医学的」な部分へ話が持ち込まれることが多かった印印象があるのですが、本書の場合は、「アイデア・マン」になる秘訣として

現代の日常における″アイデアマン″や″クリエイティブな人″になるには、人の半歩先を行くアイデア=「無難な新規性」を提案すればいいというわけです。
その″人より半歩先を行くアイデア″を、どのようにして生み出せばいいのでしょう? それは「歴史を精査する」ことです。
(中略)
肝心なのは、そういった過去のアイデアなり解決法を、日の前の問題と結びつけてアレンジすること。

と言ったことが提案されていたり、「強運」をつけるやり方として

もっと劇的に運をよくする方法があるのです。
いったいどんなものでしょうか?それは、「ゲーム自体を変えてしまう」という方法です。
いまやっているコイングームでは負けが込んでしまった。
ならば、そんな負け癖のついたゲームはキッパリやめてしまい、もっと自分が勝ちやすいゲームをすればいい。そうすれば自然と勝ち癖がつく=運がよくなるだろうというわけです。

といった「ちゃぶ台返し」的なアドバイスがあちこちに出てくるところが斬新でよいですね。今までの「脳内物質的」な議論だけであると、なにか人の力の介在するところや、後天的な努力の部分が全く関係ないような感じに囚われてしまって、ちょっと虚しさを覚えるところがあったのですが、そこのところは本書では緩和されているのは間違いないです。

といっても、

じつはさまざまな研究により、人が努力できるかどうかの多くは、「生まれつきの才能」で決まってしまうことがわかっています。

としたうえで、「努力遺伝子を持たない人は、「ムダな勢力をしない才能に恵まれている」といえるのではないでしようか。」などと誉められているのかいないのかわからないような記述が仕込まれているので要注意ではあるのですが・・・

レビュアーからひと言

全体としては、多くの人が気になる「才能」について、筆者の脳科学や心理学の専門的知識を踏まえながら、無茶をせず、精神論に頼らず「パワーアップする」手法がアドバイスされているといっていいでしょう。もちろん、ドーパミンやオキシトシンといったいつもの「脳内物質論」も、LESSON8の「愛情力のしつけ方」あたりではしっかりでてくるので、いつもの「中野信子流」を期待している人にもおススメです。

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