天然パーマが爆発したような特徴的なカリフラワーヘアーの持ち主で、人と交わるのが苦手な心理学専攻の大学生・久能整(くのう・ととのう)が、望まないのに向こうのほうから降りかかってくる奇妙な事件を、その丁寧で鋭い観察力と、雑多な博学的知識をもとに謎解きをしていく。Z世代が探偵の新感覚ミステリー・シリーズ『田村由美「ミステリと言う勿れ」』の第7弾と第8弾
構成と注目ポイント
「整」の恩師の殺人事件の謎を解け
第7巻の構成は
episode10 嵐のアイビーハウス
episode10-2 嘘をできるだけ
episode10-3 嘘をひとつだけ
おまけのたむたむたいむ
となっていて、今巻は「整」の通っている大学の准教授で、彼の指導教官でもある「天達」の誘いで一晩アルバイトすることになった、彼の友人の「蔦」の別荘でおきる事件です。
「天達」准教授の奥さんは「喜和」さんといって、家庭で虐待されていた幼い「整」を精神的に支えてくれた女性ですね。
そして、今回、彼がアルバイトで訪れる別荘で、ストーカーに襲われて殺されています。彼女はもともと心理カウンセラーをしていたのですが、相談者の一人に執着されているところから彼女をこの別荘に匿っていたところ、その情報を誰かが漏らして、殺害されて、といった経緯ですね。
匿っている情報は、今回別荘に集まった関係者意外は知らないことだったので、一体誰が・・と犯人が今回明らかになっていくわけです。
ところが、最初のうちは、不注意でストーカーに情報を漏らしてしまった同情すべき人物と思われていたのが、実は故意かもしれなかったことや、その犯人が大量殺人の犯人ではなうかという疑惑が出てきます。その犯行の動機は?というところが今巻の焦点でしょうか。
ライカの秘密が明らかになる
第8巻の構成は
episode11 星降る舌八丁
episode12 耳寄りな話
episode13 ネガティブなポジティブ
となっていて、前半の二話では、「ライカ」と近くの美術館に一緒に訪れていた「整」たちが、美術館を占拠する「強盗犯」に軟禁されることとなります。
この強盗たちは、美術館の客たちを捕まえては「満月に 頭を垂れて 星降る夜」の続きを知っているかと聞いて、答えられない場合はスタンガンで気絶させているのですが、「整」と「ライカ」に同じような扱いをしようとして、ライカの激しい抵抗を呼び起こすことになります。
強盗達がこの妙なフレーズを聞いて回っているのは、彼らのリーダー格の人物が倒れてしまい、この美術館で何を盗み出すのかわからなくなったため、ここで落ち合う予定の内報者を捜して、リーダーの意図を確かめようというもので、まあ、杜撰な犯行であることは間違いないありません。それもそのはず、話の終わりのほうで分かるのですが、「何も盗まない」ことが今回の目的で、その狙いは・・というのがキモですね。
そして、ライカの抵抗の理由は、彼女が幼い頃、彼女の親から虐待をうけていたことにあるようなのですが、強盗が捕まった後に戻った病院で、彼女にそっくりな車いすで介助されながら散歩する「ライカ」にそっくりな「ちやこ」の姿を見ることで、彼女の本当の姿がわかってきます。「ライカ」は以前、自分は「4月になったらこの世からいなくなってしまう」などと言っていたのですが、ちょっとネタバレすると、「いなくなる」というのが「死んでしまう」ということと同義ではなくて、「消失する」というのが正確なところですね。
最終episodeは、「整」くんが第3巻ででてきた「汐路」ちゃんの、財閥の双子の孫娘がどっちかどっちか見分けるコツを発見してくれという依頼を受けることになります。この二人は定期的に入れ替わって、周囲を混乱させているようなのですが、その理由は次巻以降というところです。
レビュアーから一言ーライカの正体は儚い幻人格
今巻では、マルクス・アウレリウスの「自省録」を使って会話をする「ライカ」さんの秘密が明らかになるのですが、少しネタバレすると、最近は少なくなってきた「心理もの」で、「24人のビリー・ミリガン」状況といえばおおよそのところはわかるかと思います。このネタは、推理モノとしては、若干アンフェアなところがあるのですが、今シリーズは「ライカ」さんの美しい「儚さ」に免じて許してあげましょう。
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