虐待される子供たちを救う放火犯の正体は?ー田村由美「ミステリと言う勿れ」5・6

天然パーマが爆発したような特徴的なカリフラワーヘアーの持ち主で、人と交わるのが苦手な心理学専攻の大学生・久能整(くのう・ととのう)が、望まないのに向こうのほうから降りかかってくる奇妙な事件を、その丁寧で鋭い観察力と、雑多な博学的知識をもとに謎解きをしていく。Z世代が探偵の新感覚ミステリー・シリーズ『田村由美「ミステリと言う勿れ」』の第5弾と第6弾

構成と注目ポイント

虐待児童を救う放火魔の正体は?

第5巻の構成は

episode8 天使の言い分
episode8−2 遠火と近火
episode8−3 淡雪と消える
episode8−4 カエルの炎描
おまけのたむたむたいむ

となっていて、前巻で知り合いになった「ライカ」から、ある2つの住所のところへ出向くよう指示を受けます。

そこではどちらも火事がおきていて、住んでいた子供は助かったものの両親とも焼死しているよいう状況で、さらに「山」型の落書きが残されているのと、「お香」に匂いが残っているのが共通点です。

そして、2つの現場に残されていた「山」型の落書きと同じものが、「整」の入院していた病院の壁にも大きく描かれているのを発見し、ライカの要請でその謎を解くために動き始めます。そんな彼に、カエル顔をした男が近づいてくるのですが、彼の目的は・・・という展開です。

第1巻の冤罪事件で知り合いになった、大隣署の池本刑事や青砥刑事からの情報で、10歳の時に自宅の火事で母親を失い、その後、3件の放火事件を起こしている「井原香音人」という青年が容疑者として浮上していることを知るとともに、カエル似の男も、自宅の火事で両親を失っていることがわかります。
この男によって拉致された「整」は香音人の住む家へ連れて行かれるのですが、そこで事件の真相を突き止めるのですが、犯人と思われていた香音人は・・、という展開です。

ちなみに、この「ライカ」も幼い頃虐待されていたらしく、彼女の両親も不審死を遂げているようです。彼女は姉妹の「ちやこ」を守ることを使命としているほか、春までに自分はいなくなる、と後の話で喋っています。彼女に惹かれながら、その秘密を解いていくのが「整」の新しい使命になりそうです。

Bitly

「平成の切り裂きジャック」の息子登場

第6巻の構成は

episode9 デートならぬ遠出
episode2.5 骨の在処はまだ
episode2.5-2 開かぬ箱
episode2.5-3 帳は幾重にも
おまけのたむたむたいむ

となっていて、まず一話目のepisode9「デートならぬ遠出」では、「ライカ」と知り合って初めての病院外デードで、初詣にでかけます。その帰り道に年明けの深夜にもかかわらず開いている「焼肉屋」に入って、「焼き肉デート」ですね。

ところがそこの店主の娘らしい店員は、妙に緊張しているのかおすすめメニューに「ゴーヤトウフ、酢モツ、ケジャン、テールスープ」といったものを勧めてきます。ゴーヤトウフは季節外のほか、酢モツはメニューにない料理ですし、出てきた「ゴーヤトウフ」にはゴーヤが入ってません。この奇妙なサービスに隠された謎を「整」と「ライカ」が解き明かします。

後半の三話では、女性ばかりナイフのような刃物で殺されて、交差点の真ん中まで運んではりつけのようなポーズで放置するという連続猟奇殺人がおきます。

そして、3人目の被害者を刺殺したサバイバルナイフから、22年前の”平成の切裂きジャック”と呼ばれた「羽喰玄斗」が殺した被害者の一人の血液が検出されます。熱心な読者の方は、この連続殺人犯がすでに殺されて埋められていることを知っているのですが、物語中の捜査本部では知られていない事実なので、この殺人犯の仕業なのか、といった線で捜査が始まります。

さらにここで現れたのが第一巻と第二巻で登場した「犬童我路」たち。彼らは、犬童愛珠の軌跡を調べているのですが、彼女がこの殺人事件の被害者たちと同じ「闇カジノ」に勤めていたことがわかります。そして、お金持ちなので、本来ならカジノで働く必要もなかたのですが、「カウンセラー」のアドバイスでカジノ勤めを始めたことと、彼女が残した遺書めいた手紙に、自殺をほのめかす言葉と、もしできなければ「ジュート」に頼もう、ということが書いてあることを見つけます。果たして「ジュート」とは・・といった筋立てですね。

ここでちょっとネタバレしておくと、第四の猟奇殺人の現場に「羽喰十斗」という署名が残されていたことと、被害者が放置されていた場所の監視カメラに、うさぎ歩きでスーツケースを運ぶ、少女に扮装した「小柄な男」の姿が映っていることがわかり・・・、という展開です。

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レビュアーの一言ー星座の指輪の真相の一部が見つかる

第4巻で「整」が関わる事件の関係者たちが身につけていたり送られてくる「星座の指輪」なのですが、第6巻で、連続殺人鬼の十斗も「射手座の指輪」を、そして、我露の姉の「愛珠」も山羊座の指輪を誰かにもらっていることがわかります。
おそらく、十斗も愛珠も誰かの「誘導」を受けて、連続殺人や自殺を図ろうとしていることが推察され、さらには第4巻にでてくる爆発魔も誰かの心理的な操作をうけている気配もあり、これらの背後にいる人物が誰なのか気になるところですね。

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